第三章 瞑想世界のボクらと現実世界のボク
ボクが初めて解離性同一性障害と診断されたのは中学二年の時。
その前には統合失調症との診断を受けていた。
自分の中に自分じゃない誰かが居るような...現実感が無いような...。
再度精神科に行きそれを伝えた結果、上記のような診断結果が帰って来たのだ。
ちゃんとした病名が分かって肩の荷が下りたような気持ちの半面、彼にそれを伝えた時、どんな反応をされるか...拒絶されるのが怖くてそれから一ヶ月、言い出せずにいた。
人格障害であることを打ち明け、拒絶されなかったことにそれまで考えていたことや不安、心に掛かった霧のようなものが一気に晴れて、初めて落ち着けたような感覚があったのを覚えている。
それから一年、ボクらの存在を認識しつつ、彼は今なお理解ある友人として現在を共にしている。
「そろそろ帰るか。忘れ物とかないか?」
「うん、大丈夫」
顧問の先生に軽く挨拶して美術室を後にする。
「コウちゃんは優しいね。ボクみたいな障害者なんて放っておいて良いのに」
「そういうわけにもいかないだろ。幼馴染だし、お前のことを一番理解しているのは俺だと自負しているが」
「コウちゃんらしいね...。コウちゃんが幼馴染みで良かった」
「俺もだよ。お前がダチで良かった」
家路に着いてまず最初にボクがやること、今日の日記を書いてベッドに横になって瞑想タイムに入る。お寺でやるような座禅ではなく、ただベッドに横になり瞑想するだけ。
これをすると気持ちが静まる。心が波打たなくなる。そして、自分に戻る。
「瑞樹、入るぞ...って、いつもの瞑想タイムか。...音楽でも聴いて戻ってくるのを待つか」
〝「あんまり病院とか行きたくない...」
『でも、あそこが一番落ち着ける場所って言ってなかったっけ?』
「それはそうなんだけど...」
『大丈夫だよ。僕らが満場一致で「〝人格統合〟の治療を受けたい」って言わない限り、あの人は悩み相談とか以外では手を出しては来ないよ』
「...そうだね...。弘樹、ゆっくり休んで...」
『そうするよ、また明日ね♪』〟
瞑想の後は決まって、突然意識が戻ったかのように頭がぼっーとする。
でもいつもの事だ。もう狼狽えることも、何かに対して焦ることも無くなった。
「おかえり、瑞樹。いつもより短かったな、瞑想タイム」
「うん。でも...落ち着けた」
「それは良かった。あ、明日休みだしどっか遊びに行くか」
頷き、他にすることもなく暇だったので、二人でテレビゲームの続きをし始めた。