終/始/少女:プロローグ2
私は、夜明けを待っていた。
誰もいない、私の足跡だけがある砂浜、優しく打ち寄せる白波。空には星も雲もなく、あるのは1つ、大きな満月。
東だと思う方角をただ、眺めていた。
まだ春先なので少し肌寒い。くしゅん、と小さなくしゃみを出す。ふと風が吹いて私に触れる。髪と着ていた白いワンピースがふわりと煽られる。目に髪がかからないよう手で抑える。
風が止む。右腕に付けた時計の短針は7を指す。ここでかなりの時間を過ごしていたようだ。
そっと、無意識にその腕を前に出す。水平線と右手が重なる。
何かを掴むように手を伸ばす。前へ、前へ、誰かに、朝日に届くように。
ふと、何かに触れた気がした。
きっと風だろう、と振り返り、元来た道を歩く。
今日も、朝は来なかった。
俯く。
少し歩く。
そんなことじゃ駄目だ、と前を向く。
笑顔を作る。
悲しくなる。
涙が出そうになるのを必死に堪え、上を向いて歩く。
案の定何かに躓いて転んだ。
そこにあったのは、ボロボロの茶色い塊。
そこには、微かにではあるが、確かに温もりがあった。
人だった。
新しい出会い。これを人は、きっと夜明けと呼ぶ。