ⅶ.【たくさんの火竜達】
火竜の住まうところ…それは空中に浮かぶ大きな大きな岩の集合体だった。これも魔法で浮いてるのかな?
「ダルシャン、ここは魔法で浮いてるの?」
【いや、これは浮遊岩の集まりだ。小さいものであれば、いたるところに浮いておる。大きいものは、ひとつところに集まる傾向があってな。ここも、そうやって浮遊岩が集まったところなのだ】
「え! この岩、自然に浮いてるの?! しかも、集まってできてるんだ! やっぱ異世界は違うなぁ…」
【古代より存在するモノには、魔力が宿りやすい。この浮遊岩も、そのひとつだ】
「竜も魔力が多いんだよね?」
【そうだ。我らは総じて魔力保有量が多い。古代より、この世界にて生きているからだろう】
「魔力が多少はないと、魔法は使えないんだよね…。私は魔力あるかなぁ…」
【魔力がないということはない。我にはリイの魔力保有量を正確に測ることはできぬが、魔力を感じるのでな。魔力を保有しているのは間違いない。それに、我と波長が合うくらいだ。リイの保有量はそれなりのものであろう】
「そうなのかな? それなら良いんだけど。やっぱり魔法があるなら、自分でも使ってみたいしね! 姿を変える魔法も使えるようにならなきゃだしね!」
【では、この地の次に行くのは、リイが魔法を学べる地にしようか?】
「そうだねー。それも良いかも! でも、まずはここをゆっくり見て回ってから考えるよ! ここだって、私には相当な広さだもの! 見て回った後、また別のことに興味が湧いてるかもだし!」
そんなことをダルシャンと話していると、数匹の火竜達が私達の傍に舞い降りてきた。ダルシャンで竜の大きさには慣れたつもりだったけど、何匹もを同時に目の前にすると、迫力が…!!
その迫力に圧倒されていると、ダルシャンが舞い降りてきた火竜達と話し始めた。
話し始めたんだと思う…。なんか聞き慣れない高い音が聞こえてくるから。それぞれの火竜が発しているようだし、私には分からないけど、これが火竜語?
ダルシャンとは普通に会話が成立しているから、特に深く考えたことはなかったけど、思い返してみるとダルシャンの言葉は全部直接心に響いてくる感じだったんだよね。私は言葉を発していたけど、ダルシャンはそうじゃなかった気がする。ってことは…ダルシャンとはなぜか会話が成立してるわけだけど…もしかしたら他の火竜達とは…私は直接会話できないの?!
そんなことを考えていると、どうやら火竜達の話し合いが終わったようだった。音がしなくなったと思って顔を上げると、ダルシャンだけじゃなく、他の火竜達からも視線が…私に集中! なんか視線が集まり過ぎてて射抜かれそう!
【待たせたな。それでは、まずは我の住む洞窟にでも行くとするか】
「え? あぁ、そうだね。行き先はそれで良いんだけど…。ねぇ、ダルシャン? 今、何を話してたの? 私には火竜達の言葉は分からないのかな?」
【む? あぁ、リイには我らの言葉は直接は分からぬのだな。失念しておった。先ほどは、リイの紹介をしておったのだ。我が久方ぶりに連れて来た客人に、同朋達も興味があるようでな。滞在中はよろしくとのことだ】
「そうなんだ。こちらこそよろしくって感じなんだけど…会話ができないんじゃあ…。ダルシャンが通訳してくれれば大丈夫…なのかな?」
【いや、皆にも伝えておくので大丈夫だ。リイの心に直接語りかければ、通じるのでな。先ほどは、同朋だけで話しておったので、分からなかったのであろう】
「良かった! 私も皆と話せるんだね! でも、私は普通に喋ってるだけだよね? それで、ダルシャンには通じてるんだよね?」
【リイは我と話そうと思っているであろう? その思いが言葉として発せられているわけだが、我はリイの言葉を直接耳で理解しているわけではないのだ。だから心の中で我に語りかけてくれれば、言葉を発せずとも通じるはずだ】
「そうなの?! じゃあ、ちょっと試してみるね!」
【…ダルシャン? ちゃんと聞こえてる?】
【あぁ、大丈夫だ。ちゃんと伝わっておる】
なんだか新しい発見が嬉しくて、私はダルシャンの棲む洞窟に行くのも忘れて、“心の中で語りかける会話”に夢中になってしまった。気づけば、他の火竜達はとっくに飛び去った後で…。ダルシャンもちょっと呆れたかな? いや、そんなことは言わないんだけどね、ダルシャンは!




