ⅴ.【異世界の食べ物は?】
ダルシャンが洞穴の前で降ろしてくれた。この辺りには人が居ない、ということで泊まれる家のようなものはないのだ。ダルシャンだけならどこでも休むことができる。でも、私のことを考えて、今日もどこか村や町へ飛ぼうかとも聞かれたんだけど、とりあえず今日はやめておくことにした。
冒険なんだもの! 野営だって出来なきゃだもんね! それに自転車旅行した時にテント生活なら体験済みだし! 必要最低限のものをリストアップした荷物の中に、寝袋は入ってる。テントも考えたけど、屋根がなくてもダルシャンが翼の下で守ってくれるって言ったから、テントは用意しなかったんだ。
洞穴の中に入り、ダルシャンに必要な荷物を出してもらう。そして、次は食料調達! ダルシャンに教えて貰いながら、私が食べても大丈夫なもので気になったものを集めていく。
まずは…どぎつい紫色の何か…。色はアレだけど…皮の中身は地球のじゃがいもみたいな感じらしい。大きさがスイカくらいもあるベリーも見つけた。これは大きさ以外は、地球のベリーと同じ感じ。そして、数種類の香辛料もGET。
あとは、ダルシャンが魚も捕まえてくれた。え? 私が捕まえたんじゃなくてって? この魚も規格外の大きさで…川魚ってこんなに大きいっけ? ってくらいに。小振りなマグロくらいありそうだし! そんな魚を釣竿も何もないのに、捕まえるのは無理。釣竿あっても…無理かな。
目の前を流れている川は綺麗な清流。透明度が高いから、魚の姿がよく見える。魚がもっと自己主張してなかったら、泳ぎたいくらいかな。この島…そうここはかなり大きな島なのだ。ダルシャンにかかれば、島を一周してみるのも時間はかからなかったけどね。ダルシャンによると、この島の植物や動物はどれも人が住む大陸のものより大きいらしい。肉食獣も少なからずいるらしいけど、この世界の“覇者”がいるんだから、襲われる心配はない。
ちなみに人が住む大陸の川には綺麗で泳げるところもあるらしいから、せっかくの夏休みの冒険だし、泳いでみようかなと思ってる。
とりあえず食料はこれくらいで大丈夫だろう。新鮮なうちに食べようということで、ダルシャンがじゃがいものような紫色の何かと、マグロサイズの魚を焼いてくれた。竜のブレス! 目の前で見ると、すごい迫力だ!
これで完成! さぁ、食べよう! っていっても、マグロサイズもある魚を私1人では食べることが出来ない。ダルシャンは普段は魚は食べないみたいなんだけど、私が必要なだけ取り分けた残りは、ダルシャンが食べてくれることになった。残すのは勿体無いもんね。
ダルシャンは味付けは必要ないってことで、私の分にだけ香辛料を振った。そして、一口。おぉ! 美味しい! 魚自体が新鮮で美味しいんだろうな。そして、次は紫色の…。皮をむいてみると…良かった! 中はじゃがいもに近い色! ホクホクだし、すごく美味しかった! 最後にデザートは大きなベリー。大きかったけど、甘酸っぱさが癖になってペロリと一個食べ切ってしまった。
ふぅ、お腹いっぱい! 果汁いっぱいなベリーのおかげで喉の渇きはないけど、お水の調達はしておいた方がいいかな。
「この川の水は飲み水にしても大丈夫?」
【飲み水にするなら、湧き水が良かろう】
そうして、今度は湧き水を汲みに行くことに。歩くには距離があるということで、再びダルシャンの背中に。水を汲む物もちゃんと持ってきてるからね。この水筒に汲んでおけば、明日の朝までは持つだろう。
ダルシャンの背中から降り立って、早速湧き水を汲む。水筒を満たした後、少し手に取って飲んでみる。冷たくて美味しい! 近くに泳ぐほどの広さはないけど、水浴びができる泉があるというので、お風呂変わりに入ることにした。人目を気にしなくていいのが良いね!
お腹も満たされたし、水浴びで体もすっきりした。洞穴に戻って、異世界の綺麗な星空を眺めながら、まだまだ語り尽くすことのないダルシャンの話を聞きながら、ゆったりと夜を過ごすのだった。