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5.大晦日

 結局顕生に勧められるまま、幼稚園のクリスマス会に参加した。思いの外賑やかなクリスマスにはなったけれど、子供たちと歌を歌いながらも、思うのはマーニーのことばかりだ。帰りがけ、未練たらしく『鳥政』の前を通ってみたが、ローストチキンや唐揚げを買う客で常にごったがえしていて、彼の姿を見ることは出来なかった。

(私が来て、どう思った?)

 つぐみを認めたときの、唖然とした彼の顔が忘れることができない。

(お店のこと知られるの、そんなに嫌だった?) 

 店構えこそ古い『鳥政』だが、ガラスケースや調理場は丹念に磨き上げられ、油臭さなど微塵も感じさせない。あのコロッケを食べただけでもその仕事ぶりは伝わって来る。あの日一緒に並んでいた総菜は、マーニーが父親と喧嘩をしながら改良を重ね、やっと日の目を見た商品なのだろう。

 実家が和菓子屋であるつぐみは、幼い頃から食べ物を扱う仕事を間近で見てきた。飲食店に行くと、つい細かいところまで目が行ってしまう。店先、調理場、店員の立ち振る舞いや食品を扱う手つき。どれだけ心を砕いているかは自ずと知れる。『鳥政』は、マーニーや彼の家族の、真摯で謙虚な姿勢が伝わってくる店だ。

(会いたい)

 彼の真実を知って、なおさら彼を知りたくなった。会って、話して、もっと彼に近づきたい。

 教えてもらった電話番号を画面に表示して、しばらく見つめたあと、また戻す。それをもう何度も繰り返している。 

 あの24日以来、マーニーは叡生寺にも姿を見せない。頼みの綱の空師堂も、マスターが帰省するので年末はずっと休みだ。

(忙しいのかな。それとも店まで押しかけたから、愛想をつかされた、とか)

 そう考えると怖くなって、『鳥政』に行くことも出来なかった。


 悩んでいるうちに日々は過ぎ、ついに大晦日を迎えた。

『どうせ暇なんでしょ。年末年始、ひとりはさみしいわよぅ』

 母親がしつこく誘うので、つぐみ自身は気は進まなかったが、久しぶりに実家に帰ってきていた。

「あんた、大丈夫なの。あんな家にずっと籠もってて、そのうちおじいちゃんの本と一緒に心中しかねない、って比和ひわと話してたのよ。少しは外出とかしてんの?」

 母親がまくし立てる傍らで、姉の比和もそうだそうだ、と同調する。ふたりは初売り用の菓子を箱詰めしており、お喋りをしていてもその手は正確で、休むことはない。

「外出? してるよ」

「とか言って、おじいちゃんのお墓参りだけ、なんてことはないわよね?」

「うっ」

 さすがに実母、なかなかに鋭い。

「自分のうちなんだから、いつでも帰ってくればいいのに……って、正和くんも言ってたよ」

 自分ではなく、夫を引き合いに出すあたりが、意地っ張りの姉らしい。つぐみも負けじと言い返した。

「帰ってきたら、どうせお店の手伝いさせる気でしょ。やだやだ」

 つぐみが手伝えば助かるだろうが、いずれは姉夫婦に引き継がれる店だ。両親が同業者の跡継ぎ話をよくしていたので、小姑がいつまでも店をうろうろしているのは良くない、というのは感覚的にわかっていた。義兄は楢橋家にはもったいないくらいいい人だ。婿だからこそ、自分の代になったら思うようにのびのびとやりたいだろう。中途半端に首を突っ込むのは、お互いのためにならない。それも、姉が結婚してから実家と距離を置いていた、ひとつの理由だった。

かび臭い本読んで、家でとぐろ巻いてるだけなら、たまに家に顔出しても罰は当たらんだろ」

 帳簿をつけていた父親も、さりげなく口を挟む。

 家族みんなが、それなりに心配してくれていたことを改めて知る。

(私、恵まれてたんだな)

 祖父を失ってからというもの、どうかすると天涯孤独のような気持ちでいた。実際のところ両親は健在で、自らを表現する空師堂という場所もある。面倒見のいいマスターや、叡生寺の顕生、そして何より、マーニーがいてくれた。

 周囲の人たちの好意に首まで浸かって、甘えていたのだ。もういない祖父の影ばかり追い、時間を止めて。調子に乗って、いつまでも内に籠もってうらぶれていれば、誰だってそのうち愛想をつかす。仕事にしても休んで迷惑をかけたなら、取り戻すべく一層の努力をするのが筋だ。復帰しても死んだような目をして働いていたら、会社の人たちが快く思うはずがない。

 やっと、そう思えるようになった。

 少しずつ春が近づくように、自分の心境に変化が訪れていることを知る。 

『そのうち良くなってくよ。気持ちも、状況もさ』

 マーニーの言うとおりだった。

 ならばそろそろ、自分で前に踏み出すときだ。

 つぐみは息を吸って、腹に力をこめる。家族に向かって、思っていたことを口にした。


「年が明けたら、新しい仕事、探そうと思ってる」


 声に出してみたとたん、憑き物がとれたように肩の力が抜けた。

「私、元々マイペースで人に合わせようって気がないでしょ。おじいちゃんの看病や忌引きで長く休んだあと、会社で浮いちゃって。与えられた仕事をただこなすだけで、昼ご飯も、休憩もほとんどひとりだし、飲み会も誘われない。自業自得なんだけど、私の居場所はないんだ」

 即座に異を唱えると思っていた家族は、皆黙って耳を傾けてくれている。

「子供のころから、お父さんもお母さんもとにかく商売第一、おねえちゃんやお義兄さんも、和菓子屋が天職って感じでしょ。だからなのかな、自分はどんな仕事についても敵わない気がしてた。今の仕事も、食べるためだ、って割り切って働いてきたつもりだけど、なんかね、このままじゃ自分が駄目になりそうで。甘ちゃんかもしれないけど、皆みたいに自分を捧げられる仕事を見つけて、1からやり直したい」


 マーニーの言葉を今さらながら思い出す。

『今の仕事に気持ちが入んないなら、好きな詩を本職にしたらいいのに』

 つぐみの仕事に対する姿勢が、他ならぬつぐみのためにならないことを、彼はわかっていたのだろう。次にどんな職業に就きたいのか、自分の中にはっきりとした見取り図はない。それでも、一旦けりをつけて、新しい場所に進んでみたかった。

 詩を本職にする気持ちは、今もない。ただポエトリー・リーディングがなければ、今の自分はなかった。これからも詩は、自らが頼るよすがであってほしい。

 ならば武士の脇差わきざしのように、本差ほんざし同様、常に手入れを怠らずにいよう。いざというとき本差が折れても、素早くその短いつかに手を掛ければ、きっと何とか戦える。


「つぐみはさ、案外客商売とかのほうが向いてるかも」

 姉の比和が意外なことを口にした。

「本ばっか読んでるから内気にみえるけど、子供のころから度胸が良くて、初対面の大人にも平気で話しかけてたよね。子供も好きだし、結構古いこととか知ってるから、お年寄りウケもいいじゃん」

 根っからの商売人である姉から、そんな評価をされているとは思わなかった。

「じゃあなおさら、うちを手伝えば」

 母親が嬉しそうな声を上げるので、すぐに否定しておく。

「だめだよ。実家だと甘えちゃって、自分のためにならないから」

「じゃあ、新しい職場のアテ、あるの」

「ないけど。職場には3月で辞めるって言って、ハローワーク通うよ。できればおじいちゃんの家から通えるとこがいいな」

「えっ、あの家にずっと住む気?」

「うん、おじさんとか親戚の許しがもらえれば。今の夢、って言うと大袈裟だけど、私、お金貯めておじいちゃんの家、残したいんだ。壁塗り直して、もっと頑丈なドアに替えて。本も俳句帳も整理して残せるものは残したい。あれが私の原点だから」

 呆れたようなため息のあと、父親が重い口を開いた。

「簡単に言うけどな、古い家の管理は大変だぞ。金貯める前に、家が潰れちまうんじゃないのか」

「外は古いけど、中の造りは案外しっかりしてる。まだまだいけるよ。それに今のご時世、あの土地を更地さらちにするよか、家を残しといた方が相続税が得だって」

「変な知識だけはあるんだよね、つぐみは」

 ため息交じりで母親が呟けば、姉も追い打ちを掛ける。

「あんな家にこだわる訳がわかんないけど。それとも、もしかして、近所に恋人でもできたとか」

 恋バナ好きの姉の勘ぐりは、ある意味当たらずとも遠からずだ。

 祖父の家の佇まいを褒めてくれたマーニー。空師堂から送ってくれたあとも、ひとり暮らしのつぐみを気遣い、鍵をかける音を確認するまで帰る足音はしなかった。

『おやすみ、つぐみ』

 ドアを閉めるときのしゃがれ声や、あたたかな眼差しが蘇る。向こう見ずな自分を守ってくれた、ソフトモヒカンの烏天狗。

 ひとり顔を赤らめているところを、姉に目敏く見つけられた。

「何、つぐみ、マジで恋人いるんだ?」

「え、ほんとに」

「違うって!」

 否定するつぐみを余所に、母と姉は勝手に盛り上がる。

「だったらなおさらあの家はないわ」

「うんうん。変な気起こして上がり込んだとしても、『お前みたいなもんに、うちのつぐみはやれーん!』って、おじいちゃんの呪いが炸裂して、本の山に押しつぶされるのがオチ」

 下世話な話の成り行きに、父親が居たたまれなくなったのかテレビのリモコンをつける。

「そろそろ蕎麦食おうや」

 言わずと知れた国民的歌番組が、派手なオープニングと共に始まった。倉庫の在庫を確認していた姉の夫正和も戻ってきて、皆で卓を囲む。今夜の年越し蕎麦は姉が担当したらしく、もったいぶって丼を配る。

「このおつゆ、結構よく出来たと思うんだ」

 ひと口啜って、母親が『確かに』と頷く。

「コクがあっておいしいわ。出汁、何使ったの」

「鶏ガラと鰹節。正和さんちは鶏ガラ使うっていうから」

「道理で。でも鶏ガラって、ここらのスーパーじゃなかなか売ってないんだよね」

「うん。鶏肉ってお蕎麦の具にも入れるし、お雑煮にも使うでしょ。モモ肉買うついでに鶏肉屋さん行って、安く分けてもらっちゃった」

 ふたりの会話を聞きながらひとり、なるほど、と頷く。年越し蕎麦も雑煮も母親任せだったから考えが及ばなかったが、年末年始は鶏肉を使う機会が多いのだ。『大晦日まで営業いたします』の張り紙を、今さらながら思い出す。クリスマスを過ぎても、マーニーはきっと忙しく働いていたのだろう。

(今ごろまだお店にいるのかな)

 さすがにもう営業は終わっている時間だが、一年の締めくくりの日、掃除や後片付けもあるはずだ。疲れているところを邪魔したくない、と思う心と、話をしたい、という気持ちが揺れる。これからの身の振り方が決まったのは、マーニーのおかげだ。自分の心境の変化を伝えたい。励ましてくれたお礼が言いたい。

(電話、してみようか)

 ポケットの電話を取り出そうとしていると、姉に怒られた。

「つぐみ、せっかくのお蕎麦が伸びる。早く食べてよ」 

 あわてて蕎麦に集中する。その後も家族団らんの場を抜け出すことはなかなか難しかった。蕎麦を食べ終わると、今度は風呂に入れと急かされる。蕎麦と風呂で身体も温まり、こたつに戻れば今度は目の皮が弛んできた。義兄のいる前にも関わらず、だらしなく居眠りしてしまう。

 ふと目を覚まし掛け時計をみると、すでに10時を過ぎていた。演歌歌手が涙ながらに歌うテレビの前で、母はみかんを剥いたまま船を漕いでいる。姉は、と見回せば台所で洗い物をしていた。これは、チャンスだ。酒を酌み交わしている父と義兄に目で断って立ち上がり、忍び足で廊下に出る。

 自分の部屋に向かいながらポケットから電話を取りだすと、突然その電話が鳴り始めた。

「わっ」

 取り落としそうになって慌てて持ち直し、待ち受け画面をみる。

 そこに出ている相手の名を見て、また驚いた。


『マーニーさん』


(えっ、私、間違って押しちゃった?)

 それとも、あまりに彼が恋しくて幻でも見えているのか。

 何度も画面を確認するが、間違いない。これは明らかに彼がかけてきているのだ。

(どうしよう、なんでかけてきたんだろ)

 自分から連絡しようと思っていたくせに、気が動転した。その間も電話は鳴り続けている。

(とにかく出なきゃ)

 覚悟を決めて、通話ボタンを押した。

「もしもし」


「……おう」


 お馴染みのしゃがれ声は、受話器を通しているせいか少し低い。

 それでも、彼だ。彼の、声だ。

「マーニーさん」

 震える声で呼びかけると、長い吐息が聞こえてきた。

「ごめんな、遅くに。今電話してて大丈夫か」

「う、ん」

 涙が溢れてきて、うまく声が出せない。しっかりと電話を握りしめながら、伝わりもしないのに何度も何度も頷いた。

「何か久しぶりだよな。元気だったのかよ」

 自分のほうが忙しかったくせに、人の心配をする彼が愛しい。

「元気だよ。マーニーさんこそ、お店、今日までだったたんでしょう。大変だったね。ご苦労さま」

 マーニーはまた長く息を吐く。

「ありがとな。おかげさんで、何とか今年も終わったって感じかな。親父もお袋も、酒飲んで爆睡してるよ。毎年大晦日はテレビつけっぱなしで、こたつで朝までコースだ。朝起きて雑煮食べながら、お袋が『今年はどっち勝ったの? 紅? 白?』って訊くのが恒例」

「ああ、うちの実家もそんな感じ」

 受話器越しに笑い合う。彼の日常を知るのがうれしい。前と同じように笑えるのがうれしい。

「つぐみは、爺さまの家でひとり年越しか」

 心配するような声に、すぐさま『ううん』と返事をする。

「実家に帰ってきてるの。今みんなで年越しそば食べたとこ」

「はあっ、実家? つぐみの実家ってどこだっけ」

 何故か慌てるような様子のマーニーに、そう遠くない町の名を告げると、安心したような声が漏れた。

「そっか。よかった」

 何がよかったのかはよくわからなかったが、それより話したいことでつぐみの頭はいっぱいになっていた。

「マーニーさん、あのね、私、3月いっぱいで今の仕事辞めることにした。このままじゃいけないって、ようやく思って。さっき家族に話したとこ」

「そっか」

 マーニーは少しの間考えこむように黙ったが、やがて『いいかもな』と呟いた。

「年が明けたら、新しい仕事探そうと思ってる。自分に、見合った仕事を」

「うん、そういう気持ちになったのは、悪くねえよ」

 そうは言ったが、マーニーの言葉は何となく歯切れが悪い。

「その、爺さまの家はどうすんだ。出て、どっか行くのか」

「それはできればあのままで。おじいちゃんちから通えるところを探そうと思って」

「ああ、そうか、それはいいな。それはいい」 

 マーニーは安堵したように同じ言葉を繰り返した。彼の声が心地よくて、夢心地で目を閉じる。

(ああ、会いたい)

 直接会って話がしたい。気持ちが膨らんで、止まらなくなった。

「マーニーさん」

「ん?」


「会いたい」


 こぼれた言葉を繕う気はもうなかった。今年の最後くらい、素直になっても罰は当たるまい。


「会いたいよ」


 黙ったままのマーニーに、もう一度告げると、受話器の向こうから息を詰めるような声がした。


「……畜生、俺も、だ」


 身体の芯が、弾かれた弦のように震えた。

「待ってろ、つぐみ。今そっちに迎えに行く」

 鍵を取るような金属音がする。車で来ようとしているのだろうか。慌てて『待って』と叫んだ。

「マーニーさん、うちの場所知らないでしょ。夜だし、迷ったら。私がそっちに行く」

「こんな夜中に、つぐみひとりで外に出せるかよ」

「大丈夫だよ。叡生寺で待ってて。ここから自転車だったら、広い道通って15分くらいで行けるから」


「——車で送ってったげる」


 背後からの声に肩が飛び跳ねた。振り返れば、洗い物をしていたはずの姉が、腕組みをして立っている。

「な、な」

「周り気にしながら電話持ってどっか行くんだもん。当然、男、でしょ。ほら、姉が車で送って行きます、って、相手にそう言って」

 姉の鋭さに唖然としながらも、送ってもらえればありがたいのは確かだ。口ごもりながら、マーニーにその向きを伝えた。

「お姉さん?」

「うん、何か盗み聞きされてた」

「は、まいったな。でもまあ、車で送ってくれるなら安心だ。あったかくして来いよ。待ってる」

 そこで電話は切れた。

『待ってる』

 その言葉の、夢のような甘さ。その余韻を噛みしめていると、後ろから姉に小突かれた。

「ほら、のんびりしてると今年が終わっちゃうよ! 急いで、支度、支度!」

 



 結局酒を飲んでいた義兄もついて行くことになり、酔いつぶれた父親と眠っている母に『3人で初詣に行ってきます』と置き手紙を残して家を出た。

「比和とつぐみちゃんだけじゃ、心配だろ?」

「酔っ払いの正和くんが役に立つとも思えないけど。つくづく私が下戸で良かったでしょ、つぐみ」

「はあ」

「酔っ払ってたってなあ、一応男なんだから、頼りになりますよ? ねえ、つぐみちゃんの恋人ってどんな人? やっぱインテリ系かな」

 酔っている義兄はいつになくお喋りだった。恋バナ好きの姉の夫は、やはり恋バナ好きであることを知る。

「あ、その、恋人ってわけじゃ」

「またまたー。こんな時間にふたりっきりで会うんだよ? 友達ってわけないでしょう」

 どう説明したらいいのかわからない。つぐみの気持ちは言わずもがなだが、マーニーはどうなのだろう。24日に店で会ってから、嫌われたかも、とまで思っていたのに。

『……畜生、俺も、だ』

 その声を思い返すと、身体の芯が絞られるように疼いた。動悸がして胸が苦しい。目を瞑ってやり過ごそうとしているのに、義兄の追求は止まらない。

「どこで知り合ったの? 何歳くらい?」

 さすがの姉も辟易としたらしい。

「正和くん、ウザい。ほんと酔うとしつこいんだから。つぐみ、もうすぐ着くけど、駐車場、混んでたら停められないかも。この酔っ払いまで降ろすと時間かかりそうだから、門の前にでもつけようか」

 外灯に照らされ、叡生寺の門が見えてくる。本当はすぐにでも駆け出したい。 

「手前でいい。停めて。ありがと、助かった」

「え、つぐみちゃん、もう降りちゃうの?」

「アホ正和。ドライブじゃないっつーの。つぐみの相手は首長くして待ってるんだから。あんたは家で飲み直し。じゃね、つぐみ。健闘を祈る!」

 シートベルトを外すのももどかしい。つぐみはドアを開けたとたん、姉たちへの挨拶もそこそこに飛び出した。








 


 

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