大胆に侵入
―ガキンッガキンッ ―ガシャン
―ゴォォォ ―ウィィィィィン
機械の音、男性の大きく野太い声、それ以外の音はない。
人の住む様な建物はまったくなく、すべてが工場や倉庫のような見た目だ。
中の空気はより一層汚い、長くいたら体調を崩しそうだ。
この工廠村は、元々個人で経営する機械技師が集まってできた村らしい。
でもここ最近魔女とのいざこざが重なり、勢力を増幅、ひとつの組織となった。
いまの工廠村は休みなく動き続け、大量の兵器と悪い空気を作りだしている。
(アベル、こっちだ)
頷いて答える、ダレンはさっきより速く走り出した。
廃棄された部品、機械だろうか、下を向いていないとそれらに足をとられてしまいそうだ。
それでもダレンにおいて行かれないように走る。
僕は運動が得意じゃないから少し正直しんどい。
しばらく走った、下を向いてばかりだったのでどのくらい走ったかはよくわからない。
立ち入り禁止で外からしか見たことなかったけど、想像以上に広い、広すぎる。
こんな規模の工場で兵器を作って、魔女と戦争をするなんて・・・。
突然止まったダレンの背中にまたぶつかった。
鼻血がでそうだ・・・。
何かあったのだろうか、できれば騒ぎにはならないでほしい。
「最近よ、ここの空気と臭い、ひどくなったよな」
「あぁ、わかります、自分も咳とか多くなりましたし。職場の空気は悪くなる一方、それに労働時間も異常ですよ」
「そんなことより、油のにおいが体に染みて女に逃げられちまいそうだ」
「先輩はそんなこと気にしなくても大丈夫ですよ、いろんな意味で」
「今日は絶対奢ってやらねぇ・・・」
「先輩はかっこいいからって意味ですよぉーハハハ」
すぐそばに職員二人が通っていった。
ダレンに口を押えてもらわなかったら喋ってしまっていた。
ばれたら確実に追い出されるんだ、もう一度気を引き締め直さなきゃ。
「ぷっはぁ!ばれるとこだったぜぇ!喋ったらダメとか拷問だろ!?」
「・・・・」
「ん?アベルどうした?腹でも減ったのか・・・って、あ、やべ」
―おい、子供の声がしなかったか?
―そんなはずはないと思いたいですが、ずいぶん馬鹿でかい声でしたね・・・
―さっきの場所だ、おい、探すぞ!
「てへっ☆」
(ダレン・・・君ってやつはぁぁぁ!!?)
「楽しくなってきたなぁ!!こっちだ!」
「うわぁ!」
ダレンに引っ張られれ、細い道に入る。
―いたぞ!あそこだ!!
「もう少しだから頑張ってねん」
「なんで君はこういつも感じな時に失敗するんだ!」
「にゃっははは、気にしない気にしない。さ、近道だっ!」
「ちょ!?あぶなっ!!」
なんとか頭を下げるのが間に合い、小さな穴を潜り抜けた。
一つ奥に進んだという感じだ、雰囲気がガラッと変わった。
子供がやっと入れるような穴だったから、もう追ってこれないと思う。
息を整え、周りを見渡した。視界悪い、黒くて、臭い。
「いつ来ても嫌な場所だぜ、ここは」
「ゲホッ・・・いつ来てもって何回も来てるの?」
「あぁ週7でな」
「あぁそれは毎日だよ・・」
毎日こんなところまではいってきてるのか・・・。
本当になんてやつだ君は。
―おい、ガキども、こんなとこで何してやがる
―!!??
見つかった!?まず追い出されるとして、最悪退学になるよ・・・!?