ダレンのスマホ?
買い物が終わった。
なんだか激動の時間だったな。
まるで夢の国を歩いているような…。
ユーナちゃんに会って、機械の地図をもらって。
あの、家とは言えない場所に住む人々。
まるで未来を歩いているよう街、建物。
百貨店の大規模さ、人の多さ。
それにガルさんの、シュミット家の執事さんにもあった。
何も知らない、という事実を前にどっと精神的な疲れが来る。
僕こんなに世間知らずだったのかな。
友達のことも、自分の住む国のことでさえ、何も。
自分で働いて、自立した気になっていただけなんだな。
なんでこんなにも知らないことが多いんだろう。
僕が子供だから…?
なんでいままで新聞とかも読まなかっただろう。
あれ、いままでってー
またなんだか記憶が虚ろになる。
なんだろうこれ、過去がはっきりしない。
なんだか落ち込みながらも、極力人通りのない道を行き
ダレンの元に帰ろうと帰路についていた。
この区は夕方になっても明るさが変わらない。
チカチカピカピカ、怪しく光っている。
時間の感覚がおかしくなりそうだな。
なんだか僕くらいの子供が一人で歩いてるのも目立つ。
特別なにかしているようには見えない、集団でたむろしてる。
明らかに怖そうなお兄さんも多いし。
人気のない道を選んだのは間違いだったかな。
そういえばこのまま帰っていいんだっけ。
何か忘れてる気がするけど。
…あぁそうだ。
ダレンにメモの裏を見るように言われてたっけ。
思い荷物をガチャガチャ言わせながら胸からメモを取り出す。
さっき見たときは裏に何か書かれているようには見えなかったけど。
あ、なにか書いてある、見間違いかな。
「ようアベル、一人で寂しくないか?
買い物はちゃんと済んだか?
今のうちに確認しな、忘れ物はご法度だぜ。
(君にだけは言われたくないよ、ダレン)
ユーナにあっただろ?
あのクソガキのことだ、お前に電気で動くマップを渡してるはずだ。
それにVIPエリアで買い物はできただろうな?
(あれ、なんでダレン全部知ってるの!?計算済み?)
ージリリリリリリ!!!
「ひゃうぅ!なに!?」
突然目覚まし機能のついた時計のような音が鳴り響いた。
自分でも聞いたことのないような声が出てしまった。
これだから女の子に間違えられるんだよ…。
それにしても、どっどこから?
ージリリリリリリッ!!!!
急かすように再び音が鳴る、って僕のポケットからだ。
荷物が汚れない場所を探し地面に置き、焦ってポケットを探る。
さっきのマップが鳴っていたようだ、時計付きなのかな?
えーっと止め方は。
これかな?
「おい!遅いぞ!!切れちまうだろうが!!!」
「う、うあぁぁ!?ダレンの声っ??!」
「何を驚いてやがる、俺がただの地図を作るとでも思ったか?」
(ち、小さな箱から声がしてる、ろ、録音機?でもまだ開発されてないはずじゃ。それにこんなに小さいの?)
「アベル!聞いてんのか?」
「ふえぇぇよくできてるなぁ…」
「あーべるくーん」
「どうやって録音するんだろ…」
「はぁ…現在時刻でも言えば信じてくれるか」
(…説明中)
「えっと、ダレン?」
「なんだ?さっさと本題に入りたいんだが」
「すごい!これいまダレンと話してるんだよね!!」
「にっひひそうだろ!すげーだろ?って何回このくだりやるんだよ!!」
「感動だよ、遠くの人と会話できるなんて!」
「話を戻すが、とにかくメモの通りにクソガキに会って、VIPルームで買い物できたんだな?」
「は、はい!できました」
「なぜ敬語?」
「なんだか緊張しちゃって、あはは…」
「あんまもたもたしてる暇ないんだぜ、このまだ試作段階で燃費悪いし。買い物がちゃんと済んだみてぇだから、次の段階に進みたい」
(これが試作品…)
「わ、わかりました。次は何をすれば!?」
「疲れているとは思うんだが、そのまま狭間を通って魔女区に行ってくれ。間違っても関所には近づくなよ」
「荷物は一旦置きに行くんだね?」
「いや、そのままだ。別に危険物が入ってるわけでもない」
「えぇ重たいよ!」
「それがないと意味ないんだ」
「人使い荒いよぉ。まぁ僕の我がままだから頑張る」
「おう、頑張れよ。正直、結構大事になるから覚悟しろよ」
「う、うん。それで魔女区に行って何をすればいいのかな」
…お前の次の任務は、魔女学校への侵入だ。