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輪廻  作者: 竜崎 詩音
13/16

VIP?


~機械区 百貨店のある広場~


 ―いらっしゃいいらっしゃい!!

―ワイワイ ガヤガヤ


 ―ドンドン ガチャガチャ

  ―これいくらだい?


 この国ってこんなに人がいたのか。

圧巻だった、今まで過ごした僕の暮らしがまるで何年も過去のことの様だ。

でもここはまだ百貨店前の広場だ、隣の区を歩くだけで何度驚けばいいのだろう。


感動や驚きの中でも、なんだかわからない疑問は尽きなかった。

どうしてこんなに高い建物があるのに魔女区からは全く見ないんだろう。

いくら狭間を隔てているからってこれはさすがに。


「やぁお嬢ちゃん家で服を買っていかないかい?」


「え?」


「お嬢ちゃん綺麗な顔してるから似合うと思うよぉ?」


突然仕立て屋の店員さんに話かけられた。

完全に僕を女と決めつけてるな。


「あ、あの僕男の子なんです」


「おや、またまたご冗談を、このワンピースなんてどうだい」


うわぁ綺麗なワンピース。

じゃなくて。


「僕は男ですってばぁ!」


そういって立ち去ってやった。

僕が細くて小さいのは分かっているけど、そんなに女の子っぽいかな。


むすっとして早歩きしていると、百貨店の入り口が見えた。

大きな階段に大きな扉、いくつかの銅像。

魔女学校に似た佇まいの建物に大量の人とモノが吸い込まれてゆく、様に見えた。


人の波に流され押され、やっと入り口に辿り着いた。


「君一人かな?」


「あ、はいそうです」


「入館証を」


「えっと、あれどこに」


「早くしなさい、後ろがつかえている」


「ごっごめんなさい、あっ」


門番さんに急かされ、誤って地図を落としてしまった。

ユーナちゃんからもらったのに壊しちゃったかな。


「こっこれはユーナ様の物では」


ユーナ様?


「失礼いたしました、ユーナ様のご友人でしたか」


「え、えっと入館証ありました」


「次回からは入館証なんて必要ありません、私にお申し付けいただければ並ばずとも裏から入れるよう手配いたしますので」


「へ?」


「先ほどの無礼、お許しください。ではごゆっくり」


―おい、シュミット様のご友人だ、ご案内して差し上げろ

 ―はっ!


 えっと、中に通していただきました、すごく広くて豪華な建物だなぁ・・・

じゃなくて!


なになに、ユーナ様?

どういうこと、もうなにがなんだか。

とにかく門番のおじさんに謝られた挙句裏に通していただいた。

VIP専用のとかなんとか、ユーナちゃん本当に何者!

それにさっきシュミットって言ってたよな、ほんとにダレンの妹だったんだ。


この百貨店はとてつもない大きさではあるのだが、それでも収まりきらない客の数と、何より扱っている品の数のせいで店がいっぱいいっぱいになってしまい、一般の客は買い物をする時間が限られているそうだ。


そのうえ一定の額の納税が行われない区民には入館証が渡されない。

ここで買い物することが今ここの区民にとってのステータスであるようだ。

特に何を買う訳でもなく、ただ店を回るだけ客も後を絶たない。

今日になって初めて、機械派のおかげで起きている高度な経済成長を身を持って感じた。



 ついつい目をキラキラさせ、店内をうろついていた。

VIPのためだけに設計されたこの場所は、百貨店の倉庫に直通しており、一般販売されている商品全てのほかに、海外の高級な品物もあった。

まぁ一般の入り口から入っても揃いそうなものばかりだったけれど、ゆっくり買い物できることに越したことはない、制限時間付きなんてなにか買い忘れてしましそうだ。


メモを見直し買い物を始める、全部何に使うかわからないな。

僕に理解できないような名前の部品たち、ボルトとかネジかな?店の人に見せれば分かるみたいだ。

何種類かの布、革製のベルト。

頑丈な金属やさわり心地のいい木板、これはかなり高級なものだ。

香辛料、ペッパーだ、店で一番の飛び切り辛いやつをって書いてある。

塩に油に木炭?料理でもするみたいだ。


とにかく全部そろったぞ、こんなに一気に買い物をするのは初めてだけど。

一体いくらぐらいに、それよりどこでお金払えばいいのかな?


「すみませーん、お会計はどちらですかね?」


「おや、お嬢ちゃん迷い込んだのかい?」


優しそうな、でも不思議な威圧感のある白髭だ。

白髭のおじさんだ。


「いえ、え、えっと黒い服のおにいさんにここに連れてきてもらって。買い物が済んだのでお会計をしたいんですが」


なんだか他の大人と話すより緊張してしまう。

なんでだろう。


「おや、そうでしたか。少々お待ちください」


 ―おい、この方は?

  ―シュミット様のご友人です

   ―シュミット様の?ではユーナ様の・・・


他の黒服の方とお話を始めしまった、急ぐわけではないんだけど、なんだかここは居心地が悪いっていうか、場違いというか。

出来れば早めに買い物を済ませてしまいたい。


「大変お待たせいたしました、お嬢様」


「い、いえ大丈夫です」


「お会計は結構でございます、お望みであれば商品はご希望の場所までお送りいたしますが?」


「え?でも僕、お金ちゃんと持ってきてますし、えっと」


「いいえ構いません、シュミット様のご友人とお伺いしておりますので」


「そ、そうなんですか」


「商品はお送りいたしますか?」


なんだか困惑している内にどんどん話が進んでしまってるな。

でも買い物済ませたら荷物を持って魔女学校に行かなきゃ行けないから。


「えっと、送ってもらわなくて大丈夫です。代わりにこの百貨店の紙袋に入れていただいてもいいですか?」


「はい、かしこまりましたお嬢様」


「僕男の子だよ、です」


「おや、これは大変失礼致しました。それではお坊ちゃま荷物を包ますのでもう少々お待ちください」


「あ、ありがとうございます」


僕、今日で何回目だろう。

魔女区じゃそんなに間違えられたことないのに。


「あぁ、お坊ちゃま失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「え、えっとアベル・クレスウェルです」


「有難う御座いますアベルお坊ちゃま。私はシュミット家に仕えております執事のロバート・ガードナーと申します、以後お見知りおきを」


「執事?!」


「おや、そんなに驚くことですかな?」


全く想像できない、お嬢様のユーナ、お坊ちゃまのダレン。

貴族的なガルさん。

なんだろう、もはや笑い話のようなこの感じ。


「ユーナちゃん、お嬢様だったんだ」


「はっはっは、あのお姿を見ては想像できませんかな。しかしガル様、いえシュミット家はこの時代の権威なのです。それを伺わせないあの人柄も、シュミット家の魅力なのでしょうな。おや、梱包が終わったようですな、お買いものお疲れ様でございました」


「あ、ありがとうございます」


なんだか最初から最後まで困惑と緊張しっぱなしだった。


「出口はこちらでございます」


 ―またのご来店をお待ちしております


(しかしあの子、機械区の子供ではないな。それにクレスウェルといったか・・・まさかな)



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