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輪廻  作者: 竜崎 詩音
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目をそらしてはいけない

ていうかユーナちゃんがくれたこれはなんだろう。


「うわ、す、すごい!」


数字の書かれたいくつかのボタンの上に動く地図が表示されていた。

全く見たことのない道具、機械だ。


僕が操作する通りに地図が動く。

この国全土の地図が入っているようだ。

これユーナちゃんが作ったのかな・・・。


とにかくこれのおかげでダレンの雑な説明のせいで迷わずに済む。

ダレンは北だとしか言ってなかったからな。


これ方位磁石もついてる!

ってダレン、百貨店は西じゃないか・・・。



地図を見ながらひたすら道なりに進んだ。

気が付けばあたりを包んでいた黒い空気は薄くなり、少しずつ人の姿が見えてくる。

空気はましになったものの、地面が油やよくわからない液体で濡れていて非常に歩きにくい。

途中で喉が渇き、水溜めや井戸を覗いたけれどとても飲む気にはなれなかった。


まだ広場までは遠い、足を取られぬよう下ばかり見ていたが、いつの間にか小ぢんまりした建物が並んでいた。

大きさや作りから動物の小屋かなにかかなと思った。



―お母さん!お腹へったよ

 ―昨日ご飯食べたでしょ、我慢して頂戴


いや、違った。

人が、住んでいる。

住んでいるとも言い難い、ただ雨風を凌いでいるだけの様な。

扉も無いような建物がいくつか並んでいるが、そのすべてに人が住んでいるようだ。

それらの前を通ると必然的に中が見えた、見えてしまった。


思わず声を出した。

中には母親と、目が一つしかない子供がいた。

その子と目があってしまったのだ。


あってしまった、なんて言い方は酷いのかもしれないけど。

僕はとても、見てはいけないものを見てしまったという気分になる。

どうしてだろう、お医者には掛からないのだろうか。

何故こんな小屋に住んでいるのだろうか。

僕にはなにも分からず、すぐに目をそらしその場を走り去った。


大分走って、やっと普通の民家が見えてきた。

やっと、落ち着ける。

あの子の目が頭から離れない、あの場から離れてほっとしている自分になんだか罪悪感でいっぱいになる。

なんとなく、ユーナちゃんに貰った地図を見る。

さっきの小屋のあるはずの場所には・・・なにもない。

なかなか広さだった、それなりの人数が住んでいた。

それなのに、なにも表示されていない。

無いことにされている。

なんだか、もう。

僕にはどうにもできないことだけれど、なぜそうなっているのかもわからないけど。

それをよしとしているこの地図を、なにも分からない自分を許せなかった。


 一度木陰で休み、目的と方法を考えた。

何度考えても、最終的にここに辿り着く。

僕は知ってどうしたいんだろうか、どうして新聞とは違う事実があると決めつけているのだろうか。

いや、違うんだ。

ここ最近僕が体験したことは、新聞にも大人の話にも出てこない何かにつながっているのは確かで、それを知れば姉さんが死んだ理由も。


姉さんの死んだ理由を知ってどうしたいんだろう。

事故だって言うことにしておいた方が楽なんじゃないか。

やり場のない負の感情がループする螺旋階段のように渦を巻く。


考えるのはいったんやめよう。

こんな時でも僕は一人じゃないんだ。

協力してくれるダレンのためにも、僕が怖気づいてちゃいけない。


地図を見直し百貨店に向かう。

機械区の居住エリアに入るのは初めてだ。

工廠村も機械区に属する場所なんだけれど、居住エリアとはずいぶん離れたところにある。

今更だけれど、なんで工廠村ってあんなに魔女区の近くにあるんだろう。


機械区の居住エリアはなんというか、魔女区とは違う。

上手く表現できない自分の語彙力の無さが憎い。


機械的な栄え方、そう言ってしまえれば楽なのだけれど。

見たことのない乗り物、見上げたら首が痛くなるような建物の数々。

ちかちか光る看板に、音楽を鳴らす機械もある。


なんだろう、本当に区を一つ跨いだだけの空間とは思えない。

どこか別の世界にやってきてしまったのだろうか。


さっき見たゴミの山や、あの場所のことなんて忘れてしまいそうだった。


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