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輪廻  作者: 竜崎 詩音
11/16

ユーナ!

なんだよダレン、ここから広場には大して人はいないって言ってたじゃないか!

恐る恐る声のした方を振り返る、が誰も見当たらない?

空耳にしては大きな声だったけど。


「おーい!無視すんじゃねえよー」


まただ、気味が悪い、急いで買い物に向かおう。


「っておい、ここだよこーこ!山のうえ!!」


山のうえ?さっき見渡したけれどなにも


あ、いた。

予想していたよりもだいぶ小さな子供が仁王立ちしていた。

仁王立ちだけれど、ちょこんっていう感じがした。

あんなに小さいんじゃ気が付かないよ。


「君、大丈夫?こんなところで遊んでたら危ないよ?」


「な、なんだと!子ども扱いすんな!!しかも俺様の城に入り込んでおいて俺様を知らないだと?!」


「どこからどう見ても子供じゃないか」


「う、うるしゃい!!」


さすがに無視する訳にもいかない、僕は山に登り子供のそばにいく。


「なんだ客じゃないのか?まさかお前も俺を叩くのか!」


「客?お前も?大丈夫だよ、叩いたりしないから。ほら鼻水拭いて、まず山から下りようか」


「ん、あ、ありがとよ」


ダレンが言いかけてたのはこの子の事かな?

小さな作業着を着た油まみれの子供は、機械に腰掛けこう言った。


「ようこそユーナの店へ!今日は何の用だい?」


「み、店?」


「そうさ!ユーナ様の城であり店でもあるのさ、えっへん!」


「ユーナちゃんっていうんだ、じゃあ女の子だね」


「な、名前と性別は関係ないだろ!」


「かわいいね、ユーナちゃん」


「なんなんだよぉ・・・」


「でもこんなところで遊んじゃ危ないでしょ?」


「遊んでんじゃないもん!お店やってるの!!」


「へーなにを売ってるのかな?」


「へへ、よくぞ聞いてくれた!」


なんだかこの子、誰かに似てる、よく知ってる誰かに。


「ユーナ様はな、ここに捨てられた機械を直してね、もっとすごいモノに変えてるんだ!」


「すごいね!修理するの得意なんだ」


「修理するだけじゃないんだぞ~、改造しちゃうんだから」


ユーナは手に持っていたペンチらしきものをぶんぶん振り回しながらそう言った。

危ないよ、すっぽ抜けたら大変だ。


「それをな、破格のお値段で売ってうの」


あぁ、また鼻水。


「売るって、こんなところにお客さんが来るの?」


―おぉいいもんみっけ!


「えっとユーナちゃん?」


―おっほほーこれはすごいもんだ~!


なんだろうこの既視感は、全く話を聞いてもらえてない。


―これをこうして・・・


「ユーナちゃんほらまた鼻水垂れてる」


「むぅありがとう」


目をそらしちゃった、照れてるのかな?

髪が短いし、まだ幼いから傍から見れば確実に男の子に見えるだろう。

誰に似ているのかと思えば、夢中になって話を聞いてくれないあたりダレンにそっくりなんだ。

男の子っぽい部分も合わせてかなり似ている。


「機械好きってみんなこうなのかな、ダレンだけかと思ってたよ」


「ダ、ダレン?!」


ユーナちゃんの身体が明らかにダレンというワードに反応してビクついた。

その反応で僕の方がびっくりしたのは内緒だ。


「いまダレンって言ったか!?」


「う、うん言ったけれど、ダレンを知ってるの?」


「お、おまえダレンに言われて来たんだな!?こ、この機械は渡さないぞ!」


ダレン・・・君はこんな小さな子を相手になにをしてるのさ。

でもなんでだろう、完全に怯えてるようには見えないのは。


「なにもとったりしないから大丈夫だよ、僕はダレンの友達でアベルって言うんだ。機械区には百貨店に用事があって来たんだ」


「ダレンの友達―?嘘つくにゃ!あいつに友達何ているわけないだろ」


ひ、ひどい。自分の事じゃないのにこんなに悲しいことがあるのか。

この子の言いぐさだとダレンのことを良く知っているような言い方だな。

確かに学校でのダレンは寝ているか、寝ているか、寝ているだけだ・・・。

友達いないっていうのもあながち間違っていないのかもしれない。


「あ、でもアベルは狭間の穴から出てきたんだから友達なのか」


「ダレンはよくここに来るの?」


「そうなの!ユーナの場所なのにね、いっつも叩くの」


「そっかじゃあ僕が叩かないように叱っておいてあげるね」


「ほんとか!アベルは強いんだなぁ」


「そんなことないよ」


本当にそんなことはない。

ふと言われて、なんだか感傷的になってしまった。

今だってダレンに頼りっぱなしなんだ。

昔だって姉さんに、あれ、昔って僕、どんな。


「あ、もう帰んなきゃまた叩かれる!」


「そうなの、お家どこかな?送って行ってあげよっか?」


僕が引き止めてしまっていたのなら申し訳ないな。

ユーナちゃんは早熟に思えたけど、それでも子供は子供だ。


「ユーナ大丈夫だぞ、一人で帰れうから。どうせはじゃまには誰もいないしなぁ」


「え、狭間?」


「急がなきゃ、おにい、間違ったダレンに叩かれるー!」


そういってユーナちゃんは僕が通ってきた穴に入って行ってしまった。


「あ、アベル!ひゃっかてんにいくならこれ貸してあげるね」


穴から掌サイズの四角いものが投げ出された。


えーっと、なに?おにい?

えっと、今のは、ダレンの、妹?


なるほど、どおりでそっくりな訳だ。

本当に妹かどうかは分からないけれど、なんだか圧倒されてしまった。

まあダレンの家に帰ったら全部わかるかな。


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