四話
「こちらが現在リッチモンド様が受注することの出来る依頼になります」
そう言ってギルド嬢の女性が俺の前に依頼書の挟まれた分厚い本を差し出した。
俺はその本を受け取り開くと中身を確認した。
どれどれ。
薬草採取に隣町への配達、そして薬草採取に薬草採取。
ん?
他には薬草採取や鉱石採取、そして薬草採取。
「随分と薬草採取の依頼書が多いようだが?」
「はい、実は現在ギルドが保有している薬草を原料とするポーションの数が非常に少なくなっているのです」
「原因は何だ?」
「森にある薬草の取れる地帯に出現したアンデット系の大型モンスターのせいで薬草がほとんど枯れてしまったようなのです」
なるほど。
腐食能力を持つモンスター。そんなやつが森に出現するのは非常に厄介だろう。
「そいつの討伐依頼は出ているのだろう?」
「はい、ですが残念ながらリッチモンド様のランクでは受けることは出来ません」
ああ、確か俺は最低ランクのEランクだったな。
ちなみに冒険者のランクは最低のEランクからSランクまである。ランクアップはギルドへの貢献度をもとに行われる。
「では契約金の必要ない薬草採取・鉱石採取の依頼を全て受けよう」
「分かりました。ご存知だとは思いますが、契約金のかからない依頼は違約金も発生しませんのでご安心ください」
「ああ、分かっている」
「それでは、契約金の必要ない、ギルドからの依頼を受けていただきます。依頼は5件です。下級薬草、それと無いとは思いますが一応、中級薬草と上級薬草、そして鉱石は銅鉱石、苔石を採ってきていただきます。期限は無制限です。もしどこかで採れた場合持ってきていただければいつでも報酬をお支払いいたします」
「分かった」
必要な情報も手に入ったのでまずは金銭稼ぎのために薬草と鉱石を採取しに行く。
いや、採取しに行くというのは少し語弊があるか。
俺が先ほど倒した男たちはすでに居なくなっていた。
治療の出来る場所に運ばれたのだろう。
死んではいないはずだ、そう手加減したのだから。
先ほどから冒険者の内の何人かが俺に話しかけようかとするが、誰も実行に移すものは居ない。
さきほどアニャが断られるのを見ていたんだろう。アニャは恐慌状態に陥っていたからそれを見ていた他の冒険者たちは俺がなにかしたと思っているのだろう。つまり自分たちも俺の気に障って何かをされるのが怖い、といったところだ。
そんな冒険者たちを放置して俺はギルドを出て行く。そして裏路地に行き、他に気配がないのを確認してから転移魔法を使う。
「トランシション 転移」
とりあえず人気のないところへと飛ぶ。
「ここならいいだろう」
ここはアルヴィムの町から遠く離れた森の中。
どうしてこんなところまで来たのかと言うと、
「クリエイト・マテリアル 物質生成」
そう。依頼書にあった素材を自分で生み出すためだ。
「これで、当面の資金は確保できるな」
生成魔法を使って俺が生み出した素材は以下のとおりだ。
下級薬草 100
中級薬草 50
上級薬草 15
銅鉱石 10kg
苔石 10kg
これだけあれば良いだろう。
俺はこれを時空間魔法で空けた亜空間の中から取り出したいくつかの強度の高い袋の中に入れる。これらの袋は衝撃吸収性、耐熱・防水性、さらに対魔性能にも優れている。
さてと、すぐに戻っては不審に思われるだろう。
「一眠りしていくか」
ひとまず休んでいくことにした。
・・・俺の体に休息は必要ないのだが。