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三話

 冒険者ギルド内部には二人の男たちの叫び声だけが響いていた。

 俺はもう眼中にないとばかりにギルドの受付へと歩みを進める。俺が動き出すと同時にこの場にも止まっていた時間が戻ってきたようだ。



「おおお、すげえ!」



「見えた!?今の?」



「俺は何がなんだか、とにかく早ええ!」



 にぎやかさを取り戻した周りの観衆、もとい冒険者たち。俺はその様子を尻目に目の前に居る受付嬢に話しかける。



「すまない、冒険者登録をして欲しいのだが」



 俺が声をかけると呆然としていた受付嬢がだんだんと正気に戻ってくる。



「・・・っあ。は、はい。失礼しました。ご用件は・・・冒険者登録でしたね」



 ふむ、こんな子供にも敬語を使うのだな。



 別に耐えられないこともないが、子供だからとなめられたしゃべり方をされるのは実は少し不快である。どうせならもう少し大人の肉体にしておけば良かったなと今になって少し後悔をする。

 なんだかんだと考えているうちに受付嬢の準備が整ったようだ。



「では、こちらの水晶玉に触れてください。ご自身の名前と所持スキルが表示されます」



「なに?」



「・・・へ?」



 しまった。今のには驚いた。

 まさか冒険者ギルドにスキルを鑑定できるアイテムが存在するとは思わなかった。

 少なくとも大昔に俺が人間界を訪れたときには無かった物だ。



「いや、なんでもない」



 そういいつつ、俺は幻惑魔法を水晶玉にかける。

 俺の本当の所持スキルが知られないように。



「はい、もういいですよ。ええと、リッチモンド・ヴェロニカ様。所持スキルは・・・・剣術Lv4、火魔法Lv4、火炎魔法Lv2、光魔法Lv2、身体強化Lv3です」



「・・・すごい」



 どうやら俺の後ろに並んでいた冒険者の少女が聞いていたようだ。



「あなた魔術師だったのね。体術がすごいからそっち系統のスキルを修めているかと思ったんだけど」



 肩口で切りそろえられた美しい緋色の髪の毛。その瞳もルビーのような深紅色だ。顔もなかなか整っており、とてもかわいらしい。

 だが、そんな彼女に男の目が釘付けにならないのはおそらくその下、起伏に乏しい胸のせいだろう。



「剣術スキルがあるから前衛も出来るし、強力な魔法を使えるみたいだから後衛にも向いてる。そして光魔法。これは回復役にもなれることを意味しているの。その歳でいったいどれほどの努力をしたのか・・・」



 それにしてもよくしゃべる。このまま話を続けられて時間を無駄に消費されるのは困る。

 そのため少し高圧的な態度に出ようと思ったが、どうやらプレッシャーを掛けすぎてしまったようだ。



「俺は急いでいる」



 発したのは何気ない一言。

 だがそこには少し殺気がこもっていた。



「ひっ」



 先ほどの少女が声を上げる。全身にびっしょりと汗をかき、その身を震わしている。

 

 ふむ、どうやらこういうものに敏感なようだ。

 スキルに盗賊系統のものを所持している可能性が高いな。

 こういうのは厄介だ。レベルが低いうちはいいが、非常に高レベルの盗賊なら俺の正体を見破ることができてしまう。

 先ほどの言動からそれほどの脅威ではないとは思うが一応彼女のステータスをチェックしてみる。

 もちろん、無詠唱の鑑定魔法で。







アニャ・ルルーケン


人種:人間族

性別:♀

年齢:16


HP 310/310

MP 40/40

STR 48

VIT 65

DEX 110  

AGI 165

INT 30


スキル


短剣術Lv2、身体強化Lv1、罠解除Lv2、気配感知Lv1、

開錠Lv2


称号


なし







 やはり、盗賊系だったか。

 俺の殺気をもろに受けてしまったのは気配感知Lv1のせいか。

 まあいい。気配感知だけで俺の正体を見破るには最低でもLv8は必要なはずだ。今のところまったく問題はない。

 俺はそう判断すると恐慌状態に陥っているアニャを無視して受付に向き直る。

 待っていた受付嬢が俺に金属で出来たプレートを渡してくる。



「これは冒険者証です。所有者の名前、ランク、所属が書かれています。また、身分証明などに使うことも出来ます。」



「所属とは?」



「はい、所属は基本的にパーティが表示されている方が多いです。商人ギルドや生産系ギルドに所属されている方、また国家所属の方も肩書きなどが表示されます」



 これも魔法が掛けられている。

 受け取る前に目で見て確認したが自分を害する呪いやそれに順ずる類のものは掛けられていないことが分かった。

 正真正銘ただの冒険者証である。



「了解した。では早速依頼書を見せてもらおう」



 俺は久方ぶりに高ぶった。


 ようやく戦える・・・












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