対話
森の入り口。
ゴーレム《ピースメーカー》の胸部装甲が開き、投影魔法陣が展開する。
淡い光の中に、アレシアの姿が映る。
アレシア「やっほー。代表者だれ?」
先遣隊長「……王都先遣隊長だ」
アレシア「固いなぁ。もっとこう、フランクにいこうよ」
ルカ(横から小声)「今あなた武装ゴーレム越しだからね」
アレシア「だって安全第一だもん」
シーラが前に出る。
シーラ「……お久しぶりです、アレシア様」
アレシア「え?」
アレシアは目を細める。
アレシア「……あ」
一拍。
アレシア「シーラ!?」
シーラ「はい」
アレシア「えっ大きくなってる!」
シーラ「成長します」
アレシア「まだ実験棟で泣きながら触媒爆発させてた子が……」
シーラ「その話は」
アレシア「懐かしいなぁ〜。“私、理論は完璧だったのにぃ〜”って」
シーラ「隊長、これは対話です。戦闘ではありません」
先遣隊員が微妙な顔をする。
アレシア「え、今どこ配属? ちゃんと卒業できた?」
シーラ「首席です」
アレシア「うそ!? あの“ポーションに砂糖入れちゃうシーラ”が!?」
先遣隊員「砂糖?」
シーラ「それは栄養補助の実験で」
アレシア「甘い回復薬作ろうとして魔力暴走したよね」
シーラ「……」
ルカ(小声)「やめときなよ」
アレシア「あとね! 夜中に寮で“魔法少女になる練習”してたの誰だっけ?」
空気が凍る。
シーラ「それは」
アレシア「ほら、あのマント自作して――」
シーラ「アレシア様」
声が低い。
アレシア「ん?」
シーラ「それ以上は、外交問題になります」
先遣隊長が咳払いする。
先遣隊長「……アレシア様。我々は調査目的で参りました」
アレシア「うんうん」
先遣隊長「貴女を“魔女”とする報告が上がっています」
アレシア「違うもん」
シーラ「違います」
即答。
全員がシーラを見る。
シーラは真顔だ。
シーラ「この方は魔女ではありません」
アレシア「ほら!」
シーラ「ただし」
アレシア「え」
シーラ「倫理観が研究優先なだけです」
アレシア「悪口!?」
シーラ「武装対話ゴーレムを平然と出すのも昔からです」
アレシア「だって安全だもん!」
シーラ「森を触媒化しているのも事実ですね?」
アレシア「効率化!」
先遣隊長「……」
シーラは深く息を吸う。
シーラ「隊長。この森での戦闘は非推奨です」
先遣隊長「理由は」
シーラ「勝てません」
静寂。
シーラ「そして、本人は本気で悪意がありません」
アレシア「うん!」
シーラ「それが一番厄介ですが」
アレシア「なんで!?」
ルカ「的確」
アレシア「ルカちゃんまで!」
シーラはわずかに口元を緩める。
シーラ「……お久しぶりです、アレシア様」
アレシア「うん。シーラ」
一瞬、学生時代の空気が戻る。
アレシア「ねえ」
シーラ「はい」
アレシア「魔法少女マント、まだ持ってる?」
シーラ「隊長、撤退の判断を」
先遣隊長「いや、調査続行だ」
先遣隊員、必死に笑いを堪える。
森の緊張は、奇妙な形で緩み始めていた。




