ゴーレム
森の入り口。
霧が低く垂れ、木々の間に静寂が張り付いている。
先遣隊長「ここが対象の森か……」
魔導兵「魔力濃度、異常値です。外周だけで都市部の三倍」
先遣隊長「警戒を維持。深入りはしない」
その瞬間。
――ズン。
地面が揺れ、森の奥から重い足音。
枝を押し分け、姿を現したのは人型のゴーレムだった。
白銀の装甲。肩部に展開式魔導砲。腕部には刃状触媒。
魔導兵「出たぞ!」
先遣隊長「戦闘体制!」
一斉に武器が向けられる。
ゴーレムの目が淡く発光し、滑らかな声が響いた。
ゴーレム「警告。ここより先は私有地。不要な侵入は推奨されません」
先遣隊長「自律思考型……!」
魔導兵「武装付き対話個体です!」
ゴーレム「対話を希望します。応答してください」
先遣隊長「信用できるか!」
緊張が張り詰める中。
シーラ「……待って」
先遣隊長「シーラ?」
シーラは一歩前に出て、ゴーレムを凝視する。
シーラ「その制御紋……左肩の刻印……」
ゴーレムがわずかに首を傾ける。
ゴーレム「認識照合中」
シーラ「やっぱり……」
先遣隊長「何か分かるのか」
シーラ「これ、アレシア様のゴーレムです」
一瞬、空気が止まる。
魔導兵「は?」
先遣隊長「確証は?」
シーラ「あります。王立錬金学院の実習棟で使われてた」
魔導兵「実習用にしては武装が重すぎませんか」
シーラ「当時から“過剰設計”で有名でした」
ゴーレム「補足。武装は対話拒否時のみ使用します」
先遣隊長「……」
シーラ「この子、確か名前も――」
ゴーレム「識別名:第七式対話用ゴーレム《ピースメーカー》」
魔導兵「ピースメーカー……?」
先遣隊長「どこがだ」
ゴーレム「対話が成立しない場合、物理的に静かにしてもらいます」
魔導兵「全然平和的じゃない!」
シーラは小さく息を吐いた。
シーラ「……アレシア様、生きてます」
先遣隊長「断言できるのか」
シーラ「ええ。このゴーレムが稼働してる限り」
ゴーレム「確認。アレシア様は現在、無傷・平常運転・若干不機嫌です」
魔導兵「情緒まで報告するのか」
先遣隊長「……」
剣を下ろす。
先遣隊長「我々は調査目的で来た。戦闘の意思はない」
ゴーレム「了解。では正式な対話手順に移行します」
背部装甲が展開し、さらに大きな魔導砲がせり上がる。
魔導兵「それが“対話”!?」
ゴーレム「安心してください。まだ撃ちません」
シーラ「……相変わらずですね」
ゴーレム「久しぶりですね、シーラ様。成績は向上しましたか」
シーラ「余計なお世話」
森の奥から、かすかな声。
アレシア「ルカちゃん! 対話ゴーレム出したのに、なんでまだ揉めてるのー!?」
ルカ「武装外してから言って!」




