王都
王都・政務院。
書記官「辺境領より陳情書です」
宰相「読め」
書記官「“アレシア様が相続された森に魔女が住み着き、手に負えない状況です。王都より軍の派遣を願います”」
室内がわずかにざわめく。
騎士団長「アレシア様、というのは……」
宰相「先代公爵の孫だ。正式な相続者」
魔導院長「……あの森か」
書記官「続きがあります。“現地にはアレシア様と、有能な影であるルカ嬢も居られるはず”」
騎士団長「“影”? 護衛か?」
宰相「諜報寄りの人材と聞く」
魔導院長「森が触媒化しているという報告も来ている。通常の魔法は干渉を受ける可能性が高い」
騎士団長「先日の精鋭部隊の件か」
書記官「はい。“対象、想定以上。討伐困難”との評価です」
沈黙。
宰相「整理しよう。森はアレシア様の私有地。そこに“魔女”が出た」
騎士団長「そして精鋭が退いた」
魔導院長「問題は二つ。魔女の正体。そして、アレシア様の安否」
宰相「……先遣隊に調査させよう」
騎士団長「武装は?」
魔導院長「最小限。魔力観測中心」
宰相「刺激するな。森に敵対意図を示せば、また反射する」
書記官「では、任命を」
騎士団長「冷静で独断しない者を出す」
魔導院長「理論を理解できる者も必要だ」
宰相「加えて」
全員が視線を向ける。
宰相「もし魔女が“アレシア様本人”であった場合の対処案も用意しておけ」
室内の空気が固まる。
騎士団長「……可能性は?」
魔導院長「否定できません」
書記官が筆を止める。
宰相「誤認であれば訂正する。敵であれば抑える。味方であれば保護する」
騎士団長「先遣隊、三日以内に出立させます」
魔導院長「観測器を持たせよう」
宰相「目標は討伐ではない」
全員「調査」
王都は静かに動き出す。
その頃――
森の中心。
アレシア「……王都に手紙出そうかな」
ルカ「今さら?」
アレシア「“私は魔女ではありません”って」
ルカ「逆効果な気がする」
アレシア「なんで!?」
ルカ「自分から言うと怪しい」
アレシア「理不尽!」
森の外で、また新しい足音が近づいていることを、まだ二人は知らない。




