弁明
ー撤退命令ー
アレシア「よし……やっと弁明のチャンスが来た」
ルカ「今さら?」
アレシア「ちゃんと説明する! 私は錬金術師であって魔女じゃありませんって!」
ルカ「武装相手に?」
アレシア「理論で殴る!」
ルカ「怖い表現やめて」
森の外縁。
結界杭の光がまだ地面に残っている。
アレシアは一歩、森を出た。
空気が変わる。
焦げた土。
魔力の残滓。
踏み荒らされた草。
アレシア「……あれ?」
ルカ「静かだね」
アレシア「え、どこ?」
ルカは周囲を見渡す。
ルカ「撤退してる」
アレシア「は?」
ルカ「完全に。陣形も解いてる」
アレシア「うそぉ……」
地面には焦げ跡。
遠距離魔法の反射痕。
そして、慌ただしく去った足跡。
アレシア「ちょっと待ってよ! まだ何も説明してない!」
ルカ「たぶん説明いらないって判断された」
アレシア「なんで!?」
ルカ「森の中から、巨大な魔力柱立ち上がったから」
アレシア「制御確認しただけだもん!」
ルカ「外から見たら最終形態」
アレシア「違うもん!」
ルカは地面から紙片を拾う。
ルカ「撤退命令書」
アレシア「なんて?」
ルカ「“対象、想定以上。現段階での討伐不可能。上位審議へ移行”」
アレシア「……」
ルカ「格上認定」
アレシア「やだぁぁぁ!」
ルカ「おめでとう、伝説入り」
アレシア「私ただの錬金術師なのに!」
ルカ「森一帯を反射触媒にしてる人は“ただ”じゃない」
アレシア「理論的には安全設計だよ!」
ルカ「結果が怖い」
アレシアはその場にしゃがみ込む。
アレシア「弁明する気満々だったのに……」
ルカ「次はもっと大きいの来るね」
アレシア「もう来ないでほしい……」
ルカ「森から出る?」
アレシア「……」
ルカを見る。
アレシア「やだ。ここ私の研究室だもん」
ルカ「だろうね」
アレシアは立ち上がる。
アレシア「じゃあ対話用プロトコル作る」
ルカ「武装じゃなくて?」
アレシア「……ちょっとだけ武装もする」
ルカ「はい魔女」
アレシア「違うもん!!」
森の奥で、淡い光がまた瞬いた。
噂は消えない。
むしろ強化された。
そしてアレシアは今日も本気で思っている。
――どうして私は魔女扱いなんだろう、と。




