包囲
ーこれ死んだなー
ルカ「……精鋭部隊の方が森を包囲してるみたいね」
アレシア「え」
ルカ「外周に結界杭。配置が正規軍の陣形」
アレシア「うそ」
ルカ「森の外から魔法を放つ気だね。面制圧型」
アレシア「ちょ、待って待って。それズルくない?」
ルカ「合理的」
アレシア「森ごと焼くってこと!?」
ルカ「可能性高い」
アレシア「やだぁ……私の乾燥ハーブが……」
ルカ「心配そこ?」
アレシア「だって半年分!」
地面が低く震える。
空気が重くなる。遠距離詠唱の共鳴。
ルカ「第一詠唱、入った」
アレシア「……」
ルカ「どうする?」
アレシアは窓の外を見た。
森は何も知らない顔で静かだ。
アレシア「これ死んだな」
ルカ「誰が」
アレシア「……あの人たちが」
ルカ「は?」
アレシア「森の外から魔法? そんな大出力、干渉域も計算してないでしょ」
ルカ「まさか」
アレシア「この森、触媒だよ」
ルカ「……説明」
アレシア「地下に魔力脈走ってるの。私がちょっと整流してるけど」
ルカ「ちょっと?」
アレシア「ほぼ全部」
ルカ「聞いてない」
アレシア「外から強い魔法撃ったらね」
空が一瞬、白く明滅する。
アレシア「反射するよ?」
ルカ「どこに」
アレシア「一番魔力濃いところ」
ルカ「つまり」
森の外で、轟音。
アレシア「……詠唱してる人たち」
ルカ「最悪だ」
アレシア「だから魔女じゃないって言ってるのに」
ルカ「今の発言、完全にラスボス」
アレシア「違うもん! 物理法則だもん!」
再び地鳴り。
ルカ「第二波来る」
アレシア「学習してない!?」
ルカ「止められる?」
アレシアは一瞬だけ真顔になる。
アレシア「……できる」
ルカ「どうやって」
アレシア「森ごと私が制御する」
ルカ「負荷は」
アレシア「たぶん三割くらい溶ける」
ルカ「どこが」
アレシア「私」
ルカ「却下」
アレシア「えー!」
ルカ「他案」
アレシア「……外に出て、理論説明する」
ルカ「今?」
アレシア「だってあの人たち死んじゃうよ?」
ルカは静かに息を吐く。
ルカ「行くなら、私も行く」
アレシア「ルカちゃんは後ろ!」
ルカ「ツッコミ役がいないと暴走するでしょ」
アレシア「……それはそう」
森の中心から、淡い光が立ち上る。
子供っぽい錬金術師は、震える手でフラスコを握り直した。
アレシア「魔女じゃないって、ちゃんと訂正してもらうからね」
ルカ「そこ?」




