憂き眠り姫
私は、夢の中で抱かれていた。
私を愛してくれる、その手を放さずにいてくれる存在に。
人間不信の私が、唯一信じられる存在が私を抱きしめていた。
それは、優しい夢だった。
目が覚めるたび、私は憂鬱になる。
私は人が嫌いだった。
囁く言葉のそのどれもが、信じるに値する証拠を持たないことを知っていた。
「愛している」
その言葉をかけられたとき、私はその者の背を気にする。
そこにどんな裏の意図があるのか、勘ぐってしまう。
私の持つ知識は、そういう人間に私を育てたのだ。
今更治ることはない。
不治の病なのだから。
私はいつも恐れていた。
思うに、信じるというのは命がけの行動である。
全てのリスクを一切無視し、その者の胸に飛び込むことである。
だが、私にはそうはできない。
その胸には、鋼鉄の処女の内側のように、鋭い刃が群生していて、
飛び込んだ私は血みどろになる。
そんな想像をしてしまうのだ。
選んだのは、だれにも胸を開かないこと。
そして、誰にも胸を開かれないこと。
それが、一番楽だった。
私は完璧主義者で、私が愛したい人間がこの世に存在しないことを知っている人間だ。
完璧とは、人間には程遠い言葉。
それを求める私は、運命に囚われた永久の奴隷。
追い続け、そして、いつまでもたどり着かない。
結局、私はぬいぐるみを抱いてベッドに倒れる。
また、同じ夢を見て、同じように目を覚ます。
私は、逃げるように目をつぶった。




