観察
安全を確認した後、ハルは避難していたアーサーを連れて戻ってくる。
「すごい匂いですね…」
そう言うアーサーだが躊躇なく仕留めた猪の観察を始める。
それを見た私やハルも観察に加わった。
「腐っておるのじゃ…」
リリスは少し離れた場所で見守っている。
「何かわかる?アーサーちゃん」
「そうですね…」
少し考えた後、使い捨ての手袋をして骨が見えているところに手を入れた。
「え!?あの…汚いよ…?」
私もできないことをそんな無表情で…。
「いえ、いくつかわかりました」
手袋を外しペッと捨てる。
「少なくともこの猪は生きていません。死後何日かもわかりませんが死んだまま襲ってきたようです。体の中が冷たい状態でした」
「あー…まぁ実際腐っているしね」
っていうか体温を調べていたのか。私にはその勇気ないよ…。
「そしてやはりあの機械に生かされて…いえ、動かされていたのが正しいかと」
「なるほど、やっぱり」
じゃああの機械だけ切り取るのが正しかったのかな?いや無理か。
「ありがとうアーサーちゃん、確信が持てたよ」
「いえ、お役に立てたのならば」
「機械の破片だけでも少し拾っておこう。町で話が聞けるかもしれないし」
「わかりました」
そうして3人で爆発した破片を集め始めた。
あぁ、それと事情聴取もしなきゃ。
「リリスー!」
「なんじゃ?臭くてかなわん!早く行きたいんじゃが…」
鼻をつまみながら呼びかけに答える。
「これに出会ったときのこと聞きたいんだけど」
「ふむ、そう言うことなどほとんどないぞ。兎を狩ろうと奥に行ったら何か腐った匂いがしてな、確かめに行ったらこれがいて急に襲ってきたわけじゃ」
だいぶ簡素だね。
「ほかに気になることはなかった?」
「うーむ…わからぬ。やり過ごそうと思っていたら前触れもなくこちらに向かってきたということくらいか?」
なんかセンサーに引っかかったとかかな?まぁわからないならいいか。
逃げ出すつもりがないとわかっただけで…いやだいぶピンチに陥ったから許しがたいね、要観察で。
「なんじゃ?余の悪口を思っておらんか?」
「…別に?」
嗅覚が鋭い。
そうして機械を集め終わった後、腐った猪をファイアボールで焼き尽くした。
その後広場まで戻り、日が暮れ始めていたので一泊する。
翌日からもどんどん進んでいき、また一泊。
その間警戒は怠らなかったが結局何も起こらなかった。
そしてついに町の入口が見えてくる。
「町だ、やっと休めるね」
「その前に入れるかどうかですが…」
あぁ、そうか、魔族の忌避感は多分あるだろうね、どうしようか。
「なんじゃ、隠蔽の魔法を使えばよかろう」
「いん…え?なに?」
「隠蔽の魔法じゃ、ぬしと戦ったとき余がやっていたであろう」
「え、いつ?」
影の入れ替わりと高速移動と体術しかやっていなかったような…。
「ほれ、玉座の後ろに隠れていた時じゃよ」
「あ、あれか!確かに見えなかったかも!それを私たちにかける…いやそれすると密入国ならぬ密入町だよ!絶対ダメ!」
「違う!あれの応用じゃ!角だけ隠せと言っておるのじゃ」
「え!?そんなことができるのですか!?私達にも!?」
間に入ったのはアーサーだ。
「で、できるが…なんじゃ小娘?」
「では持っているものを消すことは?」
「触れている限りは…相手に触られたり攻撃を当てられれば解除されるがの」
「魔王様…これはとんでもないですよ!」
アーサーのスイッチが入ったようだ。
「戦いだけでなく潜入、だまし討ちと汎用性が高いので手の内が格段に増えます!」
あぁ、何かえぐいことに使われなければいいけど。
「ぜひ教えてください!」
「あの、アーサーちゃんは使えなくても大丈夫なんじゃ…?」
「何を言っているんですか!先日の猪の戦いでもこれが使えていればハル様の手を煩わせることもありませんでした!ぜひ!」
これはもう止まらないね、まぁ手の内が増えるのはいいことだししょうがないか。
「じゃあリリス、教えてもらえるかな?」
「まぁいいであろう、感謝するがよい」
そうして隠蔽の魔法、ハイドを取得した。
リリスの教え方が大雑把すぎたので大変だったが、私とハルは最長30分、アーサーは15分ほど使用可能になった。




