問題児リリス
魔境の端に転移した後、私たち4人は不死鳥がいると言われている天衝山を目指し、西へ西へと進んでいく。
「まだ着かぬのか?余は疲れたぞ!休息が必要じゃ!」
「いやまだ半日でしょ?西の町まであと2日はかかるしそこに転移陣が使えなければさらにあと1,2週間は必要だよ」
「なんじゃと!?まだまだではないか!どこかで休まなければやってられぬ!」
「はぁ、もう静かにしてよ…」
ごねているリリスをなだめアーサーとともに位置を確認する。
「魔王様!」
飛んで周りの地形などを偵察しに行っていたハルが戻ってきたようだ。
「ハルさん、どうだった?」
「この先に小さめの広場がありました。先を見たところ道が続いていて森を抜けることができます」
「広場か…」
「あの、魔王様」
アーサーが袖を引く。
「そろそろ休憩でもいいのでは?思ったより順調ですので余裕があります。私も少し疲れましたので」
チラチラとリリスを見ている。多分気を使っているんだろうな。
「疲れたなら大変だ。その広場で休んでいこう」
「ぬし、小娘と余の扱いが全然違うではないか…」
そうして広場まで進んでしばらく休憩することとなった。
「やっぱり徒歩だと時間がかかるね」
「我々魔族は魔境から出ることはまずありませんからね」
そうか、今まで魔境で全て済んでいたから移動は転移で事足りたんだった。
「帰ったら新しい移動手段を考えてみよう」
そう言って少しばかりの水を飲む。
「そんなことより何か食べ物はないのか?水だけでは足りぬ」
またリリスが駄々をこね始めた。
「あなたがコンテナの中身全部だべちゃったのが原因でしょ?そんなこと言う子には水はあげません」
そう言ってリリスの分の水を取り、その手を上に上げる。
「ああ!やめるのじゃ!余が悪かったから!」
ピョンピョンと飛び始めるリリス。
涙目で謝っているのを見て返してあげる。
「全くひどい奴じゃ…。ん?これは…」
リリスが鼻をクンクンと鳴らしている。
「どうしたの?」
「近くに獣がおるな、狩ってきてもよいか?」
「え、わかるの?」
「間違いない、余はそれで生き残ってきたからの」
そんな野生児状態で魔王城から脱獄して生きていたのか…。
どうしようかな?さすがに一人で出かけさせるのは…。いや、違う。ここはひとつ。
「そうだね、じゃあ取れるなら取ってきてくれる?」
「うむ!任せるがよい!」
胸をドンと張り、森の中へと入っていく。
「魔王様、リリスを単独行動させてもいいのですか?」
ハルが尋ねる。
「大丈夫、リリスの魔力は覚えているし魔法の糸でつないでる。位置も把握してるしもし逃げてもハルさんが飛んで追跡すれば追いつくよ」
それにリリスを試したい気持ちもあった。
狩りの良し悪しは別としてちゃんと逃げずにここへ戻ってくるか。
3分程経ち、リリスは200メートルほど先のところでジッとしているようだ。
そろそろ糸の距離も限界なんだけど…狙いをつけているのかな?
そう思って待っていると急に動き出し、なぜかこちらに全速力で向かってくるのを感じる。
相当急いでいるようだ。
「え!?なに?」
リリスが来る方向に目を向けるが木々で何も見えない。
「どうしたのですか?」
ハルが前に出て構える。
「わからない、こっちに向かってくる」
そうしてリリスが来る方向を見ているとよくわからない叫び声と何かがなぎ倒されているような音が聞こえる。
「―――っ!」
遠目でリリスの姿が見えた。
何か叫んでいるようだ。
「リリス!どうしたのー!?」
「―っ!―っ!」
「え!?なんて!?」
よく聞こえない。どうしたんだろう?
「逃げるんじゃー!!やつが来るぞー!!」
同時にドゴーン!!という木々がなぎ倒される音とともにそれは姿を現した。
3メートルはあるかというほどの猪。
右目に機械のようなもの。腹の半分が溶けていて骨が見えている。
それが障害物をはねのけてこちらに向かってきていた。
なにあれ!?
「何やったのあなたーー!!」
「余ではなーーい!!」
思ってた裏切り方と違うよ!!




