魔王vs魔王
「魔王様、本当に大丈夫なのですか?奴の強さは本物ですよ?」
ハルが心配そうにしている。
「んー…。まぁ見ててよ、やばいと思ったら割り込んでもいいから」
「あの…魔王様、あの…私たちのせいで…」
アーサーもおろおろとしているようだ。
「アーサーちゃんまで…。大丈夫。いつかは戦わなきゃいけなかったんだよ。それだったら片腕が使えない今が一番ベストなんだよ」
「でも…」
私の言葉を聞いても二人はまだ不安そうだ。
そんなに信用ならないかな…。
「どうしたのじゃ!?やらないのか!?」
私が二人とやり取りをしているとじれったそうにリリスが騒ぎ出す。
「逃げないから大丈夫だよ」
そう言って向かい合う。
「うーん、とはいえコンテナがいっぱいだし場所が悪いね。戦う場所だけ転移で移動してもいいかな?」
「なに?…まぁ構わぬが」
「よかった、じゃあみんな、転移陣に」
転移陣を作り魔力を籠める。
「転移!」
転移陣が光り出し、景色が変わっていく。
「ここは…どこかの谷か?」
リリスがキョロキョロとあたりを見渡す。
左右は壁、その近くに岩がゴロゴロとある程度で戦うには申し分ない場所だ。
「不服?」
「…問題ない。場所など関係ないからの」
「よし、じゃあアーサーちゃんとハルさんは左側のここに。リリスは中央の場所。私は少し離れたここから」
「あの、魔王様?」
「なんじゃ!?細かく指示をしおって!」
みんなが困惑している。
「前の続きがしたいんでしょ?スタート位置は大事だよ」
「なんでもいい!さっさと始めよ!」
じれったそうに言う。
「わかったよ。もう始めるから」
定位置につき、足で地面をトンと叩く。
「じゃあ…始め!」
「…っ!」
合図とともにリリスがこちらに走りながら向かってくる。
私は防御も何もアクションを起こさずただ待つ。
そうして半分の距離を詰めたころ、
「ぬお!?」
急にリリスの姿が消えた。
「「ええ!?」」
アーサーとハルも驚いている。
「ぬし!なんじゃこれは!」
地面の方から声が聞こえる。
そう、ガラガラと音を立てながらリリスは落とし穴に落ちていったのである。
「ただの落とし穴だよ、でもこの程度の深さならすぐに抜け出せるでしょ」
三歩ほど下がる。
「ぐ…当たり前じゃ!待っているがよい!」
そうして這い上がって地面に足をついた時、次のトラップが発動する。
「ぬあ!これはっ!」
足にロープが括りつけられ、逆さまで宙吊りになっている。
「ファイアボール」
「あぶ…!ぐぬおぉ!!」
すかさず攻撃するがリリスは体をひねって回避する。
「あー…やっぱりこれじゃ当たらないか」
「危ないではないか!それに卑怯じゃぞ!真面目にやらんか!」
「何を言っているの?これは実戦だよ。大真面目にやってるに決まってるじゃない」
そう言いながら私はリリスの周りをぐるりと回る。
「こんなもの!」
足に括られたロープを切る。
地面へと着地した瞬間パシンという音が鳴った。
「うあ!また!!」
真下に同じ罠を仕掛けていて再度宙吊りになるリリス。
「面白いくらい引っかかるね」
「ふ…ふざけるでない!何が前の続きじゃ!ぬしが用意したトラップだらけではないか!」
リリスはゼェハァと言いながら怒っている。
「はぁ…しょうがないな。わかったよ、今から前もって準備していた罠は使わない。だから私早く向かってきなよ」
私は風の刃を飛ばしてロープを切ってあげた。
そして地面へとまた着地する。
そしてそっと足を一歩出すが今回は何も起こらない。
「ふぅ…それでいいのじゃ…。では行くぞ!」
リリスはまた走ってくる。
「ぬぶおお!!」
魔法の糸に躓き、魔法で作成した沼に落ちる。
先ほどぐるりと回った時に設置したものだ。
「あーあ…私の言うことなんか信用しちゃって…」
「ぬし!罠は使わないと…!」
「前もって準備した罠はね。これは今作ったものだから」
「ふざけ…く…この!…抜け出せん!」
「じゃあこれで終わりかな」
左手を前にして魔力を籠める。
「サンダーランス!」
「あ…やめ…」
雷の槍を沼へと突き刺した。
「ぐおああぁぁぁぁ!!」
バチバチと沼全体が電気を帯び、しばらく続けるとリリスは気絶した。
「魔王様、すごい…」
そうして私はリリスに指一本触れることなく完封した。




