エルクルの怒り
あらすじ
コンテナを開けたらパンを片手に食料を貪っているリリスがいた。
以上。
「あー、そうだね。とりあえず…シールド」
私はコンテナの入り口をふさぐような形でシールドを張った。
「なにぃ!?余を閉じ込めてどうするつもりじゃ!まさか飼い殺しに…」
「いや話聞きたいだけだよ。それにこの程度のシールド、頑張れば破れるでしょ?」
っていうか飼い殺しって…あなた多分戦うしかできないでしょ。
「む…確かに。簡単に破れそうじゃな。紙同然じゃ」
ジッとシールドを観察しながら言う。
その言い方はちょっとイラっとするね。
「して、何が聞きたい?この地にあった供物ならここあるもの以外全て食べたぞ」
パンをもぐもぐと食べながら聞く。
「魔王様、殺しましょう。10秒もかけず切り刻んで見せます」
「やめてハルさん。一応重要人物ではあるから…」
前に出ようとするハルを止める。
王都に行った時も思ったけど意外と戦闘狂だよね…。
「えーっと…リリスさ…リリス」
『さん』はいらないか。
「なんじゃ?」
「どうしてこんなところにいるの?」
「ふむ…」
リリスは考え込む。
「余はあの憎き勇者に復讐を果たすため、しばらく外の世界で力を蓄えようと思ったのじゃ。そしてその道中、この場所を見つけたわけじゃ」
だいぶ簡潔だね…。
「でもここ魔王城の保管庫なんだけど…。看板があったでしょ?勝手に食べたらダメじゃない」
「看板?知らぬ、何かあったような気はするがいちいち見ておらぬ」
そういえば魔王の魔の字も書けなかったね。
どちらにせよ都合の悪い者は見るつもりはないようだ。
「しかしここは食べきってしまったからの。そろそろ次なる地を探しに行くのじゃ」
「え、大丈夫?それ行き倒れそうだけど」
「問題ない、これまでどうにかしてきたからの。狩りでもすれば生きていけるわ」
野生児が過ぎるよ…。
「はぁ…もう食料がないならしょうがないね、私たちは行くよ」
シールドを消す。
「魔王様!?いいのですか!?奴は魔王城を占拠して…魔王様の右腕を!」
「ハル様の言う通りですよ!彼女は大罪人です!このまま放置していくわけには…!」
そう言って二人は抗議をするが私は首を振る。
「大丈夫だよハルさん、アーサーちゃん」
コンテナの中に入ってリリスと相対する。
「ねぇリリス」
「む、なんじゃ?」
「あなたは勇者を倒すまでに私たちを襲ったりする?」
「勇者を倒すまでするつもりはない。その後あのような既存の魔王城ではなく新しい魔王城を立てて見せるつもりじゃ!」
「そのために人や魔族を傷つけるみたいなことは?」
「ない!正々堂々戦い、勝って見せよう!」
うん、思った通りまっすぐだね。
「こういうこと。私はできればあまり戦いたくないんだよ」
振り返りながら言う。
あの勇者にリリスが勝つなんてほぼ不可能に近い。
嘘はつかないタイプだろうし、少なくとも不死鳥の件が終わるまでは攻めてくることはどう考えてもないだろう。
「しかし…」
「ごめんハルさん、わかって」
「…」
これは今考えなければならない問題ではない。
この件は後で考えるとして一旦この場は収めたい。
「…わかりました」
「ハルさん…ありがとう」
「…私は納得してません。だから…帰ったらまた話し合いますからね。」
「もちろんだよ、アーサーちゃん」
よかった、わかってくれた。
「終わったか?余もそろそろ出たいのじゃが」
「あぁ、ごめん。リリス、勇者は北へ向かったみたいだからそっちを探して見たらいいと思うよ」
「おお!有益な情報感謝するぞ!では北へ向かおうぞ!」
よし、これでリリスの居場所も探知しやすくなるね。
一旦魔王城へ帰って尾行要員は連れてくる予定ではあるけど。
あぁ、あとこの惨状の報告をしなきゃね。
「じゃあリリス、私たちは行くね」
転移陣を起動させる。
「うむ、魔王の座に関してはまた勇者を倒してからすぐに取り返しに向かうつもりじゃ。そこの二人のようなポンコツな眷属はいらぬが、魔王は余一人で充分であるからな」
その言葉を聞いて私は転移陣の起動を止めた。
「ごめんリリス、なんだって?」
「聞こえておらんかったのか?ポンコツはいらぬがぬしを倒して魔王の座は取り返すと言っている。余はまだぬしに負けておらぬからな」
はぁ…その一言がなければただ行きたい方向にまっすぐなだけって形で終わったのに。
私の仲間をそんな風に思っていたのか。
それにどうも私は弱いと思われているらしい。
確かに私は実質的にはリリスに勝ってなかったね、弱いと思われても仕方ない。
「今やろう」
「…なんじゃと?」
「体力や魔力は充分なんだよね。あの時の続きだ、今から戦おう」
「何を言っておる。今は時ではない。さっさと去るがよい。余は勇者と…」
「怖気づいたの?それともあの高速移動が使えなくなったから私一人程度倒せないと?」
そう言って挑発する。
「あの、魔王様…?」
アーサーとハルが不安そうに見ているが「大丈夫」と笑顔で応える。
「負けるのが怖いならそっちが去りなよ、リリスちゃん」
「…!余が負けるわけないであろう!片腕風情が何を言っておる!今からでよいのじゃな!やってやる、後悔するでないぞ!」
二人をポンコツ呼ばわりしたツケは払ってもらう。
コテンパンに叩きのめしてやろう。
「あなた程度、片腕で十分だよ」
そう言いながらにやりと笑った。




