捨て身
リリスが吹き飛んでいき、そのまま地面に激突。
それと同時にズメイが崩れ倒れていった。
「ズメイさん!」
私は咄嗟に駆け寄ろうとするが、
「がは…来るな!!」
叫び止められてその場でぴたりと止まる。
リリスの方を見ると、もぞりと動きながらゆっくりと起き上がろうとしていた。
「ぬしら、もう許さぬぞ…」
起き上がったその顔は口から血を流しながら怒りの表情をしている。
「あの攻撃で起き上がるの…?」
ふとだらりと下がった腕を見ると覇王の腕輪にひびが入っている。
即座に腕輪の方の手をクッションにしてガードしたのか。
でもあの様子だと右腕は使い物にならないはず…。
「よ、余を本気にさせたな…もうどうなっても知らぬぞ…」
ふらふらとよろけながら一歩、また一歩と歩いてくる。
ダメージが深刻なようだがまだ何かするつもりだ。
その時、入口の扉がバン!と開く。
「魔王!地下にいた四天王を救出した!加勢を…」
海王と四天王、ハーピィたちがそこにいた。
「動くな!そこで魔王が殺されるのを見ているがいい」
「何を…」
お構いなしに入って阻止しようとすると、
「覇王の腕輪よ!」
腕輪から光が発せられ、周囲に当たっていく。
「ぐあ…これは!」「魔王様…!」
ひびの入った覇王の腕輪はカチカチとなっていて長くは持たなそうだ。
そしてまたクラウチングスタートの姿勢を取る。
「まだやる気なの!?これ以上さっきの高速移動を使ったらあなたの体は…」
「嫌じゃ、余は魔王じゃ!ぬしには渡したくはない!」
駄々をこねる子供のように言う。
「くっ」
シールドを張り始める。
ありったけを籠めれば数回は持つはず。
その数回を守り切れば…!
「余は…負けぬ!」
ドン!という音と共にリリスの姿が消えた。
しかしシールドに衝撃は来ない。
「え…?」
後ろの方で何か音がしたようだ。
間髪入れず右。
そして左、上…。
これは…。
リリスが方向など決めずにめちゃくちゃに攻撃をしている。
「アーサーちゃん!シールドを張りながらズメイさんのところへ!」
シールドごとズリっと移動して倒れているズメイさんのもとへ行く。
道中、シールドからガキィン!と音がしてひびが入る。
ズメイの顔のすぐ横に何か衝撃が起こる。
部屋の各地でドドドドドド!と削れるような衝撃が入っていく。
何とかしてズメイをシールドの中に入れ、後ろ二人を守るように魔力を籠める。
「リリスさん!それ以上はダメ!自分でもわかっているでしょ!?」
覇王の腕輪の光とリリスが流している血が線上となって部屋の空間を満たしていく。
「ぬ、ヌしヲ…!殺すマで…!止まルつモりはナい!」
ガキィン!とシールドにひびがドンドン入っていく。
やばい、その前にこっちも持たない!
アーサーとズメイを横目に見る。
「魔王様…」「グ…この光さえなければ…!」
「げ、限界…」
パリィン!!と音がする。
シールドが破れた音だ。
それと同時に右腕になにか衝撃が走った。
見るとめちゃめちゃな方向へ腕が折れ曲がっているのが見える。
「ああ!!…っぐぅ!!」
痛みが遅れてやってくる。
目の前が真っ白で意識が飛びそうだ。
まずい、アーサーちゃんだけでも!
アーサーを覆いかぶさるように抱きしめた。
ごめん、みんな!
「しまいじゃ!」
衝撃を待つ。
「これは…すごいことになっているな」
誰かの声が聞こえる。
「もう大丈夫だ」
誰だ?
「ん?聞こえてるか?」
そう言えばリリスの移動の音が聞こえない。
ここが死んだ後の世界かな…?
「おい、起きろ魔王!」
肩をつかまれ顔をあげる。
「え?」
部屋中ボコボコの地面や壁、唖然としているみんな。
目や口から血を流しているリリスは足をつかまれて動けなくなっている。
声をしている方を向くとそこには見覚えのある顔があった。
「勇者!?」
「なっ!?勇者だと!?」
リリスも驚いて声をあげる。
そう、そこには前に私を殺しかけたことのある勇者がいた。
「なんて顔してるんだ」




