最後の王者の玉
「落ちてくる!」
索石も確認するが位置が変わらない。
あの集団のどれかが持っているに違いない。
落下の衝撃で割れないだろうか。
そもそもさっきの衝撃も大丈夫だったのかな。
そう思いながら凝視していると、
「あっ!」
私は落下地点へと駆けだした。
「なに!?どうした!」
ズメイも追いかける。
「ウィンドトルネード!」
風魔法を唱え、全員地面へ激突しないようにふんわりと受け止めた。
「ウォーターボール!」
水の玉を生成し、燃えている者を鎮火していく。
「ぐぅ…一体何が…?」「はっ!おち、落ちる!」「ほ、炎が…炎が消え…」
どうやら無事なようでそれぞれがそれぞれの反応をしている。
「みんな、大丈夫?」
私はこの集団を知っている。
「ま、魔王様!?おい!みんな起きろ!」
「な、なんだ?」「魔王様!?」「なぜここに!」
ぞろぞろと起きて羽の生えた集団が整列し始める。
そう、上空で燃えながら飛んでいた集団はハーピィの群れだった。
「む!ハルの部隊ではないか!なぜあんなところを飛んでいた!」
「ズメイさん!我々、ハルさんに言われて試しの洞窟に潜り込んでたんですよ!」
あー、王都に向かう時ハルさんの部隊が飛んで行ったの見えたけどそれだったのか…。
「ずっと潜ってたの?」
「もちろんです!」
いい笑顔だ。
「なに!?確かに服や体ががボロボロではないか!」
とどめ刺したのズメイさんな気がするけどね。
…っていうか格好がものすごいな。
トゲの付いた肩パットとナックルグローブ、やたらとがった靴。
どこで売ってるんだ…。
「この服、また作らなければ」
手作りだったよ。
「それより聞いてください!我々は目標とすべき方を見つけたかもしれません!地上からとんでもない気の塊を飛ばす者が現れたんです!これはとんでもないですよ!」
「あ、それズメイさんだよ」
「なんですと!?師匠と呼ばせてください!」
ズメイさんに跪いている。それでいいのか…?
「がっはっはっは!ハルに許可をもらえ!鍛え直してやる!」
「「「うおおぉぉぉ!!」」」
とても沸き立っている。
ハルさんの地位低くなってそうだけど大丈夫かな…。
っていうかこんな部隊相手にしてたんだ…。
「あ!それより試しの洞窟へ行って来たって言ってたよね、そこに何か玉のような物がなかった?私たち、それが必要で」
「玉?最奥にあったやつですかね、きれいだったんで魔王様に献上しますよ!」
そう言って懐から布に包まれているものを取り出す。
「藍色っていうんですかね、これがまた…ああ!!」
「これは…!」
「どうした!?」
私とズメイが包まれているそれをのぞき込む。
「こ、壊れている!」
見ると、王者の玉が割れていた。
「すまぬ、我のせいか…」
「いや、ズメイさんのせいじゃないよ。許可を出したのは私だ…」
「ぬぅ…」
珍しくズメイさんが落ち込んでいる。
「大丈夫、現物があるだけ上々だよ。ありがとうね」
壊れているけどすべての玉は集まったんだ。
直せるか海王さんに聞いてみよう。
「どういうことですか?この玉が何か?」
事情を知らないハーピィたちが聞いてくる。
「あぁ、実は魔王城がリリスって子に乗っ取られたんだよ」
「なにぃ!?魔王様を置いて!?」
沸き立つハーピィたち。
「で、対抗手段にこの玉があればってなってたんだけど…」
「そうと知っていれば我々は…!」
ものすごく悔しそう。
根はいい子達なんだよね。
「我々も戦います!野郎ども!ファイアーバード伝説の始まりだぁ!」
「「「うおおぉぉぉぉぉ!!」」」
沸き立ち方が尋常じゃない。
うん、そう、根はいい子達なんだよ…。
「待って待って!みんな疲れてボロボロなんでしょ!?とにかく今は回復に努めて!」
「しかし…!」
「大丈夫だから!私が絶対に取り戻して見せる!必要になったら絶対に声をかけるから、今は耐えて!」
「ぐぅ…わかりました、しかし回復したら絶対に向かいますので!それは譲れません!」
「うん、わかった。ありがとうね」
そうして王者の玉を渡してくれて飛び立っていった。
「魔王様…」
「ズメイさん、戻ろっか!」
「うむ…」
私はズメイさんに精一杯の笑顔を向けて海王さんのところへと再度転移をした。




