王者の玉の試練
王者の玉は残り2つ。
1つは魔王城から北へ10キロほど行ったところへ。
もう1つは海の中にあり、海王さんが場所を知っているという。
現在、海王さんと私の二人は海の中の玉を取りに向かっている。
「結構遠いの?」
「いや、半日ほどだ。私一人でも問題なかったのだが…」
「いやそれは…ね」
二手に分かれる案も出たが、事態をややこしくする前科がありすぎる海王さんといろいろと雑すぎるズメイさんとロンギさんではメンバーが不安すぎるので分けられなかった。
速やかに海の中の玉を取った後、魔王城近くの玉は全員で向かうことになっている。
「それにしてもなんでその場所に直接転移できないの?」
「実力を図るためだ。この程度こなせないようであれば魔王には絶対に勝てぬからな」
「ふーん」
魔王を倒すために必要な試練らしい。
本来私を倒すために作られた試練を私が突破するってなんか変な感じするね。
それに全無視で私を倒しに来た勇者ってやっぱり規格外なんだろうな。
そうして歩いていると海王がふと立ち止まり、指をさした。
「見えたぞ、あそこだ。少し盛り上がっている場所だ」
「あれかな?」
指の先を見ると小さな山のようで確かに少し盛り上がっている場所が見えた。
「ん?」
ふとその道中を見ると泡や煙のようなものが立ち上っているのが見える。
何だろう、何か嫌な予感が…。
「あの、海王さん。なんというか…謎の煙が見えるんだけど。それに海の底にしてはちょっと暑くなってきたような…?」
しかし海王は特に表情を変えずに振り向く。
「それはそうだろう、今向かっている場所は海底火山だ」
…は?
「海底…火山?えっ?水温とか大丈夫なの!?それに有毒ガスとか…」
いくら魔法で保護しているとはいえ限界がありそうなんだけど。
「…。問題ない。私は何度もこの場所を通っている」
最初の間は何なの!?陸上の魔族だと即死みたいなことないよね!?
私は海王の後ろにぴったりつき、海王が歩いた場所しか踏まないようにしてついていくことにした。
そうして10分ほど進んでいくと明らかに仕掛けがあるような台座が置いてある場所についた。
「ここで魔力を流し、合言葉を言えば自動的に開くようになっている」
そんな『開けゴマ』みたいな感じで行けるのか。
海王はその台座に手をかざし、魔力を流していく。
台座が光りだし、その光が線となって火山の中腹まで続いていくのが見えた。
「コンル・アトヴァライ・ミング」
そう唱えると、周囲の岩がゴゴゴゴ!!と動き出し、中腹の方まで一本の道が生まれた。
道をたどっていくと火山の中に入っていけるようだ。
「すごい!」
何これかっこいい!秘密基地みたいだ。
「行くぞ、もうすぐだ」
二人でその道をどんどんと登っていく。
道の先には小さな鉄扉、その左右にサメの石像があった。
「本来であれば開けようとすると左右の石像が動き出し、試練の魔物が現れる。しかし扉の鍵を使えば我々は問題なく…ん?」
扉についている鍵を刺そうとしているが、何かもたついている。
「どうしたの?」
近寄ろうとすると急に『ビー!ビー!』と警告音のようなものが鳴る。
「え…?」
『---エラー、侵入者排除システム起動---』
海王が鍵を凝視して、次第にやってしまった顔をしだす。
「これは…。ああ!しまった!間違って自宅の鍵を持ってきてしまった!!」
「えぇ!?じゃあこれって…」
『試練を開始します』
左右のサメの石像がこちらを向いて生きているかのように動き出す。
「試練受けるしかないってこと!?」
「そ、そうみたいだ!」
「嘘でしょおぉ!?」
毎回何かやらかさないと気が済まないのだろうか。
私はそう考えながら魔力を籠めて攻撃に転じようとした。
「ファイア…!」
「いかん!魔王!」
「ぃ…!?」
サメに向かってファイアボールを放とうとしたが、海王はこちらを思いっきり押してキャンセルさせた。
2匹のサメがさっきまで私がいた場所を噛みつきながら通過していく。
「海の中ということを忘れるな!ファイアボールは作り出せん!それに火は火山を刺激することになる」
「いってて…。なるほど」
火や熱を発するものはダメと言うことか、だったら!
こちらに狙いを定めて泳いでいるサメに向かって手を向ける。
「アイスエリア!」
手の先から冷気を発し、サメに向かってどんどんと海を凍らせていく。
異変を感じたサメはとっさに逃げようとするが間に合わない。
「く…この!」
ゴポゴポと暴れて氷から逃れようとする。
「魔力をもっと…」
魔力をどんどん流し、凍らせるスピードを速くしていく。
そして2匹を完全に凍らせたころ、
『第1の試練達成 次へお進みください』
アナウンスとともに鉄の扉が開いた。
「何とかなってよかった」
結構魔力使っちゃったな。
「さて…」
海王の方へ顔を向ける。
「海王さん。申し開きは?」
「…。ではこれより、魔王リリスを倒せるかの試練を始める」
「それは無理があるよ…」
海王さんの株がまた一つ下がった。




