敗北
「えーっと、あなた…リリスさん?が私たちの魔王城を乗っ取った魔族?」
「『私たち』?何を言っておる、余の魔王城であるぞ!ぬしは人のものを勝手に自分のものにする無礼者か?」
うわ、話全然通じなさそう。
どう切り込んでいこうか…そう考えていると。
「うん?その角、その翼!わかったぞ!ぬしら、勇者ではなく魔族だな!であれば余の配下にしてやる。こちらへ来い!」
気づいてなかったのか、というかめちゃくちゃ言ってるよ…。
諦めて力技で…いや、会話はできるんだからちゃんと話し合おう。
「えーっとね、ここはもともと私たちの城だったの。それをあなたが乗っ取ったんじゃないの?それにここにいた私の仲間たちも見当たらないんだけどどこにいるの?」
一つずつ丁寧に言っていくが、難しい顔をしている。
「ええい!ややこしい話は分からぬ!余の配下にならぬのか!?ならぬのなら戦え!」
ぬーん、どうしよう…。
そう思っていると、
「魔王様、これ以上はもう…」
そう言ってハルが前に出た。
右手には風の剣を形成していて怒っているようだ。
「ここにいた者たちはどうした!?答えるつもりがないなら斬る!」
リリスはと言うと、構えながら言うハルを見ながら少し考えた後、
「答えてやってもよいがその剣、かっこいいな!そのままの姿で余の配下に…」
答えきる前にハルが斬りかかった。
「ちょ…!」
慌てて止めようとするがもう間に合わない。
「その技、見せてみろ」
リリスは余裕の笑みで避けようともしない。
それが癇に障ったハルは思いっきり剣を横に薙いだ。
ズバン!とリリスの胴が真っ二つになる。
「え!?勝った!?」
私は思わず口走ったが、ハルもあっけなさすぎて目を見開いて驚いている。
が、その驚きは目の前の光景で別の驚きに上書きされた。
2つに分かれたリリスの姿が小さく大量のコウモリへと変わっていっているのである。
「な!?」
そして唖然としているハルの後ろへコウモリ達が移動していき、元のリリスの姿へと形成していった。
「その技は見事であるが、余を二つに分けるとは。おいたが過ぎるな」
後ろからハルの頭をつかむ。
「ぐ…!はな…!」
全てを言う前に地面へとたたきつけた。
「ふぐ!」
ゴン!という音が鳴り、ハルは動かなくなる。
「あ…ハル…さん?」
返事はない。
急すぎる展開に思考がついていかない。
ハルさんがとびかかって斬ったと思ったらコウモリになって、あの子の能力?そしたらすぐ後ろにいて頭を…いやそれより
私、何もできなかった…。
「どうした?ぬしはかかって来ぬのか?」
あ…ハルさんを助けなきゃ!
しかし今の光景を見た私はショックで一歩も動けなかった。
「あぁそうじゃ、ここにおった者共か!であれば我が配下となったぞ」
…は?
「え…どういう…?」
「中にコウモリがおったじゃろ、ここにおった者はほぼ全てあれになったと言っている」
こう…もり…?
『…もしかして眷属かな?』
『もしそうであれば私たちはすでに襲われているはずです』
魔王城に入った時に交わした会話が思い返される。
私は…。
リリスはこちらに近づいてきた。
それに対して一歩後ずさってバランスを崩し、尻もちをついた。
「ふむ、戦う気はないということか。では余の眷属に…」
そうして手を伸ばした瞬間、
「ファイアボール!」
「種子砲、発射!」
炎と植物の種が横切っていく。
「なんじゃ!?」
コウモリとなって避けて私から離れていく。
「ぬおおぉぉぉ!!」
ドゴォン!という音がして誰かが追撃をかけたようだが、それも同様に避けていく。
「ぬしら、どうやって抜け出しおった?」
その姿はリッチー、ミドリ、ズメイ。
私が信頼している四天王達だった。
「魔王様、ご無事で?」
リッチーが心配そうに駆け寄ってきた。
「みんな、どうして…?」
「アーサーが皆を助けに来てくださいました」
「アーサーちゃん…」
「ミドリ!頼むぞ!」
ズメイがハルを抱えて放り投げた。
「投げるんじゃない!」
ミドリが走って受け取る。
「あぁハル、これはひどいな…」
顔が血だらけなのを確認してすぐに回復魔法をかける。
「魔王様、立てますか?」
リッチーに肩を貸してもらいながらなんとか立ち上がる。
「私は…」
足が震えているけど戦わなきゃ。
「魔王様?…アーサー!魔王様を連れて離脱を!」
リッチーはこちらを一瞥して指示を出す。
「はい!」
アーサーが入口から飛び出してきてこちらに向かってきた。
「え?待ってリッチーさん!私は戦える!」
しかしリッチーは譲らない。
「体制を整えるのです!このままでは全滅します!」
待って、ダメだよ。
ズメイとリリスが戦っている様子を見るが、リリスのコウモリ化でズメイが有効打を当てられず押されている。
その間にアーサーは転移魔方陣を起動した。
「アーサーちゃん待って!」
「いいえ待ちません!」
そう言って魔力を注ぐのに集中している。
「頼みましたよ」
リッチーはそれを見て戦いへと参加しようと走り出す。
ミドリがハルを回復している途中でハルがむくりと起きた。
「まだ寝ていられないな…」
「ハル、傷が…いや、共に戦おう」
血がドクドクと出ているハルの覚悟を見てミドリと一緒に戦いへと参加しようとする。
「ふむ、さすがに4人は面倒じゃの。腕輪を使うか」
それを見たリリスは右腕を掲げた。
次の瞬間、腕輪が光りだす。
「ぐあ!」「ぬぅ!」「くっ」「うぐぅ」
私とアーサー以外のみんなが苦しみだした。
「な!?あれは…覇王の腕輪…!」
魔族を従えるために無理やり服従させる腕輪。
魔王の証だ。
「なんで…」
そしてコウモリとなって高速移動をして私とアーサーの後ろへ移動した。
「ぬしも魔王と呼ばれておったな。であれば魔王失格じゃな。そうやって突っ立っていることしかできぬのか?」
「…ぁ」
その通りだ、何も言い返せない。
「魔王様には手出しさせません!」
アーサーが前に出る。
「うん?ぬし、人間か…?なるほど」
アーサーに語りかけ、にやりと笑いながらこちらを見た。
「え?きゃあ!」
リリスが後ろからアーサーの首をつかみ、飛んで転移陣から出た。
「アーサーちゃん!」
リリスはアーサーをつかんで空中に浮かんでいる。
「ぐ…」
みんなも腕輪の力で動けなくなっている。
「こやつは預かっておく。取り返してほしければいつでも来るがいい!我が眷属となる前にな」
待って、ダメ!
そんな声さえも私は出すこともできず、次の瞬間転移が完了した。




