戦闘の作戦と規格外の力
左手を突き出す。
「シールド!」
王様の周りにシールドを張り、圧縮をかけていく。
続いて右手。
「グラビトン!」
重力魔法をかけて重くしていき、動けなくさせる。
「ぐぬぅ!」
予想外の拘束に戸惑い、動けないようだ。
「ニチレンさん!」
「わかっています!」
地面に手を当て、魔法陣を形成し始めた。
「封印魔法か!」
王も気づき、拘束を解こうと力ずくで魔法の糸をブチブチと切り始めた。
「させない!」
ハルがそのたびに移動して糸を絡ませる。
私もありったけの魔力を籠める。
10秒、20秒と時間を稼いでいく。
いける!
そうして25秒に差し掛かった時、
「王を舐めるなあぁぁぁ!!!」
全身の筋肉を解放させるとともにすべての拘束を無理やり壊していった。
「うあっ!!」
「きゃっ!」
「っ!!」
「あっ!」
見ると私、アーサー、ハル、ニチレンの魔法が全て消えている。
「ごめん、ニチレンさん!一気にやる予定が!」
「いえ、私も想定外でした」
「死の準備はできたか?」
こちらにゆっくりと近づいてくる。
「私が時間を!」
ハルが思いっきり王を蹴り飛ばして壁に激突させた。
その隙にアーサーがこちらへ合流した。
王の方を見るが普通に起き上がろうとしている。
くっ…ター〇ネーターじゃないんだから!
王がハルに向かって飛びこんで右こぶしを叩きつけようとする。
それをすんでのところでかわす。
ドゴーン!!と音がして城の壁に穴が開いた。
壁には拳は当たっていない、衝撃波でこの威力だ。
「ごめんハルさん!1分!いや、50秒だけお願い!」
「なるべく早くお願いします!」
私たちは外へ飛び出した。
城にどんどん穴が開いていく。
王が攻撃してハルが避ける。
当たったら即死、当たらなくても衝撃波や城の破片で傷つく。
「楽しいなぁ!これほど速い者は久方ぶりであるぞ!」
「うぐ…これ以上は…!」
ジリ貧の状態で何とかさばいていく。
そして30秒が経過したころ、限界が来た。
壁に追いやられ、左手で首を絞められる。
「ぐあっ!!」
「ここまでよくやった、ゆっくりと休め」
そうして右手を振りかぶった瞬間、
「シールドセット!」
ガキイィィン!!という音とともにシールドに阻まれる。
ニチレンが壁の穴から覗いてガードをした。
「ハルさん!」
ハルを引き寄せ退避させる。
「こざかしい、これで決めてやる」
王が構え、気をためているようだ。
「これは…皆さん!私の後ろへ!」
ニチレンがいち早く気づき声をかけた。
それと同時に全員がニチレンの後ろへ滑り込む。
「5重シールドセット!」
「王撃」
同時に声をあげた瞬間、
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
と今までの比較にならない衝撃波が来る。
耳がつんざき、目を開けていられない。
数秒その状態が続き、衝撃波が止む。
あたりが見えないほどの煙が発生する。
そしてゆっくりと晴れてくる。
見ると地面が削れ、左右後ろ私たちのいる場所以外は何も残されていないほどの有様だった。
「ほう、余の一撃を防ぐか」
「う…戦士さんの技です。この程度、簡単に防げます」
そう言うニチレンの額からは汗が出ていて顔は余裕がない。
服もかなり破けていて擦り傷がひどい。
もう一度は防げないだろう。
そうして王は壁の穴から一歩外へ出る。
そしてゆっくりと近づいてきてもう一度構える。
その瞬間、
「今です!」
アーサーが叫び、先ほど仕掛けておいた魔法陣を起動させた。
「なに!?」
魔法陣から何本もの鎖が出てきて王の全身を拘束する。
「魔力供給する!みんな、お願い!」
そうして私、アーサー、ハルの3人が魔方陣に魔力を注ぐ。
別々の罠をそれぞれがしかけるから破られるんだ。
だったら1つの大きな罠をみんなで協力して強固にすれば!
鎖の数をどんどん増やしていき拘束を強くしていく。
「ニチレンさん!いける!?」
「さっきので魔力がつきかけています!回復させるのでもう1分ほど時間を!」
ニチレンが常備している魔力回復薬を飲み始める。
「ぐ…おおぉぉぉぉ!!」
より強固にしてもバキバキと鎖を引きちぎり、1歩踏み出す王。
「う…3人じゃこれ以上は…」
「おい!こっちだ!」
騒ぎを聞きつけた騎士団の人たちがこちらに向かって来たようだ。
「な、なんだこの有様は!?魔王!貴様か!」
く…こんな時に!
「ちゃんと状況を見てください!魔王さんは何もやっていません!王様が何者かに操られて抑えています!」
「ニチレン様!?しかし!」
「王様の目を見て!あれが正気に見えますか!?手伝ってください!」
騎士団の人はうろたえている。
その間にも王は鎖をどんどん引きちぎっていく。
もう限界かも!
「騎士団の名を汚すな!王はご乱心!魔王に手を貸せ!」
城の中から誰かが出てきた。
王様にやられて倒れていた人だ!
「騎士団長の私が許可する!魔力を注げ!」
「は…はっ!」
その一言で騎士団の人たちがこちらに来て魔力を注いていく。
「皆さん…」
鎖が増えていき、王の全身を隠すほどになった。
そしてニチレンの魔力が回復し、封印の魔法陣を形成していく。
「ありがとうございます!これで!」
「余が…この余がまさか…!」
「封印!」
シュオォォォォ!!という音とともに王の体が光に包まれた。
そしてコロンと魔法石が転がる。
王を封印できた証だ。
「やった…」
なんとかなった…。
静寂が続く。
はぁ…と息を吐き、ゆっくりと立ち上がる。
「皆さん、ありが…」
「王撃」
魔法石がパキッっと割れた。
そしてドゴオォォォ!!!という音とともに空に衝撃波が伝わっていく。
「うそ…」
魔法石は完全に壊れ、そこには王が立っていた。




