不可能な逃亡選択
「どう?アーサーちゃん」
「…ダメです、騎士団の方や衛兵だらけで」
城から脱出した私たちは、町の路地裏のようなスペースを見つけて隠れていた。
「とりあえず入口は幻惑魔法で隠してるけど…」
「時間の問題ですね」
まだ暗くてわかりにくいが魔法で作った幻惑はホログラムのようにぶれるため簡単に見破れる。
「ハルさんの傷、浅くてよかった」
治癒魔法をかけているが、ショックが強すぎたせいかあれから目覚めない。
というかなんで王様は私たちを襲ってきたんだろう、なんでワルクさんを殺したと言いがかりを?
「いや、いろいろ考えることはあるけど、まずはこれからの行動だね」
「はい、とはいえもう選択肢は限られています」
そう、おそらく王都には私たちを感知できる優秀な魔法使いが何人かいるだろう。
隠れ続けることはできない。
「となると城を攻めるか、王都から出るか…」
「魔王様…」
ハルを見る。
これ以上みんなを危険にさらすことはできない。
「…王都から出よう」
「えっ、いいのですか?」
「うん、ニチレンさんもわかって逃がしてくれたんじゃないかと思う。また城まで行く力はもう私たちにはないよ」
ハルを担ぎ上げる。
帰ったらみんなになんて言おうかな…?
「わかりました。では反対側にまた隠れられそうな場所があるので移動を」
そうして隠れながら王都の外へ向かっていく。
「着いたけど、これは…」
壁だった。
大きな壁がずっと続いている。
「おそらく王都を囲んでいるんでしょう。でもどうにかして飛び越えれば…」
「待って!」
壁の上をよく見る。
「シールドが張られてる。中からも外からも簡単に出入りできないようになってる」
「そんな…」
「正規の門はおそらく騎士団や衛兵がいっぱいだろうし」
これはまずいね…。
途方に暮れていると話し声が聞こえてきた。
「アーサーちゃん、隠れて!」
近くにある大きな花壇の影へ倒れこむように隠れた。
二人組の衛兵がこちらへ向かってくるのが見える。
「こんなまだ日が昇ってないってのに、何で問題起こすかねぇ魔族ってやつは」
「なんでもその魔王が王を襲ったらしいぞ」
「えぇ!?あの王を!?どれだけ命知らずなのだ、魔王は!」
普通、王様の方を心配すると思うんだけど…どういうことなの。
「しかし本当に西門側にいるのか?」
「探知のスペシャリストがそう言ってるんだ、いるんだろうよ」
「いずれにせよ俺たち下っ端は体よく働かされるしかないんだ、探すぞ」
「おう、そうだな」
二人が遠ざかっていく。
「ふぅ…乗り切った」
もうこんな詳細に探知されてるのか。
「魔王様は…王様を襲ったりなんか…」
アーサーは涙目だ。
「うん、大丈夫だよ。みんながわかってくれればいい」
「はい…」
アーサーを撫で、気を失っているハルを見る。
「というか早く移動しよう。この場所、ちょっと覗かれたら見つかっちゃう」
「そうですね」
花壇の向こう側に寝そべっているだけだからすぐにわかる。
よく見つからなかったものだ。
「あそこ、隠れられそうな場所まで行こう。せーので」
背の高い植え込みの木を指さす。
「はい」
左右を見て誰もいないことを確認する。
「よし、今だ!せーの!」
飛び出そうと一歩踏み出したその時、
「魔王さん!」
「ぴっ!?」
「ひょええぇぇぇ!!」
急に後ろから誰かが声をかけてきた。
「やっと見つけました!」
振り向くと、それはニチレンの姿であった。
ちゃんと確認したのに!?忍者じゃなくてホラーだよ!




