カルルの記録と王都への転移
「なぜあなたがここに?」
ハルが警戒をして聞く。
「あぁ、それは…」
「あの!」
アーサーが突然声をあげる。
「その前に図書館を出ませんか?ここじゃ迷惑です」
「あ…」
そうして図書館から出て近くの広場へ移動する。
「えぇと、それでファウストさん…だよね?どうしてここに?生物が光る現象を知ってるの?それに私たちを待ってたってどういうこと?」
私が思いつく限りの聞きたい質問を聞く。
ハルさんはいつの間にか風の剣を作って切りつけようか迷っていた。やめて。
「大丈夫、全部話すから。だからその剣しまって」
ハルが渋々と風の剣を解除する。
「えーっと、どれからいこうかな」
魔法使いが悩んでいるとアーサーがずいっと前に出てくる。
「まず、なぜこの町の図書館にいたのですか?ニチレン様からは王都の図書館にいると聞いていたのですが」
「君は…ふむ、そうだね、僕は図書館が好きだからね、だから…」
「ふざけてるのか!?」
たまらずハルが割り込んできた。
「いや待って、説明するから」
「私たちを待ち伏せしていたということですか?」
アーサーが考えながらつぶやくように言った。
「概ね正解。僧侶に魔王はこの町から来ると聞いたからね。図書館には絶対寄ると思った」
「なぜ?」
「人族のことを知りたいなら図書館に来るのは当然だろ?ほかの場所で待つのも癪だし僕が好きな場所で待った」
…この人ただの図書館好きか。
「来なかったらどうするつもりだったの?王都の図書館でもよかったわけだし」
私は尋ねる。
「来るさ、どうせ僧侶は自警団に…いや、検問かな?その辺りで捕まって身動き取れないんだろ?」
この人ニチレンさんの分かり手だった!
一緒に旅してたパーティだとしてもその推察はおかしいって。
いやそれよりあの人そんな常日頃捕まってるトラブルメイカーなのか…。
「あ…」
突っ込みたいところが多くて声が出ず口をパクパクさせてしまった。
「まぁとにかく、それで君たちが困っているんじゃないかと思って会いに来たんだけど…」
全然困ってなさそうな私たちがいたと。
図書館に来た時点で解決してるはずってなりそうなもんだけど。
「あー、来ていただいたのにごめんなさい。ニチレンさんの泊まってた宿が使えたから釈放されるまでどうにかなりそう」
「いいさ、この町の図書館も久々に来たからね、楽しめた」
結構面倒見いい人なのかも、ファウストさん。
「あ!それより!旅行記!魔物が突然光る現象について書かれている本!」
なんだったっけ?カル…なんとかの本。
「そうだね、確か図書館にあったはずだから見に行こうか」
そう言って再度図書館へ足を運ぼうとする。
「待った、お前のような奴がただで教えてくれると?信用できん」
ハルさんはまだ警戒しているらしい。
「ふむ、じゃあビジネスとして提供しよう。情報量に5万ゴールド」
お金取るのか、しかも結構高い。
「ではこちらを」
アーサーがお金を渡す。
えっ、あの…アーサーさん?それニチレンさんから預かったお金…。
「持っているのか、貸しを作れると思ったんだけど…」
「アーサー、それはニチ…」
貸しという言葉を聞いて私はハルを手で制した。
ナイスプレイ、アーサーちゃん。
「はい確かに。内容が的外れだったり値しなかったらそのまま返すから安心してほしい」
やっぱり思ったよりいい人かもしれない。
図書館にて
「こういう文献はたまにある。だが生物が光った現象とはっきりと書いてあるのはこの旅行記だけだ」
そう言って本を渡してきた。
カルル冒険記録。結構分厚い…。
「不死鳥のところだ。一度読んでから感想を聞こうかな」
そう言って別の本を読み始めた。自由だね。
ざっくりとした内容はカルルさんが山にいる不死鳥のうわさを聞いてぜひ会ってみたいとその山に登ったらしい。
不死鳥には無事会うことができ、楽しませようと自分の冒険譚の話をしていたようだ。
そして十分楽しんだお礼にと、世界の誰も知らない名所を教えてもらえたそうだ。
話を聞いている途中、遠くを飛んでいたグリフォンが突然光りだしたという。
その後グリフォンはとんでもない勢いで不死鳥を殺害。
命からがらグリフォンから逃げかえったらしい。
「どうだった?」
ファウストが読み終わった時を見計らい声をかけてきた。
「これほんとにあったこと?結構めちゃくちゃ書いてる気がするんだけど」
「まぁ好きに解釈すればいいよ。カルルという人物がそこにいた証拠はその本しかないからね。でも300年前に不死鳥の再生があったのは確かだ」
「…」
アーサーがファウストに聞かれないよう手招きをして耳元で話してきた。
「魔王様、グリフォンは不死鳥を殺害できるような力は持っていないです。つまり…」
ケンタウロスの件と酷似していると。
「ファウストさんの見解は?」
「100%は信頼できない。でも調べてみる価値はあると見ている」
「…保留にしておく」
そう締めくくった。
翌日。
ニチレンさんが開放され、3人で迎えに行った。
「ご迷惑をおかけしました…」
ニチレンがこちらに向かってくる。
「何とかなってよかったよ」
「看守さんもまたお世話になりました!」
看守さんはうんざりという顔をしている。
前科何犯なんだ…。
「じゃあ行きましょう」
転移の手続きは特にトラブルなくスムーズに済んだ。
「ニチレン様、そして王の…。ではあなたが魔王で?」
「はい、よろしくお願いします」
角をチラッと見せる。
「なるほど、ではこちらへ」
そう言って転移の間へ通される。
ちゃんと話は通してくれていたみたいだ、よかった。
「やぁ、見送りに来たよ」
転移の間でファウストさんが待っていた。
「魔法使いさん!?どうして?」
「どうせ君が何かやらかすと思って待機していただけだよ。検問で捕まったそうじゃないか」
「あうぅ…すみません」
いつものやり取りなのだろう。
そういえば他の2人も脳筋だったけどどうしていたんだろうか。
「何しに来た?」
ハルが構える。
「そうだね、無事ここまで来れるか賭けてた」
「なんだと?」
「ハルさん、お願いやめて」
「う…わかりました」
ここで争われると本当に終わるよ…。
「そろそろ転移しますよ。準備はいいですか?」
床に刻印されている魔方陣が光りだす。
「あ、はい、よろしくお願いします。ファウストさん、いろいろありがとうございました」
頭を下げ礼を言う。
「いいさ、また会うことがあればその時はよろしく」
「王都、転移!」
私たちの体も光に包まれ始めた。
「あ、そうだ!王様はかなり変わってるから気を付けて!」
「え、な…」
ファウストが言い切る前に転移が終わってしまう。
「あ~聞こえたかな?まぁ大丈夫か」
そう言ってファウストはその場を後にした。
これから起こる事件のことなど知らずに。




