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魔王様は足止めたい  作者: たっつん
暴走のケンタウロス
10/11

沼と落とし穴とロンギさんと

「私は封印魔術の設計に入ります。かなり質のいい魔法石が必要になりますが探してみましょう」

「うん、お願いする」

「それと足止めに関しても考えていたんですが」

「えっそこまではいいよ、足止めはこっちに任せてほしい」

働き過ぎじゃないだろうか。労基に訴えられても謝るしかできなくなる。

「いいえ、勇者様の件の失敗をどうしても取り戻したいのです」

どうやら前回の対勇者用迷宮ダンジョンを文字通り力技で突破されたことが相当悔しかったらしい。

「…わかった、でも現場に行くのはダメ。作戦だけ。今回は封印魔術の設計に専念して。現場へは私が行く」

「魔王様!ですが…いいえ、わかりました。では彼らの通り道に1つ大きな沼と落とし穴を作ります」

「沼と落とし穴?」

「はい、正確には沼の下に空洞を作り、這い上がれなくする形です。上からは入れるが下からは攻撃しても沼に吸い込まれるだけ。さらに下に作っているので土壁を壊すのはいくらケンタウロスでも難しいかと」

なるほど、確かにそれならば足止めとしては充分。おそらく下から無理やり出てきそうだが時間がかかるはず。

「ただ作るだけではおそらく1時間も持たないと思います。沼から出てくるのを阻止する方が必要です」

「わかった、誰を行かせるかは私が決める。だから安心して封印魔術に専念を。足止め中魔力を渡すため私もたまに戻ってくるから」

「ありがとうございます、では隣の部屋の研究室をしばらく使わせてもらいます」

そしてアーサーを退出させ部屋まで見送る。


「…ふぅ」

ため息が出る。

これから死地へ向かわせる人材を考えなければいけない。

「魔王って大変だ…」


しばらく考えているとドタドタとした足音が近づいてくる音が聞こえる。

「魔王氏!魔王氏!」

竜人ロンギさんだ、四天王ズメイの弟で一昔前のオタクみがある言動をする魔族だ。

「話は聞かせてもらったでござるよ!沼と落とし穴、そして這い出るのを阻止する要因が必要とか」

「…」

まだ誰にも言っていないんだけど…。

発案のアーサーちゃんはさっき部屋まで見送ったばかりだ。

「失敬、盗み聞きするつもりはなかったのでござるが聞こえてしまった次第」

あまり考えないようにしよう。

「拙者たちを使ってくだされ!」

「…いや、まぁそれはいいんだけど多分人数とある程度のレベルが必要だよ」

「心得ておりますぞ。拙者、100の魔族を招集可能でござる。種族は様々であるがア、アーサーちゃんのためならば間違いなく命を張れる魔族たちでござる。100のケンタウロスを沼と落とし穴に入れる魔法も拙者たちが力を合わせれば作れますぞ」

何だろう、すごく引っかかる言い方だ。何か嫌な予感がする。

けどこれ以上ない人材。さすがにこれを逃そうとは思わない。

「わかった、じゃあお願いする。1時間後以内に準備して。ケンタウロスが通るであろう場所にチェックを入れたから」

そう言って地図を渡す。

「承った!では後ほど」

そう言ってのっしのっしと背中を見せて退出していく。

大丈夫かな…?



そして1時間後、チェックポイントにて

「野郎ども!!我らがアイドル!アーサーちゃんの作戦!!死んでも成功させろぉ!!」

「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」

竜人ロンギさんを筆頭にゾンビ、スケルトン、ゴブリン、オーガ、リザードマンまで様々な種族が咆哮をあげる。

アーサーちゃんファンクラブができていたらしい。うちの連中ほんと大丈夫なのか…?


もうすぐここをケンタウロスが通る

「沼のサイズはこれくらいで問題ないでござるか?どう作ったは企業秘密、数年間貯めた魔法石など使ってないでござるよ」

50メートルプールかな?と言わんばかりの沼ができている。やりすぎでしょ。

「この魔法石、封印術には向かぬ粗悪品でしてな、悔しくて涙が止まらなかったがここで使えて感無量!」

言ってることめちゃくちゃだよ…。


そうこうしているとケンタウロスが見えてくる。

「なんだあいつら!?邪魔しやがるのか!?」

「弱そうだな!ぶっ殺せ!」

「ヒャッハー!汚物は消毒だー!!」


そうして沼へ足を踏み込む…が、

「なん…!?えっ?沼を…走ってる!」

この沼見た感じ走る程度じゃ沈まないようにするの無理そうなんだけど。

「拙者にお任せを」

そう言ってロンギさんが前に出る。

「グラビトン!!」

重力魔法だ。無理やり押さえつけ…られてはいないが沼に沈める程度であればできるようだ。

汚い言葉を吐き捨てながらどんどん沈んでいく。

「ふぅ、よかった…」

これでアーサーちゃんの作戦第1弾は成功だ。

そうして休憩しているとドンドンと地面が揺れているのを感じる、怖すぎ…。


10分後、上から出られると気が付いたケンタウロスが少しだけ顔を出すのが見えた。

「また会えたなぁ!ヒャッハー!」

「総員!戦闘準備!とびかかれ!」

一薙ぎで10人は吹っ飛ぶ中、何とかして1体、また1体と沈ませにかかる。


そうこうして3時間、同時に20体ものケンタウロスが顔をのぞかせる。

やばい、これ以上続けていたら本当にみんな死んでしまうかも…。

3時間か…でも魔王として決断しなきゃ。


「もう限界だ!あなたたちが死んでしまう!退却を!」

そう言って跳ね飛ばされたロンギさんを見たが…。


「魔王氏!参謀でアイドルでキューティーなアーサーちゃんが粗陋である拙者達を信じて足止めを頼んだのでござるよ!ここでやめたら拙者が拙者を許せぬ!!」

血涙を流して歯を食いしばりながら語る。

覚悟決まりすぎでしょ。

あとアイドルでもないし提案したのもロンギさんなんだけどね。


そして決死の覚悟でケンタウロスが這い出るのを阻止しに行く。

傷を回復させながら仲間たちと完璧な連携を取りながら戦っている。

数十人がかりでボコボコにされながらやっと1体沼の底に押し込めるという完全に劣勢だが、あまりの形相に這い出てきたケンタウロスが若干引いているようにも見える。


「いい加減にしろや!俺たちに勝てるわけねぇだろうが!!ぶち殺すぞ!!」

「いいや!拙者が!死ぬまで!殴るのを!やめない!」


そうして交代で沼の補強や彼らの足止めを気合と連携だけで行い2日の時間を稼いだ。

私もアーサーに封印魔術用の魔力を渡すため何度も往復して加勢もした

これ以上ないほどの快挙だ。


しかし最後には本当にボロ雑巾のようになっていた。

ギリギリ生きてるのであまりの形相にケンタウロスたちも殺すのをためらったのだろう。

そしてその報を聞いたアーサーは後日ちゃんとした礼を。

それと頼み事があればなんでも協力するので言ってほしいと約束をしたらしい。

ロンギさんはと言うと

「本…望…」

そう言って安らかに気絶していった。

ぶれないなこの人。

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