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魔王様は足止めたい  作者: たっつん
勇者、足止め
1/11

プロローグ

終わりです、魔族は終了となります。私もいずれ勇者に討伐されることになるでしょう。

涙を流しながら終わりを確信する私こと魔王は異世界転生をした元人間です。

普通に独身貴族でただの社会人をしていたはずなのに気が付いたらここにいました。

いや、気が付いたらじゃないです。

甘いものが好きすぎて医者に止められるのを振り切って食べ過ぎたのがいけなかったのがいけなかったのだと思います。

おそらく心臓発作でしょう。

っていうかこういうのって私みたいなのじゃなくて男性が過労とかで倒れたりトラックにひかれたら異世界転生するんじゃないの!?

私普通の人なんだけど。

いや確かに天涯孤独で友達という友達や恋人もほぼいなくて傍から見たらちょっとかわいそうな人感あったかもしれないけど…。


まぁでもそこはいい、誰が転生させたかわからないけど私を選んでくれたのであれば全力で答えたい。

元の世界で生きていてもちょっとした娯楽で楽しみつつなんとなく死んでいくのが目に見えていたから。

結婚もしたくなかったし。


異世界転生!いいでしょう!

オタクの夢みたいな話でちょっとわくわくするし。


ただし魔王である。

魔族を束ねないといけないし好き勝手させてはいけない。

野蛮なものから戦いを好まないもの、羽の生えてるものからエラがあり水場がなければ生きていけないものなど統制。

食糧問題から物資の調達まで考えることが多すぎる。

魔王じゃなければ終わってた。


あ、そういえば申し遅れました。

私の名前は魔王エルクルといいます。

転生前の名前は捨てました。

やたらスタイルがよく褐色銀髪角生えお姉さんと完全に性癖こじらせたみたいな見た目をしています。


そう、終わりの始まりの言葉は伝達係である鳥の姿をしたハーピィの男版みたいな魔族が飛ぶことすら忘れてドタバタと謁見の間に入ってきたことからだ。

「ま、魔王様!大変です!」

「どうしたの?今はオークの方たちと大事な食料の話し合いをしているところなんだけど」

「申し訳ありません、しかしゴ、ゴブリンの突撃部隊が」

「?」

「ゴブリンの突撃部隊が魔王様の名前を使って人族に攻撃をしました!」

「えぇ!?…くっ、またあの部隊か、仕方ない、お詫びと復活の儀式を…」

「そして勇者と名乗るものに瞬殺されこちらに向かって進軍をすると言っております!」

「え…。は…?」

ゴブリン突撃部隊とは精鋭部隊で並みの人間では勝てない軍隊である。

この世界はレベル制で私がレベル90として彼ら1人1人がレベル50近くある。

いろいろな耐性や攻撃手段を持っており全員相手となると私でも苦戦する。

最高レベルは基本100となっていて大抵どこかで壁にぶつかって止まるようにできている。


「こちらを」

そう言ってディスプレイ型の魔物を出してくる。

監視用で目玉の魔物と対になっていてこれは録画だろう。


「この村はわがゴブリン突撃部隊が制圧した!魔王エルクル様が降臨されたと王に伝えるのだな!はーっはっはっは!」

死体だらけの上で部隊の隊長が叫んでいる。

死体がどうやって伝えるのだ。勘弁してほしい。


その時突然隊長が吹き飛ぶ。

「ごぶぁ!!」

「何者!?」

「我こそは勇者!魔王エルクルを討伐するために立ち上がった!」

そう言って4人の男女が現れる。

勇者、魔法使い、僧侶、戦士だ。

「死ねぃ!」

勇者が剣を振りかざし一振りで何棟も家が吹き飛ぶほどの衝撃を見せる。

魔法使いが災害ではないかと思うほどの火の竜巻を繰り出す。

戦士が地面の地形が変わるほどの斧の攻撃を見せる。

僧侶はゴブリンが逃げ出さないよう村を囲む形でシールドをはっている。


最後には村があったとは思えないほどの被害になっていた。

ゴブリンは跡形もなく全滅である。

「魔王に伝えろ、確実に息の根を止めに行くとな!」

そこで途切れる。


「し、死体がどうやって伝えんねーん…」

つっこんでは見たもののどう考えてもレベル100超えているような壮絶な光景であった。


「魔王様、私死にたくは…」

「お、落ち着け!ゴブリンたちやあなたたちは私の部下!レベルは低くなるが復活可能だ!」

どうすればいい?考えなければ。

「そうだ、手紙を出すのだ!私が丁寧に説明し平和的解決を手に入れる!」


10分後、片翼を無くし転移から帰ってきた伝達係が言う。

「即刻…破りすてられ…ました…ガクッ」

「伝達係ー!!」



終わった。

涙を流し終わりを確信する。

戦えば確実に負ける。魔族は終わりだ。



いやまだだ、私が転生した理由はこのためではないのか。

諦めの悪さは前世の私の取り柄だったはず!

そう、どうすればいい?

わからない…が…アイデアは出てこないけどとにかく!


「足止めをする!皆、足止めに全力を尽くせ!死んでも復活させる!私についてこい!全力で平和な日々を取り戻してやる!」


そうして全力で足止めを行う戦いが始まったのである。



手紙の内容

拝啓

勇者様、人族の皆様におかれましては益々ご盛栄のこととお慶び申し上げます。

さて、この度魔族の一部の方々が人族にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。

亡くなった方々には可能な限り元に戻して復活をさせ不自由ない暮らしを…


~略~


よって、我々魔族と人族で和平を結びたく思います。

条件のすり合わせとして一度円卓の場を設けさせていただければ助かります。

返事は伝達係のハーピィ男にて承ります。

どうぞご一考の程よろしくお願いいたします。

敬具

魔王エルクル


最初の一文を読み破り捨てる。

勇者「魔王の言いなりにはならん!確実に息の根を止めるぞ!」

仲間「「おぉーー!!」」



魔王「私の渾身の手紙が…」


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― 新着の感想 ―
テンポが良くてめちゃくちゃ面白いです!魔王のツッコミが冴えていて、絶望的な状況なのに笑ってしまいました。ギャグとシリアスのバランスが絶妙。
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