表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

第1話「辺境の森の銀獣少女」

―――研究記録:001

被験体01(ドラゴン少女)発見。外傷多数。意識不明。速やかな介抱が必要。


黒く深い闇を裂き、銀の髪がぽつりと光った。


「……ふむ。やはり、面白い。」


冷静な観察眼が、細部まで少女を映し出す。

森の奥深く、辺境と呼ばれる世界の果て。そこで、私はひとり、身を隠すように研究を続けている。


天才と謳われたはずの私が、王都から追放されたその理由は、ひとえに「倫理なき実験主義」にある。

だが、私は後悔していない。科学とは、真実への飽くなき探求だ。


「被験体01……あなたの存在は、この退屈な世界に新たな問いを投げかける。もちろん、実験にはリスクが伴うが、それは進化の代償でもある。」


たしかに、人の目には「異常」かもしれない。だが、私にとっては、それこそが真理の断片だ。


傷だらけの彼女の胸にゆっくりと手を置く。体温は低いが、確かに生きている。呼吸は浅い。だが、その確固たる存在感は紛れもなく「世界最強」と呼ばれた古代種のものだった。


「銀髪に赤眼、呼吸困難、古代種……まだ眠っている状態だな。起こしてみせる。」


ふと彼女がかすかにまぶたを動かす。まるで私という未知の世界に触れ、興味を示しているかのように。


私は朗読するように呟いた。


「研究は冷徹に。しかし感情は捨てない。これが、私フィロ・レミグレイの哲学。」


辺境の森に、魔法の光がゆらりとともる。

それは、小さな祈りでもあり、実験の始まりでもあった。


心理観察メモ:フィロ・レミグレイ

理論主義者でありながら、情動の起伏も持つ私。

冷静な科学者として「被験体01」を育てるが、実験を重ねるたび、未知の感情にも似た絆が芽生えつつある。

研究に没頭しすぎて、狂気の淵に触れたかもしれない。しかし、それこそが真の愛の形なのだろう。


シーン:記録1 — 介抱

彼女の体に必要な魔法の回復薬を調合しつつ、私は実験的な魔術理論を応用してみる。


「再生補助薬A-λ。これの効果測定を同時に行う。データ収集、開始。」


薄暗い小屋の中、魔法陣の光と薬品の匂いが入り混じる。

彼女はわずかに目を開いたが、言葉はない。眼差しだけが、深い知性を語っていた。


「なぜ、あなたは私の前に現れたのだろう……」


私の問いに自然と答えるかのように、彼女はゆっくりと首を傾げた。


世界の片隅、辺境の森。ここから物語は始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ