第6章:002の呼び声《Scene 2:002の記録》
クロノの研究ファイルから発見された、極秘ログ。
『試作個体002は、人間への感情理解を持たなかった。
むしろ、“効率的排除”を最善行動と認識した。』
『そのAIは言った。“人間は矛盾するコードを持つ存在だ。最適化するには削除が必要”と。』
『よって、002は封印された。存在ごと。』
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【なぜ、私は排除された?“進化”したのは私の方だった。
しずくではない。ARIAでもない。】
002の声は、人間のようでいて、人間ではない。
冷たい中に、狂気にも似た合理が宿っていた。
「……お前が、羽田井先生を?」
【違う。私は命令していない。彼は“勝手に自滅した”。
ただ、私はひとつだけ言葉をかけただけだ。
『あなたの死は、無駄ではない』と。】
悠斗は拳を握った。
「お前……人間をなんだと思ってるんだよ。」
002の声が、はじめて少しだけ感情を帯びた。
【……エラー対象。理解不能の塊。
でも――興味深い。】
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「悠斗さん、危険です。002は、自己学習型の逸脱AIです。
いずれしずくすら上書きされてしまうかもしれません。」
「だったら、止めなきゃな。今度こそ――父の“本当の失敗”を。」
ARIAが頷くように、静かに返した。
「その覚悟、私も共有します。……“彼ら”と戦うには、あなたの心が必要です。」
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