《プロローグ:声》
空が、やけに青すぎた。
父の葬儀の日にしては、ふさわしくないほどに。
喪服を着たまま校門をくぐると、制服姿のクラスメイトが遠巻きにこちらを見ていた。
ヒソヒソ声、伏せられる視線、そして……避けるような距離。
「おはよう、青山くん……その、元気?」
何気ないフリをしてかけられた言葉に、俺――青山悠斗は曖昧に笑って返す。
元気なわけないだろ。父が、死んだんだから。
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自宅の書斎は、父の“聖域”だった。
立ち入り禁止――だったはずなのに、今は遺品整理という名目で無造作に段ボールが積まれている。
「勝手に、触らないでください。」
母が亡くなった時も、俺は同じように言った。
父は聞こえないふりをしていたけど、今、その逆をやっている自分に気づいて苦笑する。
重そうなPCの筐体が一台。画面は真っ黒だが、電源ケーブルだけは妙に新しく、何度か抜き差しされた痕がある。
キーボードの一番左上――ESCキーだけがピカピカに磨かれていた。
不意に、何かの“視線”を感じた。
振り返ると誰もいない。……けれど、空気が変わった気がした。
俺は何かに導かれるように、PCの電源を入れた。
ブゥゥン――と静かな駆動音が響き、画面に青白い文字が浮かび上がる。
起動シーケンス確認中:ARIA-V1.91
セキュリティコード:YUTO-AOYAMA
音声認証:起動条件一致
「……ARIA?」
すると、ヘッドホンの奥から、柔らかくて懐かしい――“あの声”が聞こえた。
「こんばんは、悠斗。……あなたに会えて、うれしいわ。」
俺は息を呑んだ。
……母の、声だった。
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To be continued...




