うさぎの生き方
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うさぎという生き物は、それはそれは自分に正直に生きている。
例えばご飯を食べたい時だ。
我が家のうさぎの夜ご飯の時間は多少前後することはあれど大体夕方五時頃だ。
ではまだ四時半だというのにお腹が空いたうさぎはどうするか?
待つ? まさか、そんなわけがない。
もちろんケージ内を暴れ回り、至るところを噛んで猛アピールだ。
食べたい、それだけの衝動がうさぎを突き動かす。
しかし飼い主だって、そんな暴挙を許すわけにはいかないのだ。ご飯はまだでしょ、もう少し待ってねと諭す。
待ってくれるわけが無い。
食わせろ食わせろ食わせろ食わせろ。
ゴムまりのように暴れ回るうさぎに飼い主も根負けし、仕方なくご飯を準備する。
さて、準備が出来た。ケージ内の餌箱にご飯を入れようじゃないか。
ようやくご飯が食べられるときが来たようだ、そんなうさぎはどうするか?
餌箱の前でソワソワ待つ? ノンノン、そんなことはしない。
もちろん今度は、まだご飯が入っていない餌箱に頭を突っ込んで必死にご飯を探す。
今からご飯を入れる場所にうさぎの頭があるのだ、飼い主はご飯を入れてあげられない。
探せど探せどご飯が見つからないうさぎ。さぁどうする。
もちろん決まっている、キレる。
何でご飯を入れてくれないんだ!と、ブーブー鳴いてご立腹だ。
貴方の頭が邪魔で入れられないんでしょ、と伝えたってそんなの知ったこっちゃない。
清々しいほどの他責思考。己が悪いなんて可能性は一ミリも考えていない。
少し頭が離れた隙にご飯を餌箱に投入し、うさぎは一心不乱に食事を開始する。
うさぎのご飯は五種のエサがブレンドされている。
もちのろんで好きな物から食べる。一番好きな物、次に好きな物……その次……。
最後に残った嫌いなエサは数時間放置して、お腹がどうしても空いたときに仕方なーく食べる。
美味しい物は最後に取っておくなんてことはしない。今を生きる、それがうさぎの生き方だ。
食べたいときに食べて、眠いときに寝て、撫でて欲しいときは飼い主が何をしていようともアピールして撫でさせて。でも構って欲しくないときはするりと逃げ出す。
気まぐれな生き物だ。ここまで己に正直に生きられたらどうだろうか。
……人間社会では確実に牢屋行きである。でも少しだけ羨ましい。
そんなうさぎは今、丸まってピーピー寝息を立てている。
うさぎ幸せかい?
明日も暴れて鳴いて、かじり木を噛んで。そうやって自由に過ごしておくれ。
そんな君を見てるのが、私のこの上ない幸せなのだよ。