歯医者怖い
****
私は歯医者が苦手だ。
苦手だからこそ、今は三ヶ月に一度ほど歯のメンテナンスに通って本格的な治療をしなくて済むように頑張っている。
しかし昔から苦手なわけでは無く、子どもの頃の私は歯医者に大きな関心があった。
かなり大きくなるまで一度も虫歯が出来なかった私にとっては歯医者は未知の存在であったし、ニンテンドーDSであったゲーム「THE 歯医者さん」に鬼のようにハマって、ゲームの中で世界的な名医にまで上り詰めた過去もある。
どちらかといえば歯医者は好きだった。
とんでもないことが起こるまでは。
ある日歯が痛くて歯医者に行った私は、医者から歯の痛みの原因は噛み締めだよと言われた。
だからマウスピースを作ってそれを軽減しようとのことだ。
マウスピース。興味はあった、私はそれを了承した。
歯に粘土のようなものを被せて歯形を取り、それをもとにマウスピースを作る。
一度目に作ったときは何とかなったが……一度目のマウスピースはシリコン製だったため私の歯の圧に耐えきれずすぐに壊れてしまった。
問題は二度目のマウスピース作りの際に起こった。
歯に粘土のようなものを被せたとき……それが私の口の中を全て塞いでしまったのだ。
ここで思い出してもらいたい。昨日の日記に書いたように私は鼻だけで呼吸が苦手だ。
吸うのはなんとかなるものの、全ての息を鼻から出すことが出来ない。
……そう、粘土で塞がれたことで私は完全に呼吸困難になってしまった。
粘土が固まるまでは数分かかる。
息が出来ないのだ。もの凄く苦しいのだ。
溺れるってこんな感じだろうか。
終いには体がガクガク震えて、口から変な汁が出るのだ。
……正直あと数秒、粘土が固まってくれなかったら私は絶対失神していた。
流石に歯科衛生士さんも焦っていた。当然だ、マウスピース作ってて事故なんて聞いたことがない。
たいしたことが無い人生だと思われるかも知れないが、人生で一番死ぬかと思った。
これによってたくさんの弊害が出た。
まず、口の中に物が触れるのに恐怖を覚えるようになった。
長い食べ物……噛み切りにくい白髪ネギとかもやしとか豆苗とかもあんなに好きだったのに、何だか昔より苦手になってしまった。
あと窒息するのが怖くて仕方なくなった。
そして当然、歯医者も苦手になった。
噛み締めがひどいからマウスピースを、と言われても、マウスピースを作るのが怖すぎて断ることにした。
その分丁寧に歯磨きやフロスをすることにした。
極力治療しなくて済むように……とっても怖いがメンテナンスも行っている。
正直、歯医者さんは何にも悪くない。
お仕事をしただけだ、ただ私の呼吸と歯医者の治療が壊滅的に合わなかっただけである。
歯医者が苦手な皆さん、一緒に頑張ろう。私も頑張るから。