人体にビビる日々
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皆さん、苦手な人体の部位はあるだろうか。
私はある。足の指だ。
まだ小さい頃、自分の裸足の足の指を見て「うわっ、なんか怖い」と思ってしまい、それからしばらくは真夏だろうが靴下を履く生活をしていた。
最近は足の指を見ることもまぁ慣れては来た。
裸足で過ごすことも出来るようになったものの……やはり「うわ」と思う気持ちはどうしても抜け切ることは無い。
夏なんて町ゆく人みんなサンダルで、足の指のオンパレードだ。
私はその度に「足の指だ……」と思ってはいるものの、だからどうするということも無く今日まで生きてきている。
手の指も、足の指よりはかなりマシだがちょっと「なんか凄い」って思う。
自分にも全部で二十本も付いてるのに、そんな感情を持つのはなかなかに面倒くさい。
手の指と足の指を「うわ」って思うと何が悪いか。
そう、絵を描くときに非情に困る。手足に愛を込められない。
手フェチ足フェチの人が描く手足はめちゃんこ上手い。見ただけで好きなんだろうなと伝わるのだ。
愛が無いため私は一向に手と足は上手くならない。
自分の手足を「うわ」と思いながら写真に撮り、それを参考になんとか描いている。
ちなみに私の創作小説には、常に袖なし短パンの夏服で過ごす少年がいるのだが……この子が靴下と運動靴を履いているのは当然、私が足の指が苦手だからである。
創作にも影響を及ぼす足の指、恐るべし。
あと心臓の鼓動や脈なんかも苦手だ。
当然なのだが「うわ!生きてる!」と感じて、妙にソワソワしてゾクゾクしてしまう。
骨とかもなんか怖い。
自分のあばら骨とか触るとぎゃーってなる。飼ってるうさぎを抱き上げたときに触ったときも「うわー!」ってなる。
「骨だ!」って。当たり前だ、骨である。
特にうさぎの骨は堅焼きせんべいくらい脆いのでヒヤヒヤだ。
血とかも見るとゾクゾクする。絶対に医者にはなれないだろうと強く思う。
世の中の医療関係者はすごい。
何故だろう、自分にもある部位が怖いって……生き物としての実感が無いのであろうか。
まぁしかし、大切な家族の体の部位などは多少なりとも愛おしく感じるので、まだ人間として大事な部分は心に残っているのだろう。体の部位怖いモンスターにはなりきっていない。
内臓があることもわかってる。心臓が動いているから生きていて、骨や筋肉があるから立っていられる。わかっているのだ。
……ただちょっと目を逸らしたい。やっぱり考えるとなんだか怖い。
生き物を生き物たらしめるのはそれらの部位だ。わかっている、わかっているとも。しかし!
……やっぱりもう少しの間だけでいいから、人間をファンタジーっぽく見てもいいだろうか。