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07 "かみさま"と恋バナ?

00話「∞ 偶然の始まりと転生の日」

を入れましたので、

そちらから読んでいただくと、この二人の関係性の面白みが増すかと思います。(2024.08.05現在)



キィィィィ …………ン



耳鳴りの様な高い音が聞こえた。



(あ、これはもしかして)



 何千何万と聞いてきたこの音は…

 多分あれだろう。

 

 わたしは自分が目を閉じていることに気づき、目をゆっくり開けてみる。


「お疲れ様〜」

「ぎゃっ!!!」

「にゃはっ!」


 わたしは目の前の白い物体を突き飛ばし、悲鳴をあげた。


「ちょっとちょっと〜ヒメル、こっちが驚くから、いい加減慣れてくれないのかな〜。そんなに驚かれると、ちょっと傷つくかも〜。」


 タキシードを着たリアル白猫着ぐるみの"かみさま"。ちょっと不機嫌な顔を作り、ふわふわの両手指を胸の前でモジモジ動かしている。


「"かみさま"が毎度毎度目の前に出てくるから…そう、本当に目の前っ!びっくりするの当たり前だよ!それに"かみさま"は感情なんてほぼ皆無でしょう?傷つくとか絶対ないよねぇ…?」


 目の前にいる、白いスーツを着たリアル着ぐるみ白猫。鼻息を荒くして抗議する。 

 もう誰よりも多く顔を合わせた為、そして、人とは違いすぎるいい加減な"かみさま"との価値観の擦り合わせを諦め、転生を繰り返す中、わたしはいつの間にか完全にタメ口になってしまっている。


「うわ〜ん、皆無ってのは酷いなあ。まあ、ほぼその通りだけどね。僕が管理している大切なこの世界が無くなるのも、ちょっぴり寂しいけど仕方ないな〜って思うくらいだからね。世界が全部無くなると僕の存在もどうにかなっちゃうから、もしかしたら寂しくないかもね」


 "かみさま"は凄く寂しいことを軽く言ってのけ「ニャッニャッニャッ」と上品な笑い声をあげる。


 ちなみに、"かみさま"の白猫の姿は"最初"にここにきた時にわたしが望んだ姿らしい。中身と外見のギャップで、いつでも可愛いと思ってしまうのはなんか悔しい…。


「そういえば、わたしの今回の姿は"かみさま"みたいな色だね」

「うん、そうみたいだね。毎回、容姿も能力の添加も思い通りにはいかないこともあるけど、今回はいい感じだね。僕と同じ色なんて縁起がいいでしょう?最後の転生にふさわしいんじゃないかなぁ」


 猫髭をぴょこぴょこ動かしながらニコニコして、サラッと重たいことを言ってのける。


「最後…か。はぁ、軽いなあ。"かみさま"って、本当に人と違ってデリカシーも危機感もなさそう…」


 そうだ。

 今回が最後の転生なんだった。


 "かみさま"が言うには、転生し過ぎて魂がすり減って、もう壊れかけているらしい。

 …自分では全く感じないけど。

 

 最初の転生で、沢山の良き友人に出会って。それがとても幸せだったから、その友人達が苦しむような世界の滅亡の仕方に理不尽に感じた。

 それを改善できないかと、一度目の転生人生が終わった時"かみさま"に尋ねたら「僕は自分では介入できないから、君がやってみる?」と言われた。

 わたしは、知り合った素敵な友人達の生きるこの世界を寿命まで全うさせることができるなら、転生の一度や二度も同じだと、二度目の転生を申し出た。

 但し、消滅した世界は戻らない。転生する毎に世界は少しずれた次元に転生するため、失敗前の世界そのものを救うわけではないと説明される。

 全く同じではなく少しずれた次元にしか転生できない?パラレルワールドとかいう世界かな?日本人だったオリジナルの魂の自分の世界の時も、一般の人が読む科学雑誌や新聞程度の情報しか知らないから、今も想像もできないな…


 それでも、変えられるなら変えたい。


 こうして決意を固めたわたしは、転生しては失敗し、気の遠くなるような人生の繰り返しを送ってきた。


「最後だからって悲観的になっても状況は変わらないし、わたしも落ち込まなくて済むから、"かみさま"が軽口叩いても、まあいっか」

「そうそう、その意気だよ」

「本当に軽いなあ。わたしが毎回命かけてるのにぃ…」

「それは悪いと思ってるよ?君が偶然も偶然、僕にも稀な出来事で、地球人の魂が時空の穴から移動して来ちゃったのに、気づかなくてごめーん」

「"かみさま"からしたら、時空がどうこうって、工場の検品とかそんな感じなんだろうなぁ…まあ、それはもう気にしてないからいいよ」

「ありがと〜。それで、今回はもう彼に告ったんだ」

「ぐふぉっ!げほっげほっ、」


 突然何をぶっ込んでくるのか、精神が咽せるほど動揺する。…ここは夢の中だから、本当に咽せてはいない。


「かっかみっ"かみさま"っ、何を言うの!」

「まだ照れるの?ニャハハ!これだけ彼のために転生してきたのに?ピュアすぎるよ〜」


 くすぐったそうに体をクネクネさせた"かみさま"が揶揄う。わたしは顔を赤くして口ごもりながら反論する。


「そう言うの…じゃないってば。わたしはただ、彼の魂が幸せになってくれればいいの。友人として心から大好きだよって伝えただけ!いつも彼がこの世界の滅亡の引き金になるから、そんな過酷な運命を取っ払って、この世界のみんなと一緒に、彼の望む幸せな平穏に暮らしてくれれば…」


 心の中に隠した思いを見られたような気がして…実際見られているのかもしれないけど…思わず捲し立てて言葉を吐き出してしまう。


「もう君もこの世界の住人だよ。そこに君の気持ちが入ってもいいと思うけどね。彼だって、君と一緒に幸せになりたいって思うかもしれないじゃない?」

「それは…」


 あるともないとも言えない。

 わたしは彼本人じゃないから。

 希望的観測と不安に挟まれ、ひどく感傷的になってしまう。


「あー、ちょっと言い過ぎた?もう最後だから、後悔しないように僕も君もちゃんと言わないとね。心の中の全部」


 私より背丈のあるタキシード白猫様が、少し屈んでわたしの顔を覗き込む。


「…努力、します」

「あーそうだ、最後だから後悔もできないんだった、ニャハハ!」


 いいこと言って感動したのに、最後にはこれだもの。やっぱりちょっとだけむかつく白猫様め…


「ねえ、セイクリッドが起きたみたいだよ。夕方にセイクリッドがホテルに帰るって言ってたよね。彼へのアプローチの時間が減っちゃうよ?」

「"かみさま"っ、お願いだから早く戻して!!」


 セイクリッドとの交流時間は一秒足りとも減らしたくない。まだ8歳のわたしは背が低いので、襟ではなく"かみさま"の袖を捕まえて振り乱す。


「わかったわかった、彼を離さないようにちゃんとアプローチしていくんだよ」

「"かみさま"に恋愛指導なんてできないでしょ!」

「この世界を最初から見てきたんだ。恋愛物語を知ることだってあるよ〜。素直が一番」

「もうっ、揶揄わないで。早く起こして!」

「はいはい、じゃあまた夢の中で〜」


 茹で蛸になったわたしが"かみさま"を急かすと、"かみさま"が笑顔で手を振ってわたしを見送る。

 どこか面白そうなものを見るような表情なのは気のせいだろうか?…長い付き合いだから多分そうだと思っているのはわかってるよ"かみさま"!わたしの考えてること聞こえてるんでしょう?!


 自分自身にも隠し通した思いを暴露され、恥ずかしさで愚痴を頭に散らかしていると、目の前が真っ白に変わる。

 わたしは夢から覚めた。

長い長い時を生きていて、過酷な転生者を見ていると、"かみさま"も恋バナの一つでもしたくなるのでしょうね。


上部前書きにも記載した、冒頭∞話(話のタイトル改稿しました)も更新しましたので、読んでいただければと思います。


明日から二日ほど家の用事でお休みして、また再開します。

ーーーーーーーー

2024.08.08下から5〜4ブロック目の誤文の修正しました。会話の時系列がおかしかったので…すみません。

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