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03 事情聴取

 セイクリッドは警察に連絡したすぐ後、保護者に連絡を取った。


「ケルティさん?実は…」


 事件に巻き込まれた為、これから自分がこの地区の警察署に行くことと、一緒に来ていた保護者の誰かに警察署へ来て欲しいと、一通りのことを短めに伝える。


『はあ…面倒をかけるなと言っただろう…。おい、怪我はしてないんだろうな」

「はい。ご迷惑をおかけします」

『そう思うなら危険なことに首を突っ込むなよ…』


 面倒そうにぼやいてため息を吐かれたが「すぐに向かう」と、いつの間にか花火が大きく鳴り響く中でも、端末口からその言葉がはっきりと聞こえた。




 警察に連絡してから数分程で白黒模様の普通車と水色のワゴン車が到着する。因みに二台共黄色い蛍光ラインと警察の文字が入っている。

 普通車の運転席から降りてきたのは、濃く日焼けした肉厚のプロレスラーのような体格の五十歳前後の警察官。彼は笑顔に愛嬌があり、子供達に向かってニッと笑うと、頬の肉がたこ焼きの様に盛り上がった。


「連絡をくれてありがとう。君がセイクリッドくんだね。あれを放ってくれたお陰で、すぐに場所がわかったよ。」


 そう言って警察官は空を指差す。

 犯人達と戦った時、最初にセイクリッドが二つ光を出したのは、その場を照らすだけでなく、居場所を知らせる為でもあった。光球はいつの間にか5階建て建物程の高い位置にあり、数秒毎に明暗していた。セイクリッドがそれに視線を送ると同時に、光球は細かい光の粒となって夜空に散った。


「ヒメルちゃん、セイクリッドくん、本当に二人共無事でよかった。怪我はないかい?そうそう、通信中の話を聞いたけど、セイクリッドくんの保護者には連絡した?」


 少女の名はヒメルと言うらしい。どうやらベテラン警察官とは知り合いのようだ。

 セイクリッドが話をしていると、車から次々と降りてきた警察官達から、確認した犯人とその車の状況に、大きな驚きの声が上がった。

 ベテラン警察官は「騒ぐな、仕事をしろ」と言うように彼らを睨みつける。

 この世界では科学も魔法も存在するが、魔法は万人が使えるわけではない。魔法を使い熟すには複雑な要素が必要だった。

 まだ二桁にも満たないであろう年齢の子供が、安定して魔法を何度も放つ技量を持つ事は極めて特殊な存在だった。


「それじゃあ、一旦警察署に行って詳しく話を聞かせてもらっていいかな。その間に君たちの保護者に迎えに来てもらおうね」


 ベテラン警察官がヒメルという少女を気にかけて膝をついて話しかける。すっかり汗と涙でボロボロになった彼女は、セイクリッドにしがみついたままチラリとベテラン警察官を見て頷く。


「それから…ああ、セイクリッドくん…犯人と車を移送したいんだけど、すまないがあの氷を溶かせるかな?」


 ベテラン警察官は苦い顔で、犯人と車を確認していた警察官達の方をチラリと見る。彼らは困った顔でじっとこちらを見ていた。


 セイクリッドより強い魔力を持った警察官が居なかった為、彼の魔力でできた氷を溶かすことができなかったのだ。その為、製作者自身が魔法で氷を溶かすことになった。

 警官達が目を覚ました男達を警察のワゴン車に乗せ先に出発する。犯人の車は後でレッカーするそうだ。

 セイクリッドとヒメルは保護と事情聴取のためにパトカーに案内された。被害者への配慮なのか、犯人を乗せたワゴン車よりもゆっくりとしたスピードで警察署へ移動した。




 ベテラン警察官に連れられてやってきた警察署の中。椅子に座ってしばらく待たされると、大きめの画面の端末と買い物袋を持った、眼鏡をかけた淡白な顔の若い警察官がやって来た。彼はベテラン警察官と逆で色白細マッチョのようだ。


「二人ともまずはこれ食べて。焦らなくていいから、ゆっくり食べるんだよ。食べ終わったら何があったか思い出して話してくれるかな?」


 二人は水とおにぎりを渡され、セイクリッドは警察官お礼を言うと無駄のない動きでそれらを平らげた。ヒメルは大きく喉を鳴らしながら一気に水を飲むと、相当疲れていたのか、おにぎりは一口だけ食べてセイクリッドに寄りかかると、眠そうにうとうとし始める。


「ごちそうさまでした。どうぞ質問して下さい」


 セイクリッドが余裕たっぷりの大人に見えた様な気がして、若い警察官は目を瞬かせた。

 彼は気を取り直して質問をしていく。セイクリッドが全てに淀みなく答えると、若い警察官は自分の経験浅さに自信をなくしたのか、端末のペンをパタリと落とした。


「…うん、これで質問は終わりだよ。セイクリッドくん、答えてくれてどうもありがとう…」


 項垂れながら礼を述べて、とぼとぼ仕事部屋へと戻っていった。

 仕事部屋で事務仕事をしながら聞き耳を立てていた警察官達から「すごいな」とか「本当に子供か?」と感嘆の声が漏れた。


 他の作業を終えて部屋を出てきたベテラン警察官が、行儀良く背筋を伸ばして座るセイクリッドと、睡魔に襲われて船を漕ぎ始めたヒメルを見て、またたこ焼きの様に頬肉を丸く盛り上げてニカッと笑う。ベテラン警察官は眠そうなヒメルに気を遣い、声量を落として話す。


「セイクリッドくん、受け答えも流石だね。魔法がちゃんと使えるって事は、中央から来たのかい?」

「はい。観光で」

「そうか。せっかくの観光なのに災難だったね。一つ忠告するが、君もまだ子供なんだから、無茶は大人に任せて怪我をしないようにね」

「はい。気をつけます」

「セイクリッドくん、実はこの子は知り合いでね。君の安全も大切なんだが、この子を守ってくれて本当に感謝しかないよ」

「助けられてよかったです」


 心底嬉しそうなベテラン警察官を見て、セイクリッドも思わず笑みが溢れた。

読んでいただいてありがとうございます!

主人公の名前がやっと出ました。

セイクリッドの保護者の一人のケルティはツン稀にデレ。


この世界のパトカーは、蛍光ラインと文字さえ入っていれば色は自由です。

そして、この世界にも犯罪被害者支援があります。

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