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〈Re;əЯ〉わたしは幸せで平穏な転生人生を目指したい!〜平穏の意味には個人差があります〜   作者: 簓(ささら)
第1章

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01 天体ショーと事件の始まり

「みなさーん、こちらでーす。暗いから足元に気をつけてくださいね」


 天体ショーと花火大会を見に来た沢山の観光客の声に負けず、あちらこちらから元気な子供の声が響き渡る。


 その子供達は、"観光案内キッズ"のトレードマークの白いキャップを被った正式な係員だ。

 観光案内係としてペアで行動している大人に見守られながら、練習を重ねて今日という本番を迎えている。


 その子供達の中の一人、白い帽子の色に似た酷く色素の薄い少女が、観光客の一団体を和やかに案内する。

 少女は元気な声とは裏腹に、髪の毛は帽子の中に収め、眉毛や髪の生え際が見えるかどうかくらいまですっぽりと深く被って、あまり顔や髪が見えないようにしていた。


「このテープが張られた区画が皆さんの予約席です。流れ星と花火を、どうぞ心ゆくまでご堪能くださいっ」


 少女は溌剌とした元気な声と笑顔を見せ、丁寧に挨拶をする。「さいっ」の語尾がぴょんと高く上がり、子供の可愛らしさが全開に出ていた。関係ない周りの大人も、つい目線をそちらに向けて微笑んでしまう。


「まあ、難しい言葉をよく覚えてるのねぇ」

「お嬢ちゃんすごいなあ。来年うちの子にもやらせようかな」

「ありがとねぇー」


 観光客達が和気藹々と少女に世間話を振りながら、区画内のビニールシートに座って行く。


 周囲の区画の観光客達もほぼ座り終え、共にボランティアとして観光案内をしていた子供達は、一仕事終えた満足感にドヤ顔を送り合う。



『天体ショーが始まります。通信端末、光を放つ物等、星の光を妨げますので、十分程度のお時間、バックなどにしまっていただける様、お願いいたします』



 ゆっくりとした口調で聞き取りやすいアナウンスが流れる。観衆の一部の人が端末や時計、ライトなど、カバンやポケットにしまい出す。



「年に一度、ほんの十分だけ、星の瞬きを見るためにご協力を、どうか、どうか皆様のお力をお貸しください。あと数分で星が流れます。はいっ!皆さん端末しまって!!聞こえてない人には、一生の思い出を見逃しちゃうよと、肩を優しく叩いて教えてあげてくださーい」


 大きな声で案内係の子供の一人がユーモアのある注意喚起のアナウンスを披露した。大勢の観衆から笑い声と拍手が贈られる。観衆同士で端末をまだ使っている人を見つけると、先程の見事なアナウンス通り、やんわりと注意を促す声も聞こえた。



 光が無くなり闇が一段と濃くなって、徐々にしんと静まり返る会場。普段なら目にすることのない小さな星々の瞬きがたくさん姿を現す。


 そして、キラリと一筋の光が夜空に降り始めた。

 それを見つけた人々の声はボリュームを上げ、次々と光の筋が、夜の闇を無数に軌跡を刻んでは消えて行くと同時に、わぁ!と一気に歓声が上がった。


「わあ、すごいねー」

「うん。こんなの見たことない」

「都会じゃあ明かりが多くて見られないもの」

「幻想的…」

「あ!願い事しなくちゃ!何個叶えられるかな」

「ははっ、それって本当に効くの?」

「…」


 区画の端でそれを聞いていた少女が、声を出さずに静かに息で笑う。観光客の雑談は面白くて好きだった。

 少女が5歳から始めた観光のボランティアは、もう4回目になる。

 話をする観光客は毎回違う人なのに、同じ様に感動し、同じ様な感嘆の言葉が生まれる。

 突拍子のない話をするのも、普通の雑談も、それぞれ人間性を感じて、話したり聞くことがとても面白くて、人が大好きな少女には、幼いながらやめられないイベントの一つだ。


 少女がウキウキしながら観光客の話に耳を傾けて流れ星を眺めていると、帽子が突然何かに引っかかって脱げた。頭に手をやろうとすると何かに手を遮られ、視界が塞がり、全身酷く窮屈な圧迫感を感じた。そう思った瞬間、目眩の様な浮遊感に襲われる。


 少女は自分が何者かに誘拐されたのだと悟った。

読んでいただいてありがとうございます!

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