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〈Re;əЯ〉わたしは幸せで平穏な転生人生を目指したい!〜平穏の意味には個人差があります〜   作者: 簓(ささら)
第1章

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16 結界魔石とガーディの作戦

 ガーディの作戦はこうだ。

 

 街の全体に置かれているであろう結界の媒体を無効化するため、その魔力の大元となる結界魔石を見つけて無効化又は破壊するのが最終目標だ。それをヒメルが行う。

 同時に、爆弾処理は動けるセイクリッドと魔力の少ない協力者を投入する。セイクリッドが氷、水、氷の三重の魔法で爆弾を包み、事件解決後に危険物処理ができる安全な場所へと運ぶ。


 短時間で考えた強行過ぎる作戦に思えるが、ガーディが知る限りの、それぞれの頭脳と能力と性格を見積もっての算段だ。


「ガーディおじさん、わたしのこと買い被り過ぎだよ」

「オレもです。見張りの相手が何人いるか分からないし、結界の中で街全体を移動できるかも魔力が持つかも予想できません」

「へへっ、長年の勘だよ…ヒメルちゃんは機転が利くし…昔から幸運とトラブルが降って湧いてたからな…。セイクリッドくんの魔力操作はそこらの大人以上だ…君達なら…きっとできる。だが…無理はし過ぎるなよ…命あっての物種だ。チャンスはまた訪れる…危ないと思ったら…迷わず自分を守れ、そして逃げろ」


 ごくりと二人は喉を鳴らす。

 二人は逃げる事は考えられなかった。自分達だけでなく街の人の命もかかっているのだ。出来る出来ないの話ではない、絶対にやらなければならない。

 だが、まずは爆弾を探さなくてはならない。それについて、車の中にいる若い警察官、ストニングが酷い顔色で話し始める。ぐったりして明らかにガーディよりも酷い状態だ。


「それは僕に…ううっ、任せて…下さい…セイクリッドくん…その魔石…少し使って…いいかな…それから、ヒメルちゃん…一番小さい魔石…借りられる?」


「はい」

「うん、これでいい?」


 セイクリッドはヒメルの回復魔法の入った魔石を、ヒメルは持ってきた一番小さな(から)の魔石をストニングに渡す。


「ううっ…少しだけ…使わせてもらうよ…」


 彼はセイクリッドから魔石を受け取り、その回復魔法を使って顔色を取り戻した。そしてヒメルから渡された空の魔石に何かの魔法を充填させた。


「…ふぅっ。ありがとう、セイクリッドくん。魔石お返しするよ。僕は探索魔法が得意なのと、人より少し魔力が多い方なんだ。魔石結界の中だからかなり魔力は弱まっているけど、探索魔法を魔石に詰められたから。これ爆弾探しに使って。多分最大で1キロメートル四方は探知でき…る、…はうっ…」


 魔石から使った回復魔法が切れ、ストニングはヘナヘナと力を無くして気を失う。彼は魔力が多いため相当結界の影響を受けているようだ。

 ガーディがそれを見てよくやったという笑みを浮かべる。そしてゴソゴソと制服の裏から何かを取り出し、ヒメルに差し出す。


「ヒメルちゃん…このピンバッジ型の端末を…服の裏につけてくれ…会話がこちらに全て聞こえる…。大元の結界魔石を見つけて、壊してくれ…」

「どうやって壊すの?」

「叩き割るか…もしくは…これは無理だろうが…魔石の容量以上の…魔力を叩き込めば…風船と同じだ、耐えられずに破裂する…」

「わかった。どっちか出来そうな方をやってみるよ」

「オレが持つ魔石の回復魔法も残り僅かです。この二つの魔石を使って爆弾の回収をしてきます。終わったらヒメルのところに向かいます」

「…頼むぞヒメルちゃん、セイクリッドくん」


 ガーディはいつもよりも緩慢にニカっと笑い、お決まりのたこ焼きのようなまん丸の頬肉を披露した。




 ガーディの作戦を聞いた子供二人はそれぞれの役割をこなす為に別れて行動をする。

 ヒメルは、犯人が指示した通りに自宅へと向かった。

 この短時間でいつの間に自宅を根城にされたのか、本当に腹が立つ。そうだ、リビングのガラスの件もあるので、絶対に作戦を成功させて、ついでに街の損害も弁償させてやるんだ。

 ヒメルに復讐心が沸々と湧いてきた。


「犯人さん、わたし来ましたー。街の人を助けてくれるんですよねー?」


 怒りが先行し、内心自分でも驚く酷い棒読みだった。


「来たか。中に入りな」


 洞穴にいた体格の良い方の犯人だ。

 結界魔石のせいで、セイクリッドがかけた氷魔法の効果が早く無くなってしまったのだろう。

 自分の家に入れと言われ、ヒメルは恐怖よりも怒りと嫌悪でひくりと顔が歪む。


「驚いたぜ。お前、本当に何の影響もなく動けるんだな。手を拘束するから大人しくしてるんだぞ。少しキツく縛るが悪く思うなよ」

「手がちぎれない?血が止まったら、手が腐って切るんだって」

「わはははっ、そんなに酷い事はしねぇよ」


 男は爆笑し、ヒメルの腕を何かの紐で後ろに締め上げる。


「痛いっ、」

「あ、わりぃな。このくらいでいいか?」

「うん」


 子供だからか、大切なターゲットとあってか、それなりに親切丁寧だ。


「あ、そうだ。おじさん、大きな魔石が落っこちてたんどけど、おじさんの?」

「ん?どこにだ?」

「ポケットに入れたから、ちょっと手、外して」

「…縛ったばかりなのに早く言えよ。外すぞ、ほら」

「ありがと、ほらこれ」


 ヒメルが上着のポケットから出した、透明度の高い5センチ程もある、泣く子も黙る国宝級魔石。


「ぶぼっ!何だこりゃあ!?もしかして結界用のか…?ちょっと貸せ!」


 男はヒメルの腕を掴み魔石を奪い取る。そして端末を手にするとどこかに連絡を始めた。

 ヒメルは通信がオンになった小さな端末を身につけてはいるが、万が一の為、男達の話を聞き漏らさないよう集中する。


「…わかりました、家の中にある結界魔石を確認します。あいつが監視してるはずなんですけどね。あー、爆弾はその中間にあるんで…」


 男は通信を切り端末を胸ポケットにしまう。そしてヒメルをもう一度紐で手足を拘束すると、二階へ続く階段に足を向けた。その前に情報を引き出したいヒメルは、咄嗟に話しかける。


「ねえおじさん、何でおじさんは動けるの?」

「あ?そりゃあこの魔石があるからだよ。見たことあるか?反射魔法」


 ヒメルが大きな魔石の存在を男に知らせたせいか、敵意がないと勘違いして男は少しだけ気を許し口を滑らす。男は首にかけた鎖を服の中から取り出し、屑石より少し大きいくらいの、白く濁って少し歪な球の魔石を取り出した。


「へえー、すごーい、初めて見たー」


 ニコニコしてみるが、またもや棒読みだ。


「いいか、大人しくしてるんだぞ」

「どこ行くの?」

「あそこの部屋だ」

「あんまり、おうち荒らさないでね」

「あーそうか、お前の家だったな。大人しくしてりゃあまり荒らさないよ」


 そう言って男は二階のセイクリッドが使っている部屋に入って行った。


「犯人は何人かまだわからない。反射魔法の魔石を首からかけてる。二階の奥の部屋に入った…あそこに結界魔石があるのかな…」


 ガーディに聞こえているだろうか。


「…おかしいな。あれは本物だし、こんなデカい魔石は一体どこから出てきたんだ??」


 男が首を捻りながら部屋から出てくる。

 ヒメルは体力と魔力温存のため、そしてあの部屋に行って魔石を壊す隙を見定めるため、大人しく様子を伺うことにした。


 三十分程経った頃、男の端末に連絡が入り、玄関へと出て行った。


「…ヒメル」


 小声でセイクリッドがヒメルを呼ぶ。どこから入ったのか、いつの間にか近くに来てヒメルの拘束を解く。


「セイクリッド、終わったの?」

「ああ、ヒメルの流した情報はみんなに伝わってる。二階の部屋に行く、ついてきて」


 セイクリッドは素早く立ち上がり二階へと駆け上がる。心なしか彼の動きが鈍いのは、魔石の回復魔法が底を尽きかけているのだろう。

 ヒメルは彼を追いかけ、遅れて階段を駆け上がる。奥の部屋に先に入って行ったセイクリッドが勢いよく吹き飛んで一階へと落ち、テーブルとソファにぶつかる。


「セイクリッド!!」


 あまりの衝撃的な映像に、ヒメルの全身が凍りつき心臓が鷲掴みにされたように痛む。


「ぐぅ…!」


 セイクリッドが床に叩きつけられる寸前に受け身を取って転がり、床にマットが敷いてありソファが衝撃を吸収した事が功を奏し、大惨事は避けられた。

 

「残念だったな、クソガキ」


 二人の男が部屋から出てきてセイクリッドを嘲笑う。ヒメルはセイクリッドの元へ駆け寄り怪我の状態を確認する。


「何でだ?このガキ、よく動けてるな。魔力が少ないのか、これと同じ魔石を持っているのか?」


 この男達も首から魔石をぶら下げていた。


「セイクリッド、逃げて。わたしなら大丈夫。またチャンスが出来たら助けに来て」

「…ヒメル、ぐふっ!」


 後ろから玄関に出ていた大柄な男が現れ、セイクリッドを軽く蹴り飛ばした。


「やめて!大人しくするから、乱暴な事しないで!」

「このガキ、さっきはよくも俺たちを氷漬けにしやがって…!」


 大柄な男はセイクリッドを紐で手足を拘束すると、乱暴な手つきで床に転がした。


「くっ…」

「ああ?悔しいか?所詮は子供だよな。俺たちに敵うわけがないんだよ」

「おい、面倒だから二人ともこっちに連れて来いよ。結界魔石とまとめて監視できるからな」

「わかった」


 二階にいる二人のうちの一人が指示をし、大柄な男はヒメルとセイクリッドを両脇に抱えて二階へと運ぶ。


「怪我は大丈夫?」

「ごめん、驚かせた」

「それより怪我が…」


 はっとしてヒメルはセイクリッドの顔を見る。二階から勢いよく落ち、この男に背後から不意打ちの蹴りを喰らわされたのだ。怪我がないわけがない。頬に内出血を起こしている。すぐに治ってないという事は、持っている魔石の回復魔法が既に底を尽きたのだろうか。


「お前ら、黙ってろ」

「あ、ごめんなさい。静かにするから、もう乱暴なことしないで」


 思わず睨みつけそうなのを我慢し、伏目がちに儚げな表情をするヒメル。あまりにも儚げなその印象に男は敵意を削がれ、苦い顔をしてそれ以上何も言わなかった。

 読んでいただいてありがとうございます!

 

 名前がついて主要メンバー入り?の若い警察官ストニング。見せ場は少ないけど重要な役割です。

 頑張った役者な二人、捕まってしまいこの後どうなってしまうのでしょうか。

 明日に続きます。

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