神殿
実は神殿は身近にあったりする。
森に入れば大体一軒は神殿が見つかるので少女達が住んでいる建物から一週間足らずで行けたりするのだ。
だが道中では魔物等が居るので一人では危ない。
だから聖女時代の少女に護衛の少年がいたのだ。
そして現在は魔力も無く、腕も無いので少女は自身を守る方法がない。
カバンを背負って少女を抱っこし、外に出た。
女性に満面の笑みで見送られた。
整備されていない道をスパスパ切って少年は少女を横抱きして歩いていた。たまに少女に声を掛けて体調を心配しながら。
大丈夫?と聞けば少女は無表情で何度も縦に振っていた。
何度か魔物に遭遇し倒しつつやっと目的地に着いた。
陽はまだ昇っていた。
『賭けに勝った!!』
昼下がりに誰もいない神殿に響き渡った女の声。
一週間で神殿に着き、最初に聴いた声がそれだった。一体何の賭けなのだ?と少年はジトっとした眼をしていた。
「えっと……?」
神殿の中には人が居ないのに声が聴こえるという謎現象に少女は戸惑っていた。そのせいで神殿に人が居ないというのがあるのか?という疑問は吹き飛んだ。
『じゃー褒美あげる!あ、その前に聖女ちゃん腕が無いから神様が直々に直してあげる』
「へ?」
『あ、脚の分はないと思ったけど義足造ってくれたの。本当にありがたかったよ』
神様と自称する謎の声は有言実行したのか、少女の腕が元に──生えた。
混乱する少女をよそに少年は眉間に皺を寄せた。
「……誰だ?前の声と違う」
幼少期に聴いた声、喋り方が違った。以前は脚を直すのに少女が持っていた魔力を要したと言っていた。だからすんなり治したその声に不信感を覚えた。
『君に祝福を与えた奴の仲間だよ。あいつが一番性格が悪いから一緒にしないでほしいなぁ!大体修復するのに魔力なんて必要ないんだよ』
じゃあ少女の莫大な魔力はどこに行ったのか。
『彼女の魔力は君の中にあるんだよ。あたし達が持ってても意味ないしねー』
少年はあの日から自身でも操れない、身体に見合わない固有魔法が変質する程の莫大な魔力量は、どこから来ているのかずっと疑問だった。その答えが今出され、少年は納得した。
じゃあ祝福は一体なんなのだろうか?
その答えもまた彼女と関係があった。
横から呪い?と首を傾げる少女がいたが、撫でて気を紛らわせる。
『再会して目が合ったときに感情を取り替えるようにしたのかも。それに関してはあたしも焦った。やっぱり生き物として扱ってなかったなあいつ』
問いに答える際の声が嫌悪感丸出しで。
以前話した自称神は他の人からも嫌われているのだなと感じた。
少女が首を傾げているのをよそに、少年は疑問が次々に解消されていき、胸がスッキリした気がした。
『あたし達は君のことをずっと見てたから、君の願いを知ってるよ。そんな君をあたしはあいつと違って応援していたんだ』
「え───」
辺り一面が光に染まり、神殿に響き渡っていた声は聴こえなくなっていた。
自称神様どれもアレですね