今
義足を装着して数日はリハビリをする毎日で。
だんだんと歩くのに慣れてきて、今は個室を一周する程には歩けるようになった。
「神殿?」
そして女性から少年は貴女と一緒に神殿に赴くつもりだと聞いた。
何故かと疑問に思い、少年が部屋に来たとき答えてもらうように女性を介して問うことにした。
その日が来ると、少年は名状し難い表情をしていた。
軽い挨拶をして、早速問いに答える。
「あのじゃし……神様にちょっと用事かな」
今邪神っと言おうとしていなかっただろうかと少女は思いつつ用事とは何かと首を傾げた。
「えーっとね、君と一緒に行ったら『褒美』をくれるらしいから」
「褒美……?」
思わず反芻してしまい、少女は我に返る。
会話してくれるのかと少年は少し笑顔になった。
「なんの褒美かは知らないけどね。──まぁ予想はできるけど」
あの邪神ならと少年が小さな声でポツリと呟いていたのを少女は聴き逃さなかったが、特に文句を言ったりはしなかった。
理由は少年と話すのが恥ずかしいのと、神を信じていなかったから。
「……あの、えっ……と……い……」
「ん?」
行きたい。
そう言いたいのに口が回らない。
これは今自分で言わないといけない。だから勇気を振り絞らなければ。
「行きたいです!!」
勇気を振り絞った結果、小さい部屋の中反響する程の声量で言った。
声の大きさに驚いていた少年は苦笑しながら、よかったと胸を撫で下ろした。
◇◇◇
次の日に少年は、女性に少女と神殿に行くと報告した。
暫くの間少年と少女は留守になるだろう。それで女性はどうする?と問うた。
根本的な問題として最初の依頼は既に終わっているのだ。金は前払いだったし月払いだった少女の介護を辞めてもいい。
「わたくしですか?そうですね……」
目を閉じ一拍置いて、はっきりと宣言した。
「わたくしはここに残ります」
目を開き、優しい笑みを浮かべて少年に告げた。
「あなた達の家ですから。わたくしはあなた達の家を守ります(ついでにカッポーになって帰ってくるのをお待ちしております)」
それはこれからもこの場所に、この家にいてくれるということ。
何故か女性から邪念を感じた気がしたが、少年は気のせいだと思いつつ。
ただ嬉しかった。
ここに住んでいたのは三年だけだったけど、何も縛られず居心地が良かった。
「ここに来るのが生活の一部になっておりますので」
「……そっか」
少年は照れたのか女性から視線を外し、窓の外を見た。
カーテンから漏れ出る陽の光を見て顔が熱く感じた。
それを見た女性は微笑んでいた。
「すぐ帰ってくるから」