帝都ロシュランの名物冒険者
リンハー大陸最大の強国、ロシュール帝国。
その帝都ロシュランの冒険者ギルドには、いっそ「ロシュランの観光名物」と呼んでも間違いではないと言える、様々な意味で有名な冒険者パーティが存在する。
パーティ名は『豪華絢爛』。
あまりに驕り巫山戯た名前だと評判は悪いが、「まぁ、そのまんまだよな」と納得する同業者も多い。
リーダーのネリーは『紅銀の悪魔』、『ポイズンストロベリー』の異名を持つA級冒険者で魔法剣士。
片方が曲刀の双剣使いで、毒魔法も得意とする毒舌オネエだ。
尤も、彼がオネエでいるのは連れ戻そうとする血縁者対策であり、本人曰くの「自衛オネエよ」らしい。
赤みがかった銀髪にスカイブルーの双眸の細マッチョ美形、という外見の二十六歳だ。
黒髪に深海ブルーの瞳を持つブラウは、二十四歳の魔導戦士。
仲間以外には無口で無表情な美丈夫は、『斬撃の魔神』の二つ名を持つA級冒険者である。
戦闘特化の魔道具である『魔具』を同時に複数使いこなしながら大剣を振るう戦闘スタイルは、魔力コントロールが「人間じゃない」と怖れを呼ぶ。
新雪の如き白銀の長い髪にアメジストの瞳、硬質な美貌の人形めいた美女、スノウは二十三歳のA級冒険者で呪符師だ。
その見た目と行動から、『ホラードール』、『天誅の魔女』と呼ばれる彼女は、呪われる覚えのある者達にとって恐怖の対象である。
呪魔法と付与術を得意とし、強力な呪符を操る後衛職ながら、近付く敵はヒヒイロカネの鉄扇で薙ぎ払う腕っぷしも持つ。
人族の多いパーティ中、唯一の獣人であるノワは、黒髪金眼の黒豹獣人。黒豹の獣耳と尻尾が魅力的な二十八歳のワイルド系美青年だ。
ナックルと仕込みブーツで近接戦闘の肉弾戦を得意とするA級冒険者の闘士。
そんな彼の稀なる金眼は、戦闘中や怒りの感情で自ら発光する。
その様とパワー過剰な戦闘スタイルは、『魔眼の破壊王』の異名を彼に持たせることになった。
ふんわりと輝く金の髪にエメラルドグリーンの瞳を細め、柔らかに微笑む天使のような美女はシェリー。二十一歳のA級冒険者兼聖職者である彼女は、世界に十人も存在しない『特級シスター』だ。
対アンデッドでは完全無双の上、自身の膨大な魔力を意のままに制御する彼女は、幻扱いである空間転移の使い手。
その貴重さ故に狙われることも多いが、『デスシスター』、『微笑みの殺戮天使』の渾名は伊達じゃない。
魔法の腕はチート級、不埒な思いで間合いに入れば、レアメタル製の棘付き鞭でシバかれアンデッドの仲間入りだ。
以上の五名がA級冒険者パーティ『豪華絢爛』のメンバーである。
全員が単独でA級以上の実力を持つのだから、規則上、パーティはS級で登録することも出来るのだが、各々が「訳アリ」であるために彼らは頑なにそれを拒否。
ギルド側からどれだけ懇願や説得をされても、個人のS級昇格試験も決して受けようとしない。
何故なら、S級以上の冒険者になると、「国の緊急事態」として国家から出される指名依頼の拒否権が無くなるのだ。
彼らの「訳アリ」の「訳」は、それぞれの祖国の王族。彼らの生まれた時の身分は、皆、それぞれの国の高位貴族だった。
『豪華絢爛』はメンバー全員が、私情で権力を振りかざす生国の王族から逃げる為に冒険者になった、という事情がある。
とてもではないが、「国からの指名」を断れなくなるリスクは冒せない。
彼らを狙う王族とその周辺の者達は揃って、貴族として生まれながら『義務』を果たさず逃げた彼らを「無責任だ」と詰る。
しかし彼らは返す。
「「「「「無責任で結構!」」」」」
「あ~ら、そちらお国の『王族の義務』って、自らが指名した婚約者を率先して虐げることで貴族達へ捌け口として自分の婚約者を差し出すこと、でしたっけぇ?」
「国に居れば権力尽くで、冤罪じゃなく本物の、公開処刑必至の重大犯罪者に無理矢理ならされていただろうが」
「無理無理無理無理無理無理無理無理、キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい・・・」
「命狙われてるんだから、そりゃ普通に逃げるだろ」
「私では性癖が合致しませんので他を当たってください。権力で来るなら、こちらも権力使いますが?」
そして彼らは高らかに叫ぶ。
「「「「「自由業、最っ高!」」」」」
これは、帝都ロシュランを拠点とする訳アリ名物冒険者パーティ『豪華絢爛』の、愉快だったり不愉快だったりする自由な日常を綴る物語である。
次から数話、メンバーの過去話ですが、かなり胸糞悪い目に遭ってたりします。
無理そうならUターン推奨です。