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海の中でしたーカニのお味噌汁、鯛茶漬け

 ざざん……ざざん……


 何もしない幸せに浸りながら、ぼーっと海を見つめる。


 子供たちが、カニーと叫びながら、カニを掴んでいる。挟まれないの? と思いながら、ぼーっとみていたら、突然目の前にカニが飛び出てきた。


「うわぁ!?」


 女子らしからぬ叫び声をあげてしまった。


「ねぇねぇ、お前、食の神なの?」


「見た目子供じゃん。神様なわけないよ」


 なんなんだ、この失礼な子供たちは、と思いながら、自分の手足を見るとまだ子供に見えると言われても仕方のない姿だ……。


「早く捧げ物たくさんもらって大きくなろう」


 毎日捧げられてた村での生活ではすくすくと育っていたから、捧げ物が大切なのだと私は予想した。



「ねぇねぇ、カニーあげる」


「捧げ物だよ!」


 話し合った末に、食の神と判断したらしい子供たちが生きたままのカニをくれた。

 まって、どうやって掴めばいいの? というか、このカニって食べれるの?


「ありがとう。このカニって食べれるの?」


「神様発音変! カニーだよ?」


「味噌汁ーに入れるとうまいって、かぁちゃん言ってたよ!」


「ありがとう……」


 見よう見まねでカニを掴んで、ぼーっと見つめる。ワタワタしているカニを食べるのも惜しいが、食の神として、捧げ物は食べるしかないだろう。




「ただいま戻りました」


 リクと同じ部屋に泊まっていることにしているため、リクの部屋に戻った。


「ミハ様!? カニー捕まえたんですか!?」


「いや、捧げ物だって。子供がくれたの」


「あ、じゃあたまには僕からミハ様に捧げ物があるので、キッチンに入れてください!」






「ミハ様……大丈夫ですか?」


 トングでカニを掴んで、アイスピックでカニを〆ようとする。かなり難易度が高い。


「やりましょうか……?」


「お願いします」


 そっとハサミを抑えて一瞬で〆たリクに歓声を送る。


「すごい! 早い! カニキラーだね!」


「嬉しくないっす、その褒め言葉」


 リクに首を振られながら、立ち位置を変わる。


「これ、捧げ物です。アオサーと豆腐ー」


「お味噌汁にピッタリ!」


 カニを歯ブラシでしゃかしゃかと洗い、お湯に入れて酒と一緒に沸かす。この大きさでもしめたほうがいいのか疑問ではあったけど、一応これで手足が取れることはないだろう。

 ある程度出汁が取れたら、追加でお出汁を入れて、お豆腐とあおさを入れる。火を止めてお味噌を溶かす。


 捧げられた鯛を切り身に捌く。切った鯛を作ったタレにつける。醤油と酒と味醂、だしを軽く沸騰させる。アルコールを飛ばしておいたものだ。

 出汁にほうじ茶のパックを入れ、軽く沸騰させる。

 待つ間に、すりごま、砂糖、醤油を混ぜ合わせて、とろーりとさせたものを作っておく。

 朝、タイマーでセットしておいた炊き立てご飯に鯛を乗せ、刻みネギをちらして、先ほど作ったほうじ茶をかけたら、ごまのとろーりも鯛の上に。

 簡単鯛茶漬けとカニのお味噌汁ランチの出来上がり。



「捧げ物がすぐ戻ってきました! ありがとうございます!」


 リクと二人でいただきます、と食事を始める。


「カニの出汁がすごいっすね!」


「身は……美味しくないんだね」


「ダシが出きってますもんね。この鯛茶漬けたまらないっす」


「鯛を軽く炙ってもよかったんだけどねー」


「今度それもしたいっす!」




 食べ終わって一息ついたところで、リクが声をかけてきた。


「ミハ様、よかったら、海に一緒に行きませんか?」


「海? さっき行ったよ?」


「中まで行きました?」


「中!?」


「あれ? ご存じないっすか? そっか、海初めてか……海に向かう階段があって、そこから扉を開けて入ると、海の中を探索できるんですよ」


「どういうこと? 息はできるの? え、水族館的な?」


 パニックを起こしながら、リクに聞いたら、一生懸命してくれた。


「すいぞくかん? 何かわからないですけど、海の中に続く階段があるんですよ。その階段を降りていくと、扉があって、そこから通れば普通に海の中に入れますよ!」


「息は? え、は?」


「行ってみますか?」


「……いきたい」


 想像がつかないと勇気が出ないけど、行ってみたいな、と思ったから、行くことにした。






「本当に海の中に続く階段……」


「ね? ミハ様。言った通りでしょ?」


 自慢げなリクが言っていた通りに、海の中に階段が続いている。初めは普通の階段で、途中から幅の広い優雅な螺旋階段になっている。


 ガラスではないのだろうけど、空気の膜のようなものがあるみたいで、扉までは空気があるように見える。



「じゃ、行きましょうか!」


「え!? ちょっと!?」


 リクに手を引かれて、階段を下っていく。いざとなったらキッチンに逃げ込もう。



 こつん、こつん……


 階段を降りる音が響く。響く音が、高級ホテルのロビーのようだ。ドラマでしかみたことないけど。


「ミハ様。横見てください。ほら、お魚ですよ!」


「あ、食べる時じゃなければお魚って発音なんだ……」


 どうでもいいことを考えながら、はしゃぐリクの指さす先の魚たちを見る。

 水族館よりも清涼な空気が漂い、差し込む光も明るく、魚たちはかわいい。最高だ。


「じゃ、扉開けますよー?」


「ちょっとまってー!」


 のんびりと海を見ていたら、いつのまにか最下層に着いていたようで、リクが扉を開けようとしていた。まだ心の準備ができていない。そう思った時には、扉が開いていた。

※子供たちがとっていたのは、食べれるカニです

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