神の力は栽培も可能でしたー肉まん
「神様、食べ物分けてくれませんか?」
私の作る食事が人々の健康を守ることが発覚し、屋台はさらに並び始めた。リクとそろそろ次の街に行こうって話してるけど、こんな調子で街から抜け出せるのかしら……。
「なにになさいますか? 甘いものだとチョコレートのケーキ、辛いものだと肉まんがあります」
今日は少し寒いから、肉まんにしてみた。屋台なだけあって、ワンハンドで食べれるものがよく売れる。最近の市場調査の結果だ。
「肉まんー1つ!」
「こっちには、ケーキー1つ!」
「肉まんー!」
「はーい!」
肉まんは生地から作っている。苦ではないが、たまに、魔法の粉が愛しくなる。
本当は天然酵母を育てているのだが、間に合わなかった。ベーキングパウダーだと見当たらなかったものの、膨らし粉ーという名前なら同じものが見つかった。
薄力粉、強力粉、砂糖、水、塩少しに、膨らし粉を混ぜて丸めて丸めて少し寝かしておく。その隙に、タネを作る。ひき肉に刻んだタマネギ、椎茸、ネギ、すりおろしたニンニク、生姜を入れ、醤油と酒、オイスターソース、砂糖に塩こしょうで味を整える。タネを混ぜて丸めたものを、生地の上にのせて、きゅっきゅっと絞るように口を閉じる。それを蒸したら完成だ。
私の好みはカラシを乗っける……これがまた美味しい。
寒い日は肉まんだよねーと思いながら、人々と物々交換をしていく。
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「ハーブの効いたものが作りたいなぁ」
キッチンの窓際で栽培できないか悩んでいた。
「ミハ様、どうかされたんですか?」
「キッチン内で植物栽培したいなーと思って……ここなら、虫もこないだろうし」
「なるほど。神の力でそういうスペース作れないんですか?」
「神の力……前世の力の方か食の神の力の方か……」
「なんか言いましたか?」
「いや……とりあえず、神の力試してみる」
神の力の使い方はわからないけど、“光あれ”で光も作られたって聞くし、やってみよう。
「栽培スペース、あれ!」
……そんな引いた目で見ないで。
そう思っていたら、キッチンに勝手口のような扉が現れた。
「マジでできるんですね……」
「私もびっくりしてる」
そっと扉を開けたら、小さな温室のような空間に繋がっていた。これなら、虫も来ないし温度管理も完璧。前世で夢にまで見た自動水やり装置もあるから、水やり忘れても大丈夫。
「ここに鉢植え置いてミント育てて、あっちには、ローズマリー、こっちにはチャイブ育てたいなー! せっかくなら、野菜も育てようかな!?」
「神様、生き生きしてますね」
「夢だったんだよねー……家庭菜園するの」
豆苗の再生はしていたけど、スペースがなくて家庭菜園まではできなかった。こうなったら、作った野菜で屋台やろっかな?
「もしかして、ここで育った野菜はまたミハ様の力で何かできるようになるんじゃないんですか?」
「まっさかー!」
そんなことはないと信じてる。
「いくつか、ハーブとか植物の種はもらったものが余ってるんで、好きに使ってください」
「ありがとう!!」
何の種かわからないものをプランターに蒔いていく。早く大きく育ってね? できれば、食べれるものだと嬉しいな。