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運命の再会でしたー生チョコ

 しばらく、砂漠のオアシスの街に留まることにした。リクは宿を取り、私はキッチンに滞在する。


「宿を取ることで宿屋の人と仲良くなれて、お客さんになってくれる可能性もあるし、情報をもらえることもあるんで大切です」

 リクは、行商人として色々考えながら、過ごしているらしい。


「すごいね。いろいろ考えてるんだ。ただ、泊まるだけじゃないんだね」

 感心して、私が言うと、笑いながら返された。


「まぁ、宿のご飯は美味しいし、人は優しいし、客として喜んで泊まってるところが大きいんですけどね?」




ーーーー

「何をどこに売りに行くの?」


「まず、他の街で買ったものを売って、そのあと利益でここでしか買えない名産品を仕入れます。市場があるので、そこに行きますよ」


 リクに連れてきてもらったところは、すごく大きな市場だった。雑然としていて、南国のマーケットを想起させる。


「いろいろあるんだね……なんか落ち着く」


「わかります! 落ち着くっすよね! 食品から雑貨まで、なんでもあります。だから、俺もいろいろ売りやすいんす」


「なるほど」


 リクは慣れた様子でマーケットの受付の人と出店の手続きを済ませる。


「いい場所空いてるみたいっす! ラッキーですね!」




 リクが売ってる間、隣に座ってぼーっとしている。すると、通りすがりのおばあちゃんが私の前にそっとお饅頭を供えてくれた。


「ありがたや、ありがたや。食の神様。これからもよろしくお願いします」


 近くの店の人や通りすがりのお客さんたちに貢ぎ物をたくさんもらって、私のお腹はぱんぱんだ。


「ミハ様、すごいっすね……さすが食の神様」


 私への貢ぎ物だけじゃなく、リクの売り上げもよかったらしい。主に食品関係だが。食品だけ、いつもの3倍も売り上げだそうだ。






「リクちゃん! ちょっとこれ見て? 食べ方知らない?」


「あ! おかみさん! どうしたんすか?」


 リクに声をかけるのは、食事処のおかみさんらしい。


「この実、お客さんがくれたんだけど、食べ方わからないのよー! リクちゃんなら見たことあるかなーと思って!」


「なんすか、それ。初めて見ました……匂いはいいですね。クラクラしそう」


「あ、それ」

 私がぼそっと呟く。


「え、ミハ様知ってるんすか!?」


「何!? 食の神様! さすがね! 教えてください!」



「カカオって言って、チョコレートの原料です」


「カカオー?」

 おかみさんが首を傾げる。


 前世チョコレート依存症だった私は、コーヒーのお茶請けとしてもチョコレートを食べていた。隙があればチョコレートを食べていた。チョコレートがなくなると手が震えた。あの味を思い出すだけで、気が狂いそうだ。85%チョコレートのような苦いものまで、チョコレートと名につけばなんでも好きだ。そういえば、今世では食べたことがない。存在しないのだろうか?


「チョコレートーなら、一度行った村で見たことあります!」

 リクが食いついてきた。


「作り方なんてわかるんですか?」


「もちろんわかるよ!」

 前世でチョコレートが好きすぎた私は、カカオ豆で買って自分で作ったこともある。労力がすごかったから、一度だけだが。今の私には、魔法がある。


「リク、木箱ってある?」


「もちろんっす! はい!」


 リクにもらった木箱にカカオを入れ、魔法で発酵させる。その後、乾燥→洗浄→焙煎→皮剥き→すりつぶし→精錬コンチング→テンパリング、だ。魔法で全て済んだ。


「すっごくいい匂いね、たまらないわ」

 おかみさんがうっとりした顔で言っている。

 わかる。チョコレートの香りって、本当にたまらないよね。涎が止まらない。


「ここに、砂糖を加えます」


 どばーっと砂糖を加える。2人が「そんな入れるの?」と引いた顔で見ている。


「型で形成して魔法で冷やして……」

 いいサイズの型がなかったから、キッチンの冷蔵庫の製氷皿を拝借した。また洗って戻せばいいでしょ、多分。


「うわぁ! 美味しい! すごいわ! これ!」

 おかみさんが興奮した様子で食べている。


「すごい美味いんすね! 前の村では高すぎて入荷できなかったんすけど、買っておけばよかったっす!」


「この完成品少しもらえるなら、よかったら、他のもをあげるわ? 魔法を使えないと上手く作れなさそうだもの」

 おかみさんにカカオ豆をもらった! おかみさんに食の恵みをたくさんあげれますように!


「また、何か不思議な食べ物があったら、教えてくださいね? 神様」

 そう言って、おかみさんは帰っていった。




 キッチンに戻って、

「リク、トリュフか生チョコどっちが食べたい?」

と聞く。


「え? おすすめでお願いします」


「じゃあ、今すぐに食べたいから生チョコね」


 魔法でぱぱっとチョコレートを作り、湯煎して溶かす。生クリームと私の好みで隠し味に少しラム酒を入れて、混ぜ合わせて、パットに入れて冷やす。ある程度固まったら切って、ココアパウダーにまぶして……。

「できた!」


「とろけてたまらないですね……いろいろ食べさせてもらってて思ったんですけど、ミハ様、俺の店の横で出店やったらどうすか? めちゃくちゃうまいっす!」


「出店かぁ……」

 楽しそうだなと思って、前向きに検討することにした。



「リクくん! 食の神様にカカオーを捧げてから、うちの店の売れ行きが異常なんだけど、何事!?」


「ははっ。神様、チョコレートー依存症って言ってたので、食の恵みが暴発してるのかもしれないっすね?」


 おかみさんの店は、町一番の人気店となり、私の食の恵みは変な方向で力を発揮した。カカオもらった見返りとしてはちょうどいいよね?

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