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食の女神になりました〜異世界で家庭料理をクッキング!  作者: 碧井 汐桜香


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4/21

食の神は万能でしたーブドウのタルト

 砂漠を抜けた。まだ横は砂漠だが、一応街道だ。今まででわかったことがある。リクは方向音痴だ。これまでよく無事に行商人なんてできたなと思う。


「ミハ様。俺、あの村出身なんで、少しだけ魔法が使えるんすよ。だから、見てて思ったんですけど、ミハ様の料理の補助魔法みたいなやつ、もっといろいろできる気がします」


「え? そうなの?」


 魔法の存在を思い出した時に洗い物や配膳くらいしか使っていなかった。例えば、どんなことができるんだろう。


「例えばなんですけど、野菜とかの食材の下処理や出汁をとったり、あとは飾り切りとかできると思います。火の自動調整とかもできそうですよね……」


 顎の下に手を当てて、リクはふむふむと考えている。しかし、思いついたのはそれくらいのようだ。


「そんなにできたら、すごく助かるよ! 次からやってみる!」


 魔法を意識することを忘れがちだが、使いこなせばかなり便利そうだ。




「じゃあ、次は、砂漠のオアシスみたいな見た目の街に行きます! 食材が豊富なんですよねー!」


「へぇ……どっちの方角にあるの?」


「あっちです! 北です!」


「それは南! 地図貸して!」


 本当に方向音痴だから移動に時間がかかるようだが、人当たりの良さでカバーして、しっかりした売り上げを出しているから、生活はできているようだ。




ーーーー

「リクじゃねーか! なんだ? 娘でもできたんか? 娘にしては大きいな……まさか……お前……ロリ……」


「違います! 違います! よく見てください! 神様ですよ!」


「本当だな……異種……ロリ……」


「1回黙れ!」


「とりあえず、食の神様。こちらをどうぞ?」


 リクと大柄な男性が揉めている間に、その奥さんと見られる女性に差し出された果物を受け取る。


「ありがとうございます。……ぶどう?」


「そうです! ブドウーです。皮ごといっちゃってください。って、食の神様にそんな説明いらないよね!」


 なんか沖縄みたいな響きだな、と考えながら、パクりとぶどうをたべる。


「……瑞々しくてすごく美味しい……」


「そうなんですよ! 周りは砂漠だけど、この街は水が豊富なんで、果物が甘みと水分をどっしりと蓄えるんです!」


「え! 神! フルーツでタルトーとか作ってくださいよ!」


「いいよ?」


「ちょ! リク! 神様にご飯作らせんな!」


 慌てた様子で、先ほどまで(かみ)のことをロリやら言ってた人が割り込んできた。ロリの方が失礼だと。中身は成人女性だ。




「うわぁぁ! 誰か助けてくれ! 娘が!」

 4歳くらいの女の子を抱き抱えた男の人が飛び出してきた。


「隠れてた蛇に噛まれたんだ! 毒蛇だ!」

 医者を呼びに走る人たち。食の神のミハに頼みにくる人は誰もいない。


「……お茶!」

 

「え? ミハ様!?」

 慌てて、キッチンに入り、さっきまで飲んでいた煎茶を取ってくる。今日はキンキンに冷やしたい気分だったから、冷たいやつだ。


 キッチンから飛び出て、女の子のところに駆け寄る。


「噛まれたところ、どこ?」


「え、あ、ここです!」


 見せられたところに煎茶をかけ続ける。何してるんだ、こいつという視線が痛い。


「医者です! 連れてきました!」


 専門家が来たので、そっと下がる。


「え、ミハ様、何してたんすか?」


「タンニンが毒を消すって聞いたから……前にテレビで」


「たんにん? てれび? なんすかそれ? 神の用語ですか?」


「あー、うん。そういう感じ」



「思ったより、毒の広がりが弱かったんで、この子は助かります。よかったですね」


 医者がそう父親に伝えると、周りはみんなほっとした。


「ありがとうございます! 先生!」





ーーーー


「じゃあ、タルトでも作ろっか?」


 リクを連れてキッチンに戻り、料理する。魔法を忘れないようにしないと。とりあえず、オーブン予熱入れて、と。

 卵…を割ってもらってみようかな? 綺麗に黄身と白身を分けてくれた。魔法で常温に戻して黄身とバター、魔法で振るう粉砂糖と薄力粉。魔法最高。魔法でまーぜまぜってしてもらう。寝かせる時間省略とか……魔法すごい。トントンフォーク差しもしてもらったら、自分でやるより断然綺麗。オーブンで焼いておこう。

 

 その隙に、カスタードクリームとアーモンドクリーム作ろう。牛乳と砂糖と卵をよく混ぜて、バニラビーンズパラパラ。レンチンまぜまぜレンチンまぜまぜ……忘れてた! 魔法があった! 魔法でちょうどいいくらいまでやってもらって、冷やしておいてもらおう。


 アーモンドクリームにアールグレイの茶葉入れてみようかな? 魔法でアールグレイ茶葉を細かくして……魔法依存しそう。バター、アーモンドプードル、砂糖、卵でまぜまぜ。常温に戻し忘れてても、魔法で1発。本当にいい。粉の茶葉を混ぜたら、冷めたタルトにカスタードクリームとアーモンドクリームを順番に、と。

 

 さっきのブドウーもチョキチョキしてもらって、綺麗に並べる。水、砂糖、ゼラチン、レモン汁でチンしてナパージュ。キラキラのブドウーが最高だよ。


「できたよ?」


「うわ、美味しそうすぎます! お店のですか? いただきまーす」


 もぐもぐとタルトを食べるリクに褒められた。食に関することで、私の……前世(かみとして)の知識が使える点については、万能らしい。人気なアニメの記憶なんだけどね?

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