先輩との出会いでしたー煮物、いろいろなます、アレンジお粥、煎茶、エール
見た目幼女といえども、心は成人女性だ。よく知らない人と同室で眠るなんて勇気は持てない。ロリコンなら困るし。ということで、行商人には、今まで通り野宿してもらうことになった。行商人も、私の料理の腕に惚れただけで、元々そのつもりだったらしい。
「食の恵みをありがとうございます、神様。そういえば、俺、リクって言います! 食の神様のお名前とか、あるんですかね?」
「名前……うーん……」
あれが食の恵みで合ってたのかな、と悩みつつ、名前って教えていいものなんだろうか、とも悩む。
そんな時、キッチンのドアがパタリと開いた。
「あ、間違えた、ごめん」
「え?」
見た感じ同業者だ。他の神ってうちのキッチンに入れるの? 防犯弱くない?
「普通他の神のキッチンなんて開かないんだけど、何か助けでも求めてた? 見た感じ、新人神様?」
「あ、私たちに名前ってあるんですか? それを人に教えてもいいんですか? あと、食の恵みってなんですか?」
ちょうど気になってたことを問いかけてみる。
「さすが新人。疑問がいっぱいだね。いいことだよ。名前は新人ちゃんが思ってる名前でいいと思うよ。でも、実名で教えるより、あだ名とかにしといた方がいいんじゃないかな。縛られると困るから。食の恵みは、食を捧げられた時点で勝手に与えられてるよ。飢え死にしない程度には、彼らの食は守られてるはずだよ。……1週間とか食べれなかったら、自然と食事が提供されるはずだよ。じゃあ、僕は行くね。もしも何かあったら、僕の名前を呼んでごらん? 新人ちゃん」
私にだけそっと名前を教えてくれた。多分、あだ名だが。1週間食べれなかったら、結局助かってたのか……。リクは死にそうに見えたけど、まだまだ大丈夫だったんだな……。
「ありがとうございました! 先輩!」
先輩と言ったら嬉しかったのか、手をひらひらさせながら去っていった。
「ということで、私の名前はミハです。」
本名の美晴からとって、ミハと伝えた。苗字は隠してるし、例えミハルとバレてもフルネームじゃなきゃ大丈夫だろうし、ミハならよく両親に呼ばれてたから伝わりやすい。
「ミハ様! よろしくお願いします!」
ニコニコしながら、リクが手を差し出してきた。手を握り返そうとすると、
「お腹空きました!」
思わず、転びそうになりながら、料理を開始する。あれだけたくさん食べれたし、少し胃に優しい方がいいかもしれないけど、いけるだろう。
先ほども使ったお出汁を冷蔵庫から取り出し、食べやすいように優しく煮た煮物を作る。お出汁に根菜を入れて、コトコト煮る。灰汁を一度とったら、お醤油に味醂、少しだけ料理酒を入れてまたコトコト。せっかくだから、鶏肉でも入れようかな? 隣に小さなフライパンを出して、ごま油で軽く炒めた鶏肉を入れる。ささっとフライパンを洗って片付けて、コトコトコトコトしてる間に、他のものを。
何がいいかな、と思った時に、元気が出るように酸っぱいなますにしようと思った。せっかくだから、たくさん野菜を入れてみよう。大根ににんじん、きゅうりを細く切って……確か、油揚げがあったよな? ささっと熱湯を回しかけて油抜きをして、細く切る。砂糖、味醂、醤油、酢、酒、出汁を火にかけて、アルコールを抜く。切った野菜たちを入れた容器にそっと注ぎ、パラパラと胡麻を振りかける。
あとは、いつも食べるお粥にしようかな? 冷蔵庫から玉ねぎとベーコン、にんじんを取り出して細かく刻む。それをオリーブオイルと少しのすりおろしにんにくで炒める。火が通ったら、一度火を消して……そこに余ったご飯を入れて、すりおろして凍らせたニンニクと生姜を少し入れる。丁寧にとって冷凍しておいた鶏ガラスープをカランコロンと入れて軽く煮込む。
飲み物は、何にしようかな? 私は捧げ物のエールで、リクはまだ胃に優しそうなお茶にしようかな? お湯を沸かして、余ってたティーパックの中から煎茶を選び、80度くらいで優しく注ぐ。少し蒸らして、そっと蓋をずらして置いておく。私のエールを冷蔵庫から出して、食事も机に並べて……コツコツ洗い物とかしなくても、補助魔法みたいなのでできるんじゃない? そう思って、そっと願うと、洗い物が始まり、食卓にも綺麗に並べられた。
「うぉ! 美味しそう! ありがとうございます! ミハ様!」
リクが拝みにきて、一緒に食べる。
「って、ミハ様、エールーっすか!? 幼女なのに!?」
…中身は成人女性だし、捧げてきた人が悪い。