海の中の大冒険でしたー焼ししゃも定食
「うわっぷ、死ぬ」
突然海の中に放り出されて、思わず息を止める。
「ミハ様、死なないです。普通に息もできますから。あと、神様はそんな簡単に死なないと思います」
海の中なのに普通に話し続けるリクに突っ込まれて、勇気を出して息をしてみた。
「あれ? 意外と普通? 息ができてる」
「あの扉から出ると、大丈夫なんですよねー。普通にあちこちの海にありますよ?」
「え、どういう仕組みなの?」
「よくわからないんですけど、昔からそうなので。魔法とかじゃないんですか?」
「いや、知らんのかい!」
よくわからないものに自分の命を普通に預ける人たちに驚きを感じる。でも、自分が逆の立場だったら、当たり前のことに疑問は抱かないのかもしれない。
「ほら、ミハ様。あそこ、見てくださいよ」
「わぁ!」
綺麗な海を泳ぐ魚たちがとても可愛い。小魚たちが横を通り過ぎていく。
「ほら、お兄さん。よってきな」
魚たちにあげる餌を売ってる人に声をかけられて、リクは餌を買って戻ってきた。
「ミハ様。はい、どうぞ。あげてみてください」
「ありがとう」
少し怖いけど、そっと餌を手に乗せて魚に向けると、我先にと魚たちはつつきにきた。
「え、かわいい、何これ」
「かわいいですよねー。あっちのイソギンチャクーの中にいる魚もかわいいですよ」
「あ、カクレクマノミみたい!」
某有名映画のキャラクターみたいでかわいいと思って、カクレクマノミもどきのいるイソギンチャクをツンツンしたら、突然突っ込んでこられた。
「うわ!?」
「大丈夫ですか? 今のどういうことですか?」
「なんだったんだろう……」
「ミハ様にイソギンチャクーを食べられると思ったんですかね?」
「待って。イソギンチャクー? 食べる?」
「食べれますよ?」
「毒は?」
「よくわからないですけど、昔から食べられてきたものなので、ないと思いますよ?」
「え、よくわからないのに食べてる?」
さっきも思った壁にぶち当たった。そうだよね、普通に食べてきたものなら疑わないよね……。
「ミハ様。今日の夕飯はイソギ」
「それだけは無理。あと、この魚に敵認定されたくない」
「うまいんだけどなー」
イソギンチャクの調理法はわからなかったから、そっと拒否した。美味しくても、自分で調理の仕方を知らないものは、どう頑張っても調理できないのだ。うん、仕方ない。
突っ込んできた魚に扉の前まで見送られ、陸に戻ることにした。
「またね。お魚ちゃん」
「また来るのじゃぞ。陸の食の神よ」
「しゃべった!?」
そう言って去っていった魚は一体何者だったんだろう。こればかりは、リクも知らなかったようで、二人で首を傾げた。
「今、話しましたよね?」
「私の幻聴じゃないよね?」
「俺も聞いたんで、多分幻聴じゃないです」
不思議体験に首を傾げながら、宿に戻る。材料はたくさん捧げられているから、なんでも作れる。
「ししゃもでも焼こうかな?」
「ししゃもー! 好きっす!」
洗ったご飯に料理酒とみりん、醤油と白だしを入れてみずをいつもの量入れる。そこにグリーンピースと塩昆布を入れて普通に炊く。
ブロッコリーを茹で、魔法でぱぱっと冷ましておく。トマトを切って、そこに、マヨネーズと醤油、白だし、鰹節と混ぜておく。ブロッコリーとトマトのマヨ和え。
ししゃもを焼いて、大根を少しだけおろして、シークワーサーを絞る。すだちとかでもいいんだけどね。
にんじんを水から煮て、そこにお出汁のパックを入れる。お出汁のパックでにんじんのアクをささっととって、カットしたお豆腐を入れる。火を止めてお味噌を溶かしたら、アオサも入れる。
豚肉と玉ねぎ、すりおろし生姜と刻みニンニクを料理酒とみりんで炒める。そこに、白だしとお水、醤油を入れて軽く煮る。
あとは、海岸で安く売っていた海ブドウを添えて。
「海要素、ししゃもと海ブドウしかないけど……」
「うまそうっす! いただきます!」
「また近いうちにあのお魚さんに会いに行きたいねー」
「不思議体験でしたね……」
食べれるイソギンチャクについては、詳しくありませんが、本当にあるみたいですね




